桔梗の花は胡蝶と踊る:番外編
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桔梗の花は胡蝶と踊る:番外編
それはささやかな幸せ side:サッチ
「もーーーーーー!!真面目に教えてくださいってば!!!」
「なんだい、俺ァ真面目だぜ」
船では貴重な女の子の声。それにけたけた笑う声が聞こえればああ今日も平和だなあなんて思っちまう。
「胡蝶頑張れ〜イゾウに負けるなー!!」
「エースさんこれ勝ち負けじゃないですから!!圧倒的にイゾウさんが悪いですから!!」
「ほら胡蝶前向け、視線を動かすな」
「だから無理ですって!」
甲板の中心でイゾウに揶揄われエースに応援されているのは前に停泊した島から船に乗った女の子。イゾウが気に入ってちゃんと親父に話を通して乗せた子な!胡蝶ちゃんつって、小柄で華奢な女の子。元は踊り子だから、もちろん踊りはすげえ上手くて、ついでにすげえかわいい。イゾウが船に乗せたいと言った時は気の迷いかとも明日は嵐かとも思ったけど、まあなんつーか胡蝶ちゃんを見てああなるほどな、と思って。
少し前から胡蝶ちゃんはイゾウに舞を習い始めた。親父に見せるらしい。胡蝶ちゃんの踊りとイゾウの踊りは種類が違うらしく、俺からすりゃあどっちも綺麗なんだけど胡蝶ちゃんがイゾウに教えてくれと言ったのだという。
やりたいことに挑戦してみるっつーのはめちゃくちゃいいことなんだけどなァ。でもなんつーか、素直にイゾウが教えるかと言ったらそれは否というわけで。
「十分綺麗じゃね?」
「バァカ。もっと綺麗になるんだよ。胡蝶、かわいい顔上げな」
「イゾウさん褒めなくていいです、集中できません!」
真っ赤な顔でなんとか扇を構えて姿勢を保っている胡蝶ちゃんの前でにやにやとイゾウが「おら、腕下がってんぞ」と言いつつその細い腕を撫でる。ちゃんと教えてはいる。だけども、なんつーかな……無駄な色気出して教えてるんだよなあ……。
俺らは男だし、その無駄な色気をイゾウが使うときは大抵キレてる時だから何も感じない、むしろ寒気がするぐらいなんだけど胡蝶ちゃんには刺激が強いらしい。姿勢を教えるために近い距離。顔を真っ赤にさせつつも真剣に体で覚えていく直向きさが眩しい。
「腰を落とせ。目は真っ直ぐ。動きと一緒に伏せて流す……そう、上手いねェ……」
少しだけいつもより訛りのような口調が強く出て、目はすっと細まって優しく微笑む。
あれまあ、珍しいことで。胡蝶ちゃんをみれば額に汗を掻きながらもふっと色っぽく目を伏せていてこれは親父も喜ぶんじゃねえかなあなんて。
「上出来だ」
イゾウが褒めるのと同時に胡蝶ちゃんがぱちりと扇を閉めた。息が上がり汗だくだけど、すっげえ笑顔でイゾウに礼を言っているのが見えた。たぶん胡蝶ちゃんは知らねえけど、イゾウが胡蝶ちゃんのどこに惚れたかって、色々あるとは思うけどその屈託のない笑顔は外せない。そんな大好きな笑顔をすぐ近くで見られるなんて幸せだよなァ。
「あ」
汗だくの頬をイゾウの手が滑った。汗をぬぐうかのように見える手の動きだが、イゾウはそんな親切だけで動くようなやつじゃない。
片手で胡蝶ちゃんが持っていた扇を抜き取り、ぱっと開いた。それによってすぐ横にいたエースには見えなかっただろうけど、少し離れたエースとは逆側にいる俺っちからは丸見え。
海賊にしては上品すぎるほど美しく控えめに重なったそれはこっちが恥ずかしくなるほどで。
まあ、胡蝶ちゃんがこれでもかってぐらい瞬時に顔を真っ赤にさせるもんだから、やっぱりこっちは恥ずかしさよりも笑いがこみあげちまうんだけど。
「イゾウさん!!」
「なんだい、駄賃もらったってバチ当たんねえェだろう?」
羞恥をどう表したらいいのか分からないのか、胡蝶ちゃんがイゾウの腕を軽く叩いた。全然見てて飽きねェんだけど、流石にかわいそうだしずっと踊りっぱなしつーのも心配だしな。
「おーい、そろそろ休憩にしねェ?」
飲み物を片手にそう声を掛ければ、二人よりも先にエースが「する!!」と叫んだ。
リクエスト:中編の桔梗の~の番外編
早くにリクエストを貰ったのに遅くなってしまって申し訳ありません……!日常編、書いていて楽しかったです 笑。いろんな都合でサッチさん視点で書かせていただきました。桔梗の花のイゾウさんは長編よりちょっとだけ意地悪で若いイメージです。でもきっと一緒に舞ってくれる時だけは優しい顔で踊ってくれるのだと思います。
次のページは書いていたらもう一本書きたい話が思い浮かんだのでおまけです~。別の日の別のお話ですがよければどうぞ!
リクエストありがとうございました!
それはささやかな幸せ side:サッチ
「もーーーーーー!!真面目に教えてくださいってば!!!」
「なんだい、俺ァ真面目だぜ」
船では貴重な女の子の声。それにけたけた笑う声が聞こえればああ今日も平和だなあなんて思っちまう。
「胡蝶頑張れ〜イゾウに負けるなー!!」
「エースさんこれ勝ち負けじゃないですから!!圧倒的にイゾウさんが悪いですから!!」
「ほら胡蝶前向け、視線を動かすな」
「だから無理ですって!」
甲板の中心でイゾウに揶揄われエースに応援されているのは前に停泊した島から船に乗った女の子。イゾウが気に入ってちゃんと親父に話を通して乗せた子な!胡蝶ちゃんつって、小柄で華奢な女の子。元は踊り子だから、もちろん踊りはすげえ上手くて、ついでにすげえかわいい。イゾウが船に乗せたいと言った時は気の迷いかとも明日は嵐かとも思ったけど、まあなんつーか胡蝶ちゃんを見てああなるほどな、と思って。
少し前から胡蝶ちゃんはイゾウに舞を習い始めた。親父に見せるらしい。胡蝶ちゃんの踊りとイゾウの踊りは種類が違うらしく、俺からすりゃあどっちも綺麗なんだけど胡蝶ちゃんがイゾウに教えてくれと言ったのだという。
やりたいことに挑戦してみるっつーのはめちゃくちゃいいことなんだけどなァ。でもなんつーか、素直にイゾウが教えるかと言ったらそれは否というわけで。
「十分綺麗じゃね?」
「バァカ。もっと綺麗になるんだよ。胡蝶、かわいい顔上げな」
「イゾウさん褒めなくていいです、集中できません!」
真っ赤な顔でなんとか扇を構えて姿勢を保っている胡蝶ちゃんの前でにやにやとイゾウが「おら、腕下がってんぞ」と言いつつその細い腕を撫でる。ちゃんと教えてはいる。だけども、なんつーかな……無駄な色気出して教えてるんだよなあ……。
俺らは男だし、その無駄な色気をイゾウが使うときは大抵キレてる時だから何も感じない、むしろ寒気がするぐらいなんだけど胡蝶ちゃんには刺激が強いらしい。姿勢を教えるために近い距離。顔を真っ赤にさせつつも真剣に体で覚えていく直向きさが眩しい。
「腰を落とせ。目は真っ直ぐ。動きと一緒に伏せて流す……そう、上手いねェ……」
少しだけいつもより訛りのような口調が強く出て、目はすっと細まって優しく微笑む。
あれまあ、珍しいことで。胡蝶ちゃんをみれば額に汗を掻きながらもふっと色っぽく目を伏せていてこれは親父も喜ぶんじゃねえかなあなんて。
「上出来だ」
イゾウが褒めるのと同時に胡蝶ちゃんがぱちりと扇を閉めた。息が上がり汗だくだけど、すっげえ笑顔でイゾウに礼を言っているのが見えた。たぶん胡蝶ちゃんは知らねえけど、イゾウが胡蝶ちゃんのどこに惚れたかって、色々あるとは思うけどその屈託のない笑顔は外せない。そんな大好きな笑顔をすぐ近くで見られるなんて幸せだよなァ。
「あ」
汗だくの頬をイゾウの手が滑った。汗をぬぐうかのように見える手の動きだが、イゾウはそんな親切だけで動くようなやつじゃない。
片手で胡蝶ちゃんが持っていた扇を抜き取り、ぱっと開いた。それによってすぐ横にいたエースには見えなかっただろうけど、少し離れたエースとは逆側にいる俺っちからは丸見え。
海賊にしては上品すぎるほど美しく控えめに重なったそれはこっちが恥ずかしくなるほどで。
まあ、胡蝶ちゃんがこれでもかってぐらい瞬時に顔を真っ赤にさせるもんだから、やっぱりこっちは恥ずかしさよりも笑いがこみあげちまうんだけど。
「イゾウさん!!」
「なんだい、駄賃もらったってバチ当たんねえェだろう?」
羞恥をどう表したらいいのか分からないのか、胡蝶ちゃんがイゾウの腕を軽く叩いた。全然見てて飽きねェんだけど、流石にかわいそうだしずっと踊りっぱなしつーのも心配だしな。
「おーい、そろそろ休憩にしねェ?」
飲み物を片手にそう声を掛ければ、二人よりも先にエースが「する!!」と叫んだ。
リクエスト:中編の桔梗の~の番外編
早くにリクエストを貰ったのに遅くなってしまって申し訳ありません……!日常編、書いていて楽しかったです 笑。いろんな都合でサッチさん視点で書かせていただきました。桔梗の花のイゾウさんは長編よりちょっとだけ意地悪で若いイメージです。でもきっと一緒に舞ってくれる時だけは優しい顔で踊ってくれるのだと思います。
次のページは書いていたらもう一本書きたい話が思い浮かんだのでおまけです~。別の日の別のお話ですがよければどうぞ!
リクエストありがとうございました!
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