長編:一兎を奪う
name
ご利用の端末、あるいはブラウザ設定では夢小説機能をご利用になることができません。
古いスマートフォン端末や、一部ブラウザのプライベートブラウジング機能をご利用の際は、機能に制限が掛かることがございます。
5.一兎を逃した男は思う
side.クザン
「帰ったよ」
執務室に足を踏み入れながら戻ったことを知らせれば頼りになる部下たちが「お疲れ様です!」と迎えてくれた。自分が留守だった間の報告を流し聞きすると小言が飛んでくるので適当に真面目に聞こうとは思ってはいるのだけど。まあ、微々たる態度の変化なので「ちゃんと聞いてください!」と結局小言をもらった。
机に積みあがった書類から目をそらしつつ、逃がした少し不思議な女の子のことをぼんやりと考えた。
ある島に緊急要請がかかって首をかしげたのはまだ記憶に新しい。白ひげの縄張りの一つである島で緊急要請がかかるなど前代未聞だ。不思議に思いつつ行ってみれば住民たちが何かを求めて海軍と衝突しており、その中心にいたのがその少女だ。
不思議なことにその少女はその時まで寝ていたようで、白ひげ海賊団が来て目が覚めたようだった。目が覚め怒号と騒音に少女が震える姿はまるでウサギのようで、おびえるそれを見て一応保護しとくかね、と思ったのだけれど、さすが白ひげ海賊団。火と氷では分が悪かった。いや、そんなことよりも。
「あー……面倒くせェ」
島に伝わっていた話を住民から聞いた。にわかには信じられないが、大方あの少女はどこかから落ちてきた少女で、その血を求めた住人と海軍が衝突していたのだろう。それはいい。いや、本当は保護して本部でしっかり検査したほうがよかったからよくはないのだけれど、それも考えるとすげェ面倒くせぇから、それは一旦置いておいて。
「なんで俺は触れなかった?」
少女は白ひげ海賊団の、16番隊長に奪われた。その前に俺は少女に触れられたはずだった。しかし伸ばした手は何かにはじかれ、その隙に少女は白ひげ海賊団の手に渡ったのだ。
たかが少女一人だ。適当な報告をすれば、海軍とは言え形だけの捜索を行うだけで、必死になって少女を探すことはない。いちいちそんなことをしていればどんなに人がいても回らないし、そもそも捜索はめんどくさい。
白ひげ海賊団のところにいるならまず悪いようにはされていないだろうし、白ひげ自らが島にきて少女を掻っ攫ったとなればなおさらそうだ。
しかし、あの時はじかれたのは俺だけではなかった。
「はじかれたのは『能力者だから』ってなると、ちょいと面倒だよなァ」
あー面倒くせェ……。
俺はとりあえず愛用のアイマスクをつけると、椅子に体重を預けた。
side.クザン
「帰ったよ」
執務室に足を踏み入れながら戻ったことを知らせれば頼りになる部下たちが「お疲れ様です!」と迎えてくれた。自分が留守だった間の報告を流し聞きすると小言が飛んでくるので適当に真面目に聞こうとは思ってはいるのだけど。まあ、微々たる態度の変化なので「ちゃんと聞いてください!」と結局小言をもらった。
机に積みあがった書類から目をそらしつつ、逃がした少し不思議な女の子のことをぼんやりと考えた。
ある島に緊急要請がかかって首をかしげたのはまだ記憶に新しい。白ひげの縄張りの一つである島で緊急要請がかかるなど前代未聞だ。不思議に思いつつ行ってみれば住民たちが何かを求めて海軍と衝突しており、その中心にいたのがその少女だ。
不思議なことにその少女はその時まで寝ていたようで、白ひげ海賊団が来て目が覚めたようだった。目が覚め怒号と騒音に少女が震える姿はまるでウサギのようで、おびえるそれを見て一応保護しとくかね、と思ったのだけれど、さすが白ひげ海賊団。火と氷では分が悪かった。いや、そんなことよりも。
「あー……面倒くせェ」
島に伝わっていた話を住民から聞いた。にわかには信じられないが、大方あの少女はどこかから落ちてきた少女で、その血を求めた住人と海軍が衝突していたのだろう。それはいい。いや、本当は保護して本部でしっかり検査したほうがよかったからよくはないのだけれど、それも考えるとすげェ面倒くせぇから、それは一旦置いておいて。
「なんで俺は触れなかった?」
少女は白ひげ海賊団の、16番隊長に奪われた。その前に俺は少女に触れられたはずだった。しかし伸ばした手は何かにはじかれ、その隙に少女は白ひげ海賊団の手に渡ったのだ。
たかが少女一人だ。適当な報告をすれば、海軍とは言え形だけの捜索を行うだけで、必死になって少女を探すことはない。いちいちそんなことをしていればどんなに人がいても回らないし、そもそも捜索はめんどくさい。
白ひげ海賊団のところにいるならまず悪いようにはされていないだろうし、白ひげ自らが島にきて少女を掻っ攫ったとなればなおさらそうだ。
しかし、あの時はじかれたのは俺だけではなかった。
「はじかれたのは『能力者だから』ってなると、ちょいと面倒だよなァ」
あー面倒くせェ……。
俺はとりあえず愛用のアイマスクをつけると、椅子に体重を預けた。