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Sabo

「誕生日、おめでとう」

 ことん、と机に置いたのはお酒を落としたホットミルク。不思議そうにする彼に「いい夢が見られるように」と答えれば「子供か、俺は」と笑われた。笑われるだろうと思っていたから私は気にしない。

「会いたい人に会えるように」

 おまじない、とそう言えば彼は一瞬驚いたように目を見開き、それから小さくお礼を言ってそれを飲み干した。

「いい夢が見られそうだ」

 穏やかな笑みに私は一度頷いた。カップを受け取った時に触れた指先は以前よりも温かい。

 海の青も炎の赤も持ち合わせた貴方は強い。強くなるために決心をし、行動してきたから。甲板でみんなに祝われていた時の笑顔も嘘ではないだろう。だけど。

 今日1日は、貴方の最も大事な「兄弟」と過ごせるように。ただの気休めにしかならないだろう、けれど命一杯思いを込めたプレゼントを。

「おやすみなさい」
「ああ、おやすみ」

 扉が閉じる音は静かに爆ぜる炎のように優しかった。


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