雨と猫
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【真人 side】
今日は課外授業で遅くなるとの事で、俺は家で紫苑の帰りを待っていた。
なんか県外の寺か神社を観に行くって言ってた気がするけど。
でも、予定の時刻を過ぎても紫苑が帰ってくることはなかった。
「……にしても、遅いなぁ。もうさすがに帰ってきてもいい時間じゃない?」
ソファにゴロンと寝転びながら時計を確認する。
時計の針はちょうど午後九時を指しており、事前に紫苑から伝えられていた時刻を大幅に過ぎていた。
あまりにも遅すぎて痺れを切らした俺は迎えに行こうかと身を起こすも。
「しまった、どこに行くか聞いておくんだった」
どこに行くのかまでは教えられていなかった。
都内ならまだしも、県外では呪力を使ってもさすがに探せない。
それに、最近紫苑の周りで色々怪しい気配が蠢いていたし、明らかに飼い主の身に何かあったのだろう。
前に話してた呪術師に襲われたとか?
嫌な憶測が頭の中を飛び交うけど、指示通り隠れ家に行こうとドアノブに手をかけたところで。
俺はふと足を止めた。
「……いや、俺を祓うのが目的ならここに来るか。そいつを拷問して紫苑の居場所を聞き出した方がいいよね」
玄関のドアに手をかけたところで俺は考え直した。
潜伏して機会を待つ為、紫苑の自室に閉じこもる。
決して紫苑の匂いがして落ち着くからとかじゃない、けど。
「……紫苑……」
胸にぽっかり穴が空いたような気がして俺の魂が揺らぐ。
ちっぽけな人間一人居なくなったところで俺には何の関係もないはずなのに。
なぜか魂がざわついて落ち着かない。
それでも紫苑のベッドに潜り毛布に包まれれば少し安心した。
「君は強いし、そう簡単にやられないよね?俺を置いて……いったりしないよね……?」
誰もいない暗闇に向かって呟く。
隣で俺を撫でてくれていた存在は今はもういない。
飼い主がいなくなる想像をしただけでこうも簡単に魂が揺らいでしまう。
考えれば考えるほど不安に押し潰されそうで、俺はそのまま目を閉じた。
__________
それから三日経っても紫苑は帰ってこなかった。
カーテンを締め切った真っ暗な部屋の中、紫苑のベッドの中で小さく体を丸める。
飼い主がいないというだけで俺の魂は消耗しきっていた。
「寂しい、なんて感情……俺にはなかったはずなのに」
いつか映画で見た時には理解できなかったけど、何かを失うのがこんなに辛いことだったなんて。
紫苑に聞けば寂しそうに笑って頭を撫でられたっけ。
俺は呪霊だから人に執着するなんて考えたこともなかった。
「でも今は飼い主に会いたくてたまらない……。紫苑の暖かい手でもう一度撫でられたいのに……どうして帰ってきてくれないの」
今なら紫苑の気持ちが分かる。
紫苑の魂は最初から寂しそうな音色を奏でていた。
それも俺を拾ってからは少なくなっていったけど、今でも時おり寂しそうな表情でどこか遠くを見つめている。
紫苑もずっと昔に何か大切なものを失ってしまったのかもしれない。
「俺じゃあダメだったのかな。もっと紫苑といたい、もっと……君の喜ぶ顔が見たかったのに」
ぼーっと、紫苑の部屋を見渡せば、過ごした日々の思い出が蘇る。
猫として拾われ、呪霊として飼われ、そして俺自身を受け入れてくれた。
最初は俺も紫苑を殺すつもりでいたけど、一緒に過ごすうちに惹かれていった。
もう紫苑は俺の中で大切な、かけがえのない存在なんだ。
これが仲間として、友達として、家族としての好きなのかは分からないけど。
ても、きっと人間達のいう"好き"という感情に違いなかった。
「……ッ!今の音って」
思い出に浸っていれば、不意にドアの開く音が聞こえた。
猫耳をたてて耳を澄ませば、聞き慣れた小さな足音が聞こえてくる。
警戒は怠らず自室のドアが開くのを待っていると、その足音は最後に俺がいる部屋の前までやって来て。
「紫苑ッ……!」
愛しい飼い主を腕の中に収める。
紫苑は少し驚いたような顔をしていたけれど、構わず俺は抱きしめ続けた。
「……!……真人、ただいま」
「うん、おかえり紫苑……!俺、君が帰ってこなくて……ずっと心配で……無事で良かったっ……!」
気がついたら目から勝手に水滴なようなものが零れ。
それを拭うのも忘れて腕の中の飼い主の存在を確かめる。
俺はもう離したくない一心でずっと紫苑に抱きついていた。
今日は課外授業で遅くなるとの事で、俺は家で紫苑の帰りを待っていた。
なんか県外の寺か神社を観に行くって言ってた気がするけど。
でも、予定の時刻を過ぎても紫苑が帰ってくることはなかった。
「……にしても、遅いなぁ。もうさすがに帰ってきてもいい時間じゃない?」
ソファにゴロンと寝転びながら時計を確認する。
時計の針はちょうど午後九時を指しており、事前に紫苑から伝えられていた時刻を大幅に過ぎていた。
あまりにも遅すぎて痺れを切らした俺は迎えに行こうかと身を起こすも。
「しまった、どこに行くか聞いておくんだった」
どこに行くのかまでは教えられていなかった。
都内ならまだしも、県外では呪力を使ってもさすがに探せない。
それに、最近紫苑の周りで色々怪しい気配が蠢いていたし、明らかに飼い主の身に何かあったのだろう。
前に話してた呪術師に襲われたとか?
嫌な憶測が頭の中を飛び交うけど、指示通り隠れ家に行こうとドアノブに手をかけたところで。
俺はふと足を止めた。
「……いや、俺を祓うのが目的ならここに来るか。そいつを拷問して紫苑の居場所を聞き出した方がいいよね」
玄関のドアに手をかけたところで俺は考え直した。
潜伏して機会を待つ為、紫苑の自室に閉じこもる。
決して紫苑の匂いがして落ち着くからとかじゃない、けど。
「……紫苑……」
胸にぽっかり穴が空いたような気がして俺の魂が揺らぐ。
ちっぽけな人間一人居なくなったところで俺には何の関係もないはずなのに。
なぜか魂がざわついて落ち着かない。
それでも紫苑のベッドに潜り毛布に包まれれば少し安心した。
「君は強いし、そう簡単にやられないよね?俺を置いて……いったりしないよね……?」
誰もいない暗闇に向かって呟く。
隣で俺を撫でてくれていた存在は今はもういない。
飼い主がいなくなる想像をしただけでこうも簡単に魂が揺らいでしまう。
考えれば考えるほど不安に押し潰されそうで、俺はそのまま目を閉じた。
__________
それから三日経っても紫苑は帰ってこなかった。
カーテンを締め切った真っ暗な部屋の中、紫苑のベッドの中で小さく体を丸める。
飼い主がいないというだけで俺の魂は消耗しきっていた。
「寂しい、なんて感情……俺にはなかったはずなのに」
いつか映画で見た時には理解できなかったけど、何かを失うのがこんなに辛いことだったなんて。
紫苑に聞けば寂しそうに笑って頭を撫でられたっけ。
俺は呪霊だから人に執着するなんて考えたこともなかった。
「でも今は飼い主に会いたくてたまらない……。紫苑の暖かい手でもう一度撫でられたいのに……どうして帰ってきてくれないの」
今なら紫苑の気持ちが分かる。
紫苑の魂は最初から寂しそうな音色を奏でていた。
それも俺を拾ってからは少なくなっていったけど、今でも時おり寂しそうな表情でどこか遠くを見つめている。
紫苑もずっと昔に何か大切なものを失ってしまったのかもしれない。
「俺じゃあダメだったのかな。もっと紫苑といたい、もっと……君の喜ぶ顔が見たかったのに」
ぼーっと、紫苑の部屋を見渡せば、過ごした日々の思い出が蘇る。
猫として拾われ、呪霊として飼われ、そして俺自身を受け入れてくれた。
最初は俺も紫苑を殺すつもりでいたけど、一緒に過ごすうちに惹かれていった。
もう紫苑は俺の中で大切な、かけがえのない存在なんだ。
これが仲間として、友達として、家族としての好きなのかは分からないけど。
ても、きっと人間達のいう"好き"という感情に違いなかった。
「……ッ!今の音って」
思い出に浸っていれば、不意にドアの開く音が聞こえた。
猫耳をたてて耳を澄ませば、聞き慣れた小さな足音が聞こえてくる。
警戒は怠らず自室のドアが開くのを待っていると、その足音は最後に俺がいる部屋の前までやって来て。
「紫苑ッ……!」
愛しい飼い主を腕の中に収める。
紫苑は少し驚いたような顔をしていたけれど、構わず俺は抱きしめ続けた。
「……!……真人、ただいま」
「うん、おかえり紫苑……!俺、君が帰ってこなくて……ずっと心配で……無事で良かったっ……!」
気がついたら目から勝手に水滴なようなものが零れ。
それを拭うのも忘れて腕の中の飼い主の存在を確かめる。
俺はもう離したくない一心でずっと紫苑に抱きついていた。
