長編:一兎を奪う
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4.我らが信じるのは一人だけ
Side:12
この船に小柄な女の子が乗った。まあ、僕はどうでもいいんだけど。
傘下から「妙な女が島に落ちてきて、島が混乱している」と連絡を受けた時は僕らも半信半疑だったけれど滅多にない傘下からのSOSで親父が無視するわけもなく、行ってみれば異常な光景がそこにはあって、海軍はうじゃうじゃいるし、住人達もうじゃうじゃいるしで一瞬目を疑った。僕らが統制している島で海軍が大勢いるなど本来ならありえないことだ。白ひげ海賊団の名は安くない。親父の名で守られている島をわざわざ守るための人員を割けるほど海軍も暇ではないのだ。百歩百歩譲って海軍の介入がありえたとしても、海軍が必死に抑えているのがその島の住民で。何かを求めて狂ったように住民たちが海軍と衝突しているのは異常な光景としか言いようがなかった。
『眠り続けているその女の血が妙で』
家族は俺を含めた隊長各も含めて困惑していたが、傘下のその報告で親父は何か思い当たることがあったようだった。
『親父、青雉がいるよい』
『そうか。馬鹿息子ども、青雉の狙いはその落ちてきた女だ。取られる前に奪って来い』
家族は親父のその指示ですぐに動いた。青雉がいるのが分かっていたから、能力の相性的にエースが先陣を切り、いろいろあったようだが無事に女を掻っ攫ってきたのは……イゾウだった。
別に誰が連れてきてもいいんだけどさ、僕はちょっと意外だったかな。マルコが担いで飛んでくると思ったから。もしくはエースが雑に担いで来るかなって。だって、イゾウだよ?あの、いつも食えない笑みを浮かべて半歩引いたような男が女を担いで来るかって言ったら想像しにくいよね。
マストのてっぺんはよく風が通る。首に巻いているマフラーが風を受けて流れた。下から隊員が探しているのが聞こえたが、知らんぷり。
イゾウが奪ってきた女、いやどちらかって言ったら女の子って感じだったかな。
親父が奪って来い、なんていうからどんな子かと思ったけど案外普通。わざわざ青雉と顔を合わせてまで奪う価値があったのかなって思うぐらいには普通。まあ、何かあるよりは普通な方がいいんだけど、でもやっぱりせっかくなら面白い方が楽しいじゃん。
親父は奪ってきたことによくやったと機嫌よさげに笑っただけだ。僕らの中で親父の意向は絶対だ。だから僕も、僕らも何も言わない。けど。
「つまんない子だったら海にポイだよね」
もう一度、隊員が僕を呼ぶ声がした。僕は溜息一つついて、ひらり。マストから降りた。
Side:12
この船に小柄な女の子が乗った。まあ、僕はどうでもいいんだけど。
傘下から「妙な女が島に落ちてきて、島が混乱している」と連絡を受けた時は僕らも半信半疑だったけれど滅多にない傘下からのSOSで親父が無視するわけもなく、行ってみれば異常な光景がそこにはあって、海軍はうじゃうじゃいるし、住人達もうじゃうじゃいるしで一瞬目を疑った。僕らが統制している島で海軍が大勢いるなど本来ならありえないことだ。白ひげ海賊団の名は安くない。親父の名で守られている島をわざわざ守るための人員を割けるほど海軍も暇ではないのだ。百歩百歩譲って海軍の介入がありえたとしても、海軍が必死に抑えているのがその島の住民で。何かを求めて狂ったように住民たちが海軍と衝突しているのは異常な光景としか言いようがなかった。
『眠り続けているその女の血が妙で』
家族は俺を含めた隊長各も含めて困惑していたが、傘下のその報告で親父は何か思い当たることがあったようだった。
『親父、青雉がいるよい』
『そうか。馬鹿息子ども、青雉の狙いはその落ちてきた女だ。取られる前に奪って来い』
家族は親父のその指示ですぐに動いた。青雉がいるのが分かっていたから、能力の相性的にエースが先陣を切り、いろいろあったようだが無事に女を掻っ攫ってきたのは……イゾウだった。
別に誰が連れてきてもいいんだけどさ、僕はちょっと意外だったかな。マルコが担いで飛んでくると思ったから。もしくはエースが雑に担いで来るかなって。だって、イゾウだよ?あの、いつも食えない笑みを浮かべて半歩引いたような男が女を担いで来るかって言ったら想像しにくいよね。
マストのてっぺんはよく風が通る。首に巻いているマフラーが風を受けて流れた。下から隊員が探しているのが聞こえたが、知らんぷり。
イゾウが奪ってきた女、いやどちらかって言ったら女の子って感じだったかな。
親父が奪って来い、なんていうからどんな子かと思ったけど案外普通。わざわざ青雉と顔を合わせてまで奪う価値があったのかなって思うぐらいには普通。まあ、何かあるよりは普通な方がいいんだけど、でもやっぱりせっかくなら面白い方が楽しいじゃん。
親父は奪ってきたことによくやったと機嫌よさげに笑っただけだ。僕らの中で親父の意向は絶対だ。だから僕も、僕らも何も言わない。けど。
「つまんない子だったら海にポイだよね」
もう一度、隊員が僕を呼ぶ声がした。僕は溜息一つついて、ひらり。マストから降りた。