24.それは考えた最善の答え
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24-2
ピ、ピ、ピ、と一定のリズムの電子音。
声が聞こえない。何も見えない。何も匂わない。でも私は知ってる。
ああ、またこの夢。
そう思った瞬間真っ白だった世界が弾けて初めて視界が開けた。
視界とともに嗅覚も覚醒して、鼻を刺激したのは、薬品の匂い。
息を飲んだ。
真っ白な空間。清潔すぎるその空気。
やめて。奪わないで。
時間に限りがあるなんて知っている。
でも、だからできるだけそばにいたいと思うのは間違いなわけがない。
衝動のまま飛び起きて、息が切れるまま布団からはい出た。
素足のまま床に足を付けて、ドアを乱暴に開けると、何かを突き飛ばした感覚。
「まてユリト!!今は!!」
後ろから何か叫ぶエースの声が聞こえたし、足元は妙に揺れるけれど気にしていられなかった。
「ハルタさん!!ハルタさん!!」
走る。走る。必死に叫んで廊下を走る。途中、皆に止められた気がしたけど気のせいだ。だって実際誰にも止められていない。私とみんなの力の差は歴然なのだから止めようと思ったら止められてる。
急がないと。とにかく、急がないと……!
騒がしいのは甲板で、きっとそこにハルタさんはいるはずで。
勢いのまま甲板へのドアを開ければそこは戦いの場と化していた。
敵襲か、とか、だから妙に船が揺れているのかとかいろいろ思ったけれど、私の目はただ一人を捉えていて。
甲板の真ん中でハルタさんと背を預け合って戦う、黒い髪の。
「イゾウさん!」
帰ってきていた。なら、彼がいい。
甲板を蹴って、彼のもとに走った。途中でバチバチ音がしたし、止める声もしたし、名前を叫ばれたけど構わなかった。
私に気づいたイゾウさんは驚いた顔で「来るな」と言ったようだった。走ってくる私と距離を取ろうと思ったのか足を引かれたが私は構わずイゾウさんに飛びついた。
飛び込んだ胸元から白檀の匂いがしてそれにほうっと息を吐いた、その瞬間の銃声。
真っ赤な血が空に線を引き、おなかが焼けるように熱くなる。
「ユリト!!」
叫んだ声は誰だったか。
それは分からなかったけど、呆然と私を抱えたまま見下ろすイゾウさんの顔に血が飛んでしまっていたからいけないと思って。震える手を伸ばして血をぬぐった。でも結局ぬぐい切れなくて、頬から顎へするりと滑った手はそのきれいな顔に、綺麗とは言えない赤を引いただけだった。ああ、ごめんなさい。汚すつもりはなかった。せめて、綺麗にしたかったのだけれど。
「かえります」
お腹が熱くて痛くて。話せたのはたぶんそれだけだ。
言わなくっても伝わる、そう言ったのは彼だ。好きにしろと言ったのも彼。
だからきっと分かってくれる。
瞬きもせずただそのきれいな切れ長の目を見開くだけの彼に微笑んで、私はすとんと暗闇に落ちた。
『いい人は見つかった?』
うん、すごく優しくて居心地のいい人を見つけたよ。
そう報告を、母にできる。
ピ、ピ、ピ、と一定のリズムの電子音。
声が聞こえない。何も見えない。何も匂わない。でも私は知ってる。
ああ、またこの夢。
そう思った瞬間真っ白だった世界が弾けて初めて視界が開けた。
視界とともに嗅覚も覚醒して、鼻を刺激したのは、薬品の匂い。
息を飲んだ。
真っ白な空間。清潔すぎるその空気。
やめて。奪わないで。
時間に限りがあるなんて知っている。
でも、だからできるだけそばにいたいと思うのは間違いなわけがない。
衝動のまま飛び起きて、息が切れるまま布団からはい出た。
素足のまま床に足を付けて、ドアを乱暴に開けると、何かを突き飛ばした感覚。
「まてユリト!!今は!!」
後ろから何か叫ぶエースの声が聞こえたし、足元は妙に揺れるけれど気にしていられなかった。
「ハルタさん!!ハルタさん!!」
走る。走る。必死に叫んで廊下を走る。途中、皆に止められた気がしたけど気のせいだ。だって実際誰にも止められていない。私とみんなの力の差は歴然なのだから止めようと思ったら止められてる。
急がないと。とにかく、急がないと……!
騒がしいのは甲板で、きっとそこにハルタさんはいるはずで。
勢いのまま甲板へのドアを開ければそこは戦いの場と化していた。
敵襲か、とか、だから妙に船が揺れているのかとかいろいろ思ったけれど、私の目はただ一人を捉えていて。
甲板の真ん中でハルタさんと背を預け合って戦う、黒い髪の。
「イゾウさん!」
帰ってきていた。なら、彼がいい。
甲板を蹴って、彼のもとに走った。途中でバチバチ音がしたし、止める声もしたし、名前を叫ばれたけど構わなかった。
私に気づいたイゾウさんは驚いた顔で「来るな」と言ったようだった。走ってくる私と距離を取ろうと思ったのか足を引かれたが私は構わずイゾウさんに飛びついた。
飛び込んだ胸元から白檀の匂いがしてそれにほうっと息を吐いた、その瞬間の銃声。
真っ赤な血が空に線を引き、おなかが焼けるように熱くなる。
「ユリト!!」
叫んだ声は誰だったか。
それは分からなかったけど、呆然と私を抱えたまま見下ろすイゾウさんの顔に血が飛んでしまっていたからいけないと思って。震える手を伸ばして血をぬぐった。でも結局ぬぐい切れなくて、頬から顎へするりと滑った手はそのきれいな顔に、綺麗とは言えない赤を引いただけだった。ああ、ごめんなさい。汚すつもりはなかった。せめて、綺麗にしたかったのだけれど。
「かえります」
お腹が熱くて痛くて。話せたのはたぶんそれだけだ。
言わなくっても伝わる、そう言ったのは彼だ。好きにしろと言ったのも彼。
だからきっと分かってくれる。
瞬きもせずただそのきれいな切れ長の目を見開くだけの彼に微笑んで、私はすとんと暗闇に落ちた。
『いい人は見つかった?』
うん、すごく優しくて居心地のいい人を見つけたよ。
そう報告を、母にできる。