雨と猫
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一月も瞬く間に過ぎていき、二月も中旬に入った頃____
学校も高専も休みのある日。
リビングでテレビを見ながらくつろいでいると、玄関からガチャりとドアの開く音が聞こえた。
今朝から出かけていた真人が帰ってきたらしい。
最近の真人はこうして一人でどこかに出かけることが多くなっていた。
どこに行っているのか聞いても『内緒だよ♪でも、楽しいところさ』と、はぐらかされるばかりで。
どうせ人間で遊んでいるに違いないから詳しくは聞かないけど。
たまに置いてけぼりにされているような気がして、飼い主としては胸がモヤモヤしていた。
「迎えに行った方がいい、よね。でも……」
もし人を殺してきたばかりだったらどうしよう。
愛園さんの件があって以降、真人は僕の前で人を殺す話を一切しようとしなかった。
気遣ってくれているのは分かるけど、呪霊である真人がほんの少し怖く感じる時がある。
迎えに行こうか迷っていると一足早く真人がリビングに入ってきた。
「たっだいまー!ねぇ、今ひま?紫苑に紹介したい人がいるからついてきてくれない?」
「おかえり。別にいいけど……どこに行くの?」
「それはついてからのお楽しみ!ってことで、さっそく出かけようか」
何故か上機嫌な真人に手を引かれ家を出る。
外は寒いだろうから家を出る直前、ハンガーにかけてあったコートを羽織った。
こんなに嬉しそうなのも珍しいな、僕以外に面白い玩具でも見つけたんだろうか?
もしそうだったら僕はどんな顔をしたらいいんだろう。
「……紹介したい人ってどんな人?僕よりも真人の興味を引いたの?」
「ん〜?あれ、紫苑ってばヤキモチ妬いてる?ふふ、こういうのでも人間って嫉妬するんだねぇ」
「べ、別にそんな大げさな感情じゃないよ。飼い猫の交友関係は把握しておきたいから」
手を繋いだままだからか。
僕のほんの少しのヤキモチでさえ真人には筒抜けだったらしい。
恥ずかしくて手を離そうとしても、真人は僕の手を固く握ったまま離してくれない。
それどころか、余計に固く指を絡めてきた。
「ふーん?じゃ、今はそういうことにしといてあげる。誰がいるかはついてからのお楽しみね」
「(こういう顔してる時……絶対ろくでもないこと考えてるんだよなぁ)」
余計に飼い猫の嗜虐心を煽ってしまったらしい。
もうここで引き返そうとするのは諦めた方が良さそう。
どこに連れていかれるのか分からないまま、僕は大人しく真人について行くしかなかった。
__________
しばらく歩いて、築三十年は経っているであろう古びたマンションへと連れてこられた。
故障してそうなくらいボロボロのエレベーターに乗り込み、上層階のボタンを押す。
埃っぽい空気とやけに響くエレベーターの駆動音が不安を駆り立ててくる。
こっそり真人の様子をうかがえば、いつもの不敵な笑みを浮かべていて。
どことなく見覚えのある光景にに僕はより不安を強めていった。
「ねぇ、いい加減どこに連れていく気なのか教えてよ。これじゃあ不法侵入だよ」
「あともう少しだから!ほら、もう着いたよ」
エレベーターがガコンと揺れ目的の階層に止まる。
ゆっくりと開いたドアを降りれば、そこは錆びた金属ドアが立ち並ぶマンションの廊下だった。
真人は迷うことなく一つのドアノブに手をかける。
そのまま真人が軋むドアを開けると____
晴れ渡った青空に白い雲。
太陽の光が惜しげもなく降り注ぐ、南国のビーチが広がっていた。
屋内にあるべき天井も見当たらず、外は真冬だというのに暖かい風が頬を撫でた。
「マンションの部屋の中に……海??いったいどうなっているの……いや、それならここは……」
「お待たせー!さっそく連れてきたよ」
「おや、真人。その子が君の言っていた人かい?」
あまりの景色の変わりように驚いていると、どこか聞き覚えのある声がかかる。
その声を聞いて反射的に後ずさるも、真人はまるで逃がさないといったように腰に手を回してきた。
そして、そのまま一緒に砂浜へと足を踏み入れた。
「ちょ、ちょっと待ってよ。僕がここにいるのはマズいんじゃ……」
「いーから。紫苑は俺のそばにいて」
腰を掴むツギハギの手に逆らえず大人しく隣を歩く。
少し進めば頭に縫い目のある、袈裟を着た見覚えのある男が僕達を出迎えた。
その男の他にも特級呪霊であろう三人の呪霊が訝しげにこちらを見ていた。
「まさか、本当に人間を連れてくるとは……!」
「__まぁ、まずは落ち着きましょう」
「ぶぶぅー!」
頭の火山から今にも火が吹きでそうな一つ目の呪霊。
迸る熱気を抑え込むように、大木のように大きな体の呪霊がなだめている。
その隣には赤い蛸のような呪霊もいて、本編に登場するキャラクター達で間違いはなさそうだった。
ただ、普通のキャラクターならまだしもこの空間にいるのは主人公と対峙することになる、悪役達で。
僕は思わず真人へと振り返った。
「真人、これって……」
真人は僕の驚いた顔を見ると、まるで安心させるかのようににっこりと笑った。
青と灰の瞳もイタズラが成功した猫のように細めてみせる。
次の瞬間、見覚えのある呪詛師と新しいキャラクター達に視線を向け自信満々に言い放った。
「あぁ、心配しないで紫苑。皆んな俺の誇れる仲間達だからさ!」
学校も高専も休みのある日。
リビングでテレビを見ながらくつろいでいると、玄関からガチャりとドアの開く音が聞こえた。
今朝から出かけていた真人が帰ってきたらしい。
最近の真人はこうして一人でどこかに出かけることが多くなっていた。
どこに行っているのか聞いても『内緒だよ♪でも、楽しいところさ』と、はぐらかされるばかりで。
どうせ人間で遊んでいるに違いないから詳しくは聞かないけど。
たまに置いてけぼりにされているような気がして、飼い主としては胸がモヤモヤしていた。
「迎えに行った方がいい、よね。でも……」
もし人を殺してきたばかりだったらどうしよう。
愛園さんの件があって以降、真人は僕の前で人を殺す話を一切しようとしなかった。
気遣ってくれているのは分かるけど、呪霊である真人がほんの少し怖く感じる時がある。
迎えに行こうか迷っていると一足早く真人がリビングに入ってきた。
「たっだいまー!ねぇ、今ひま?紫苑に紹介したい人がいるからついてきてくれない?」
「おかえり。別にいいけど……どこに行くの?」
「それはついてからのお楽しみ!ってことで、さっそく出かけようか」
何故か上機嫌な真人に手を引かれ家を出る。
外は寒いだろうから家を出る直前、ハンガーにかけてあったコートを羽織った。
こんなに嬉しそうなのも珍しいな、僕以外に面白い玩具でも見つけたんだろうか?
もしそうだったら僕はどんな顔をしたらいいんだろう。
「……紹介したい人ってどんな人?僕よりも真人の興味を引いたの?」
「ん〜?あれ、紫苑ってばヤキモチ妬いてる?ふふ、こういうのでも人間って嫉妬するんだねぇ」
「べ、別にそんな大げさな感情じゃないよ。飼い猫の交友関係は把握しておきたいから」
手を繋いだままだからか。
僕のほんの少しのヤキモチでさえ真人には筒抜けだったらしい。
恥ずかしくて手を離そうとしても、真人は僕の手を固く握ったまま離してくれない。
それどころか、余計に固く指を絡めてきた。
「ふーん?じゃ、今はそういうことにしといてあげる。誰がいるかはついてからのお楽しみね」
「(こういう顔してる時……絶対ろくでもないこと考えてるんだよなぁ)」
余計に飼い猫の嗜虐心を煽ってしまったらしい。
もうここで引き返そうとするのは諦めた方が良さそう。
どこに連れていかれるのか分からないまま、僕は大人しく真人について行くしかなかった。
__________
しばらく歩いて、築三十年は経っているであろう古びたマンションへと連れてこられた。
故障してそうなくらいボロボロのエレベーターに乗り込み、上層階のボタンを押す。
埃っぽい空気とやけに響くエレベーターの駆動音が不安を駆り立ててくる。
こっそり真人の様子をうかがえば、いつもの不敵な笑みを浮かべていて。
どことなく見覚えのある光景にに僕はより不安を強めていった。
「ねぇ、いい加減どこに連れていく気なのか教えてよ。これじゃあ不法侵入だよ」
「あともう少しだから!ほら、もう着いたよ」
エレベーターがガコンと揺れ目的の階層に止まる。
ゆっくりと開いたドアを降りれば、そこは錆びた金属ドアが立ち並ぶマンションの廊下だった。
真人は迷うことなく一つのドアノブに手をかける。
そのまま真人が軋むドアを開けると____
晴れ渡った青空に白い雲。
太陽の光が惜しげもなく降り注ぐ、南国のビーチが広がっていた。
屋内にあるべき天井も見当たらず、外は真冬だというのに暖かい風が頬を撫でた。
「マンションの部屋の中に……海??いったいどうなっているの……いや、それならここは……」
「お待たせー!さっそく連れてきたよ」
「おや、真人。その子が君の言っていた人かい?」
あまりの景色の変わりように驚いていると、どこか聞き覚えのある声がかかる。
その声を聞いて反射的に後ずさるも、真人はまるで逃がさないといったように腰に手を回してきた。
そして、そのまま一緒に砂浜へと足を踏み入れた。
「ちょ、ちょっと待ってよ。僕がここにいるのはマズいんじゃ……」
「いーから。紫苑は俺のそばにいて」
腰を掴むツギハギの手に逆らえず大人しく隣を歩く。
少し進めば頭に縫い目のある、袈裟を着た見覚えのある男が僕達を出迎えた。
その男の他にも特級呪霊であろう三人の呪霊が訝しげにこちらを見ていた。
「まさか、本当に人間を連れてくるとは……!」
「__まぁ、まずは落ち着きましょう」
「ぶぶぅー!」
頭の火山から今にも火が吹きでそうな一つ目の呪霊。
迸る熱気を抑え込むように、大木のように大きな体の呪霊がなだめている。
その隣には赤い蛸のような呪霊もいて、本編に登場するキャラクター達で間違いはなさそうだった。
ただ、普通のキャラクターならまだしもこの空間にいるのは主人公と対峙することになる、悪役達で。
僕は思わず真人へと振り返った。
「真人、これって……」
真人は僕の驚いた顔を見ると、まるで安心させるかのようににっこりと笑った。
青と灰の瞳もイタズラが成功した猫のように細めてみせる。
次の瞬間、見覚えのある呪詛師と新しいキャラクター達に視線を向け自信満々に言い放った。
「あぁ、心配しないで紫苑。皆んな俺の誇れる仲間達だからさ!」
