長編:一兎を奪う
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1.信じるのは白檀の匂いだけ
「いた!!」
聞いた声は確かそんな声だったように思う。それからものすごい爆音と、怒鳴り声が響き私は顔をしかめながら目を開けた。
「え?」
「異界人だな!?」
一気に入ってきた視覚情報に脳が混乱する。はじめに視界に入ったのはテンガロンハット。その下にはそばかすが浮かんだ頬にらんらんと輝く目を持つ男がいて、知らない顔に思わず私は拒絶を示した。
「い、や!!」
「うぐっ!?」
「エース!?」
突き飛ばした腕からばちっという音が響いたと同時に男が軽く吹き飛んだ。そんなに強く押したつもりはないが、男が強かに地面に打ち付けられるのを見てさあっと血の気が引く。
「ごめんなさ……」
「おい、お前!!」
駆け寄ろうとしたが突然視界が水色に染まり、思わず後ずさった。青い炎のようだが熱くない。その炎の中からまた男が一人手を伸ばしてくる。それにもまた驚けば今度は何もしていないのに伸ばされていた男の手がはじかれた。その男もまた何もしていないのに地面に崩れ落ちた。
「なに……?なんなの……?」
何が起こっているのかわからなくて体が震える。それを助長するようにひやりと冷気が頬を撫でた。
「おじょーちゃん、いい子だからこっちに来なさいなー」
振り向けば長身の男。
何もわからない。
分からないが怖くて仕方なくて。
「助けて」
その声にこたえたのは銃声だった。
ふわりと誰かに肩を抱かれたかと思うと、がんっ!ともう一回銃声が響き硝煙の匂いとかすかな白檀の匂いが鼻をくすぐった。その匂いが唯一私になじみのあるもので、思わずすがるようにすり寄るとその人が笑ったようで体が震えたのが分かった。
「大丈夫だ、なんにも怖ぇことはねェよ」
子どもに話しかけるように落ち着いた低い声。
それからひょいと持ち上げられて、なだめるように軽く背を叩かれた。持ち上げられ上から見下げるように見た男は化粧をしていて、赤い紅がその辺の女よりも似あっていると思った。すがるものがその男の首元しかなくぎゅうっと抱き着けばくつっと笑い声。
「いい子だ。もう少し我慢できるな?」
そのきれいな唇を、にいっと持ち上げそういわれた私はこくりと一つうなずいた。男は満足げにうなずき、ひらりと私を抱えたまま立っていた高い建物から飛び降りた。
「イゾウ!!」
「俺がモビーに戻るまで頼むぜ」
「ああ!任せとけ!」
「エース、青雉を止めろ!!」
男が難なく着地すると、脇をさっき突き飛ばしてしまった男たちが駆け抜けていった。同時に爆発音や金属がぶつかる音が再び荒々しく響き、私は思わず耳を覆った。
「あァ、うるせえからそうしとくといい」
耳を覆ったはずなのに、その男の声だけはやけにはっきりと聞こえて。
私は理解することを放棄するように意識を手放した。
「いた!!」
聞いた声は確かそんな声だったように思う。それからものすごい爆音と、怒鳴り声が響き私は顔をしかめながら目を開けた。
「え?」
「異界人だな!?」
一気に入ってきた視覚情報に脳が混乱する。はじめに視界に入ったのはテンガロンハット。その下にはそばかすが浮かんだ頬にらんらんと輝く目を持つ男がいて、知らない顔に思わず私は拒絶を示した。
「い、や!!」
「うぐっ!?」
「エース!?」
突き飛ばした腕からばちっという音が響いたと同時に男が軽く吹き飛んだ。そんなに強く押したつもりはないが、男が強かに地面に打ち付けられるのを見てさあっと血の気が引く。
「ごめんなさ……」
「おい、お前!!」
駆け寄ろうとしたが突然視界が水色に染まり、思わず後ずさった。青い炎のようだが熱くない。その炎の中からまた男が一人手を伸ばしてくる。それにもまた驚けば今度は何もしていないのに伸ばされていた男の手がはじかれた。その男もまた何もしていないのに地面に崩れ落ちた。
「なに……?なんなの……?」
何が起こっているのかわからなくて体が震える。それを助長するようにひやりと冷気が頬を撫でた。
「おじょーちゃん、いい子だからこっちに来なさいなー」
振り向けば長身の男。
何もわからない。
分からないが怖くて仕方なくて。
「助けて」
その声にこたえたのは銃声だった。
ふわりと誰かに肩を抱かれたかと思うと、がんっ!ともう一回銃声が響き硝煙の匂いとかすかな白檀の匂いが鼻をくすぐった。その匂いが唯一私になじみのあるもので、思わずすがるようにすり寄るとその人が笑ったようで体が震えたのが分かった。
「大丈夫だ、なんにも怖ぇことはねェよ」
子どもに話しかけるように落ち着いた低い声。
それからひょいと持ち上げられて、なだめるように軽く背を叩かれた。持ち上げられ上から見下げるように見た男は化粧をしていて、赤い紅がその辺の女よりも似あっていると思った。すがるものがその男の首元しかなくぎゅうっと抱き着けばくつっと笑い声。
「いい子だ。もう少し我慢できるな?」
そのきれいな唇を、にいっと持ち上げそういわれた私はこくりと一つうなずいた。男は満足げにうなずき、ひらりと私を抱えたまま立っていた高い建物から飛び降りた。
「イゾウ!!」
「俺がモビーに戻るまで頼むぜ」
「ああ!任せとけ!」
「エース、青雉を止めろ!!」
男が難なく着地すると、脇をさっき突き飛ばしてしまった男たちが駆け抜けていった。同時に爆発音や金属がぶつかる音が再び荒々しく響き、私は思わず耳を覆った。
「あァ、うるせえからそうしとくといい」
耳を覆ったはずなのに、その男の声だけはやけにはっきりと聞こえて。
私は理解することを放棄するように意識を手放した。
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