雨と猫
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起きたら愛しい猫はおらず____
猫の代わりに恐ろしい呪霊が微笑んでいた。
朝は弱くていつも起きるのに時間がかかるのに、脳は一気に覚醒して生存の道を探す。
「真人……?」
「そうだよ。こうすれば君も分かるかな?」
そう話せば太ももに柔らかい何かが絡みつき、僕の内股を撫で上げた。
ふわふわな感触がくすぐったくて思わず声が上擦ってしまう。
「んっ、なに……尻尾?」
くすぐったくて太ももら辺を探ると猫の尻尾のようなものを掴む。
驚いて顔を上げれば、いつの間にか真人の頭にも水色の猫耳が生えていた。
猫耳の色合いからして昨日拾った猫にそっくりだった。
「じゃあ、昨日僕が拾った猫は……」
「ふふ、正解〜!君の隣は心地いいから気が緩んで戻っちゃった」
僕は自分の愚かさを嘆いた。
呪霊だと分かっていたのに家に入れたんだから。
ただの呪霊ならまだしも、相手は呪術廻戦きっての悪役で。
脳内はもはや生存を諦め思考を放棄することしか出来なかった。
「あぁ、今世もここまでなのかな……」
「何言ってんの?あ、そんなことよりさ。君の名前を教えてよ!」
僕の嘆きを無視して真人は名前を聞きたがる。
これから殺す相手に名前なんか聞いてどうするのか、意味が分からない質問に僕は訝しむ。
「……聞いてどうするの?」
「どうするって……君は俺の飼い主でしょ?俺、しばらく君と一緒にいたいし!」
「えっ、それは困る……ます」
予想外の言葉に思わず敬語になるけど、真人は僕の返答が気に入らなかったようで。
さっきまで浮かべていた微笑みから一転。
面白くなさそうに口を尖らせ、不機嫌な表情で僕を見下ろした。
「ふーん……拾った癖に捨てちゃうんだ?」
「何を……うぁっ……!!」
真人は僕に馬乗りになり強い力でベッドに押さえつけた。
ただの一般人である僕が呪霊の力に敵うはずもなく、抵抗すらさせてもらえない。
「ねぇ、俺が本当に猫の呪霊なら君の喉元を喰いちぎってるよ?
だって……猫の呪霊がいるとしたらそれは捨て猫の怨念なんだから」
「ひっ……や、やめ……!」
そう脅しながら首筋に舌をはわせてくる。
急な刺激に声を抑えることもできず、僕は涙目でやめるよう懇願した。
「あはっ、いい反応するじゃん!」
そんな僕の反応を楽しむかのように、鋭い牙も喉に押し当ててくる。
このまま薄皮を破られ喉元を食いちぎるのは真人にとって容易い。
「分かった、から……」
死の恐怖に肩を震わせ、息も絶え絶えになりながらそう言うと、真人は顔を上げる。
僕は呼吸を整えてから口を開いた。
「紫苑、僕の名前は、猫宮 紫苑……だよ」
「紫苑……!うん、覚えた。これからよろしくね、紫苑!」
僕の名前を嬉しそうに呼べばやっと解放してくれる。
ひとまず目先の危機はさったと胸を撫で下ろせば、真人は僕の上から退いた。
だけど、同時に真人から毛布がずり落ち、彼の裸体が朝日の中目の前にさらけ出された。
__________
真人は全裸であることを微塵も気にする様子もなく僕にまたがる。
カーテンから射す陽の光で部屋は少しずつ明るくなっていた。
ほんのりと明るい、青白い彼の肌から何とか視線を逸らしつつ、服を着るようお願いしてみた。
「あの、とりあえず服を着てほしいかな……」
「えー?猫なんだから服なんていらないでしょ?それに俺、服持ってないし」
僕のお願いはすぐさま不満げな声にかき消されてしまう。
そういえば、呪術廻戦の本編では真人の服は偽夏油が用意していたんだった。
今は2017年の10月____
本編通りなら今年の12月に百鬼夜行だし、まだ偽夏油とは会ってないのかも。
この世界が本編通りに進んでいるという確証はないけど、真人が存在しているし、他のキャラも生きてる体で考えた方がいいな。
「ねぇ、真人は呪霊の仲間とかいないの?例えば……頭が富士山とか、花の妖精とか赤い蛸とか」
「あはは、何それ!俺は生まれたばかりで仲間とかいないよ」
「……そっか。じゃあ、真人はひとりぼっちなんだ……」
いずれ出会うことになるであろう呪霊達の姿を遠回しに伝えてみた。
思い当たる呪いはいなかったらしく、僕の言葉に真人は首をかしげる。
呪霊である彼に寂しいという感情があるのかは分からないけど、僕は今の真人に自分を重ねてしまっていた。
前世の記憶があるせいでどこにいても孤独を感じてしまう。
ひとりぼっちの僕____
「……仲間が見つかるまでならいていいよ。でも、ちゃんと言うこと聞いてね?」
「……!それはもう少し君と過ごせるってことでいいのかな?よろしくねっ、紫苑!」
真人は大げさに喜んでみせると裸のまま抱きついてくる。
久しぶりに感じた自分以外の体温に心を許しそうになるけど、そっとその胸を押し返した。
この温もりに絆されないようにしないと。
彼の態度や発言から察するに、本当に生まれたばかりなんだろうけど……それでも危険な呪いであることに変わりはないのだから。
「とりあえず服を着ようか。父さんのがあるからついてきて」
「うん!」
にこにこと無邪気な笑みを浮かべる真人を連れ、両親の部屋に入る。
両親は数ヶ月帰ってきていない。
でも、いつもかかさず掃除していたからどこに何があるのかはだいたい把握していた。
クローゼットから真人に合いそうな服を探して渡す。
父さんが着ていた秋服のセーターだ。
柔らかい繊維に触れれば、懐かしい父の香りがしたような気がした。
「この服とかどう?」
「うーん、俺はもうちょっと緩いのがいいな〜。着れないことはないんだけどね」
「そっか、とりあえずそれ着てて」
他にも一通り服を選んだ後、近いうちに真人用の服も買おうと思った。
父親も真人くらいの身長はあるけど筋肉の厚みを考慮したら真人の方が体格がいいんだと思う。
……生まれたばかりの呪霊なのにもうこんなに逞しいんだ。
男として真人の筋肉美を羨ましく思いつつ、ちゃんと服を着た真人と向かい合う。
「それで、一緒に暮らすなら守ってほしいことがあるんだ」
「なに?」
「まず、僕の家族や友達は殺さないで。……飼い猫が人を傷つけるなんて嫌だから」
機嫌がいいうちに守って欲しいことを伝える。
呪霊だから人を襲うなは無理だろうし、まずは身近な人を殺させないようにしようと思った。
ちらりと真人の顔色を伺えば、特に不機嫌な雰囲気を見せることなく僕に軽く返した。
「オーケー。飼い主の君はもちろん君の大切な人には手を出さないよ」
「……ありがとう」
本当は『縛り』とかをした方がいいんだろうけど。
呪いとして生まれたばかりの真人は縛りを知らないだろうし、僕も呪術を扱えるわけじゃないからやり方が分からない。
いつ破られてもおかしくない約束でも、ひとまず僕は胸を撫で下ろした。
_________
猫の代わりに恐ろしい呪霊が微笑んでいた。
朝は弱くていつも起きるのに時間がかかるのに、脳は一気に覚醒して生存の道を探す。
「真人……?」
「そうだよ。こうすれば君も分かるかな?」
そう話せば太ももに柔らかい何かが絡みつき、僕の内股を撫で上げた。
ふわふわな感触がくすぐったくて思わず声が上擦ってしまう。
「んっ、なに……尻尾?」
くすぐったくて太ももら辺を探ると猫の尻尾のようなものを掴む。
驚いて顔を上げれば、いつの間にか真人の頭にも水色の猫耳が生えていた。
猫耳の色合いからして昨日拾った猫にそっくりだった。
「じゃあ、昨日僕が拾った猫は……」
「ふふ、正解〜!君の隣は心地いいから気が緩んで戻っちゃった」
僕は自分の愚かさを嘆いた。
呪霊だと分かっていたのに家に入れたんだから。
ただの呪霊ならまだしも、相手は呪術廻戦きっての悪役で。
脳内はもはや生存を諦め思考を放棄することしか出来なかった。
「あぁ、今世もここまでなのかな……」
「何言ってんの?あ、そんなことよりさ。君の名前を教えてよ!」
僕の嘆きを無視して真人は名前を聞きたがる。
これから殺す相手に名前なんか聞いてどうするのか、意味が分からない質問に僕は訝しむ。
「……聞いてどうするの?」
「どうするって……君は俺の飼い主でしょ?俺、しばらく君と一緒にいたいし!」
「えっ、それは困る……ます」
予想外の言葉に思わず敬語になるけど、真人は僕の返答が気に入らなかったようで。
さっきまで浮かべていた微笑みから一転。
面白くなさそうに口を尖らせ、不機嫌な表情で僕を見下ろした。
「ふーん……拾った癖に捨てちゃうんだ?」
「何を……うぁっ……!!」
真人は僕に馬乗りになり強い力でベッドに押さえつけた。
ただの一般人である僕が呪霊の力に敵うはずもなく、抵抗すらさせてもらえない。
「ねぇ、俺が本当に猫の呪霊なら君の喉元を喰いちぎってるよ?
だって……猫の呪霊がいるとしたらそれは捨て猫の怨念なんだから」
「ひっ……や、やめ……!」
そう脅しながら首筋に舌をはわせてくる。
急な刺激に声を抑えることもできず、僕は涙目でやめるよう懇願した。
「あはっ、いい反応するじゃん!」
そんな僕の反応を楽しむかのように、鋭い牙も喉に押し当ててくる。
このまま薄皮を破られ喉元を食いちぎるのは真人にとって容易い。
「分かった、から……」
死の恐怖に肩を震わせ、息も絶え絶えになりながらそう言うと、真人は顔を上げる。
僕は呼吸を整えてから口を開いた。
「紫苑、僕の名前は、猫宮 紫苑……だよ」
「紫苑……!うん、覚えた。これからよろしくね、紫苑!」
僕の名前を嬉しそうに呼べばやっと解放してくれる。
ひとまず目先の危機はさったと胸を撫で下ろせば、真人は僕の上から退いた。
だけど、同時に真人から毛布がずり落ち、彼の裸体が朝日の中目の前にさらけ出された。
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真人は全裸であることを微塵も気にする様子もなく僕にまたがる。
カーテンから射す陽の光で部屋は少しずつ明るくなっていた。
ほんのりと明るい、青白い彼の肌から何とか視線を逸らしつつ、服を着るようお願いしてみた。
「あの、とりあえず服を着てほしいかな……」
「えー?猫なんだから服なんていらないでしょ?それに俺、服持ってないし」
僕のお願いはすぐさま不満げな声にかき消されてしまう。
そういえば、呪術廻戦の本編では真人の服は偽夏油が用意していたんだった。
今は2017年の10月____
本編通りなら今年の12月に百鬼夜行だし、まだ偽夏油とは会ってないのかも。
この世界が本編通りに進んでいるという確証はないけど、真人が存在しているし、他のキャラも生きてる体で考えた方がいいな。
「ねぇ、真人は呪霊の仲間とかいないの?例えば……頭が富士山とか、花の妖精とか赤い蛸とか」
「あはは、何それ!俺は生まれたばかりで仲間とかいないよ」
「……そっか。じゃあ、真人はひとりぼっちなんだ……」
いずれ出会うことになるであろう呪霊達の姿を遠回しに伝えてみた。
思い当たる呪いはいなかったらしく、僕の言葉に真人は首をかしげる。
呪霊である彼に寂しいという感情があるのかは分からないけど、僕は今の真人に自分を重ねてしまっていた。
前世の記憶があるせいでどこにいても孤独を感じてしまう。
ひとりぼっちの僕____
「……仲間が見つかるまでならいていいよ。でも、ちゃんと言うこと聞いてね?」
「……!それはもう少し君と過ごせるってことでいいのかな?よろしくねっ、紫苑!」
真人は大げさに喜んでみせると裸のまま抱きついてくる。
久しぶりに感じた自分以外の体温に心を許しそうになるけど、そっとその胸を押し返した。
この温もりに絆されないようにしないと。
彼の態度や発言から察するに、本当に生まれたばかりなんだろうけど……それでも危険な呪いであることに変わりはないのだから。
「とりあえず服を着ようか。父さんのがあるからついてきて」
「うん!」
にこにこと無邪気な笑みを浮かべる真人を連れ、両親の部屋に入る。
両親は数ヶ月帰ってきていない。
でも、いつもかかさず掃除していたからどこに何があるのかはだいたい把握していた。
クローゼットから真人に合いそうな服を探して渡す。
父さんが着ていた秋服のセーターだ。
柔らかい繊維に触れれば、懐かしい父の香りがしたような気がした。
「この服とかどう?」
「うーん、俺はもうちょっと緩いのがいいな〜。着れないことはないんだけどね」
「そっか、とりあえずそれ着てて」
他にも一通り服を選んだ後、近いうちに真人用の服も買おうと思った。
父親も真人くらいの身長はあるけど筋肉の厚みを考慮したら真人の方が体格がいいんだと思う。
……生まれたばかりの呪霊なのにもうこんなに逞しいんだ。
男として真人の筋肉美を羨ましく思いつつ、ちゃんと服を着た真人と向かい合う。
「それで、一緒に暮らすなら守ってほしいことがあるんだ」
「なに?」
「まず、僕の家族や友達は殺さないで。……飼い猫が人を傷つけるなんて嫌だから」
機嫌がいいうちに守って欲しいことを伝える。
呪霊だから人を襲うなは無理だろうし、まずは身近な人を殺させないようにしようと思った。
ちらりと真人の顔色を伺えば、特に不機嫌な雰囲気を見せることなく僕に軽く返した。
「オーケー。飼い主の君はもちろん君の大切な人には手を出さないよ」
「……ありがとう」
本当は『縛り』とかをした方がいいんだろうけど。
呪いとして生まれたばかりの真人は縛りを知らないだろうし、僕も呪術を扱えるわけじゃないからやり方が分からない。
いつ破られてもおかしくない約束でも、ひとまず僕は胸を撫で下ろした。
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