雨と猫
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思い出すのは拾った猫との日々。
知らない誰かの物語である世界に一人ぼっちで生まれてしまったことが寂しくて。
ずっと誰かの温もりに包まれることを切望していた。
だから、呪霊だと分かっていたのにその猫を家に招き入れた。
思いがけず拾った猫は前世でも多くの人間に恐れられる"人の呪い"だったけど。
触れて、見て、語り合ううちに互いに思いが通じ合うようになっていった。
呪いにも心があるなんていったら目の前の男は笑うだろう。
それでも、そこには呪霊と人、分かり合えるはずのない存在が共に暮らしていた。
「僕が、守らなきゃ……。
あの子を……この世界でようやく見つけたふわふわな命を、失いたくないんだ」
頭の中を走馬灯めいた記憶が駆け巡る。
雨の中、ガラス玉のように透き通った青と灰の瞳と目が合ったことに。
今では何の後悔もしていない。
「正直、ここまで持ち堪えられるなんて思わなかったよ。
あぁ、本当に惜しい……君のような才能ある若い呪術師を殺さなければいけないなんて。
だが、大義の為だ。多少の犠牲は仕方ない。
トドメだ、八岐大蛇……やれ」
八つの鎌首をもたげながらゆっくりと死が近づいてくる。
脳裏に浮かぶ走馬灯の中、前世で見たある記憶が雷光のように閃いた。
それは呪術の極地ともいえる技。
「あるじゃないか、今の僕でも勝てる方法が……!必中必殺の必殺技____」
目を閉じ全神経をそれに集中させる。
思いついたんだからやるしかない、もう体中が痛みで悲鳴を上げていようがお構い無しだった。
地響きを鳴らしながら迫りくる大蛇には目もくれない。
そして、ゆっくりと目を開くとまっすぐに前を見据えた。
「領域展開____"輪廻世界 "!!」
思い浮かんだ言葉をそのまま叫ぶ。
その瞬間、僕を中心に青空と空を映した水面の領域が展開される。
そして、そこに引きずり込まれた八岐大蛇の体が音もなく崩れだした。
雷鳴が轟くような断末魔を上げ、光の粒子となって消えゆく大蛇。
僕はその光景をどこか他人事のように眺めながら、負と負の力を掛け合わせた正のエネルギー、すなわち"反転"の力を術式に流し込む。
「人が呪いを支配して傷つけ合う世界なんて望まないから。
君も僕と一緒に生きればいい____"再生 "」
"崩壊"で得た八岐大蛇の呪力を術式反転"再生"で一振りの剣に変える。
静かな光を湛える刀身には黄金の鱗が反射していた。
僕はその剣を構えて空高く飛び上がり、八岐大蛇の残った最後の一首に深く、深く突き刺した。
__________
八岐大蛇を完全に"崩壊"させれば、澄み渡る青の領域が崩れていく。
「なっ……!?まさか、領域展開も使えただと……!?ありえない、まだ呪術なんて習得したばかりだろうに!!」
地上では領域に巻き込まれなかった夏油が驚愕したように目を見開き、僕を見つめていた。
空高く舞い上がっていた僕は上空からその様子を眺めながら自分の限界を感じとる。
「もう、これ以上は……無理か」
とっくの昔に呪力も切れ、限界がきていた僕はそのまま空中に投げ出される。
己の最期を悟った瞬間、思い浮かんだのは最愛の飼い猫の姿だった。
「……最後に、真人に会いたかったな。
願わくば……君の未来が明るいものでありますように 」
ポツリと祈るように呟けば、力の抜けた掌から黄金に輝く剣が滑り落ちていった。
僕がゆるやかに意識を手放そうとしたその直前。
「よく頑張ったね。僕が来たからにはもう大丈夫だよ」
空中だというのにそっと誰かの腕に抱きかかえられる。
太陽の逆光でよく見えないけど、明るい白銀の髪と星のように煌めく空より蒼い瞳が視界に映った。
その"最強"の姿に安心した僕は。
ゆっくりと目を閉じ意識を手放した。
__________
知らない誰かの物語である世界に一人ぼっちで生まれてしまったことが寂しくて。
ずっと誰かの温もりに包まれることを切望していた。
だから、呪霊だと分かっていたのにその猫を家に招き入れた。
思いがけず拾った猫は前世でも多くの人間に恐れられる"人の呪い"だったけど。
触れて、見て、語り合ううちに互いに思いが通じ合うようになっていった。
呪いにも心があるなんていったら目の前の男は笑うだろう。
それでも、そこには呪霊と人、分かり合えるはずのない存在が共に暮らしていた。
「僕が、守らなきゃ……。
あの子を……この世界でようやく見つけたふわふわな命を、失いたくないんだ」
頭の中を走馬灯めいた記憶が駆け巡る。
雨の中、ガラス玉のように透き通った青と灰の瞳と目が合ったことに。
今では何の後悔もしていない。
「正直、ここまで持ち堪えられるなんて思わなかったよ。
あぁ、本当に惜しい……君のような才能ある若い呪術師を殺さなければいけないなんて。
だが、大義の為だ。多少の犠牲は仕方ない。
トドメだ、八岐大蛇……やれ」
八つの鎌首をもたげながらゆっくりと死が近づいてくる。
脳裏に浮かぶ走馬灯の中、前世で見たある記憶が雷光のように閃いた。
それは呪術の極地ともいえる技。
「あるじゃないか、今の僕でも勝てる方法が……!必中必殺の必殺技____」
目を閉じ全神経をそれに集中させる。
思いついたんだからやるしかない、もう体中が痛みで悲鳴を上げていようがお構い無しだった。
地響きを鳴らしながら迫りくる大蛇には目もくれない。
そして、ゆっくりと目を開くとまっすぐに前を見据えた。
「領域展開____"
思い浮かんだ言葉をそのまま叫ぶ。
その瞬間、僕を中心に青空と空を映した水面の領域が展開される。
そして、そこに引きずり込まれた八岐大蛇の体が音もなく崩れだした。
雷鳴が轟くような断末魔を上げ、光の粒子となって消えゆく大蛇。
僕はその光景をどこか他人事のように眺めながら、負と負の力を掛け合わせた正のエネルギー、すなわち"反転"の力を術式に流し込む。
「人が呪いを支配して傷つけ合う世界なんて望まないから。
君も僕と一緒に生きればいい____"
"崩壊"で得た八岐大蛇の呪力を術式反転"再生"で一振りの剣に変える。
静かな光を湛える刀身には黄金の鱗が反射していた。
僕はその剣を構えて空高く飛び上がり、八岐大蛇の残った最後の一首に深く、深く突き刺した。
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八岐大蛇を完全に"崩壊"させれば、澄み渡る青の領域が崩れていく。
「なっ……!?まさか、領域展開も使えただと……!?ありえない、まだ呪術なんて習得したばかりだろうに!!」
地上では領域に巻き込まれなかった夏油が驚愕したように目を見開き、僕を見つめていた。
空高く舞い上がっていた僕は上空からその様子を眺めながら自分の限界を感じとる。
「もう、これ以上は……無理か」
とっくの昔に呪力も切れ、限界がきていた僕はそのまま空中に投げ出される。
己の最期を悟った瞬間、思い浮かんだのは最愛の飼い猫の姿だった。
「……最後に、真人に会いたかったな。
願わくば……君の未来が明るいものでありますように 」
ポツリと祈るように呟けば、力の抜けた掌から黄金に輝く剣が滑り落ちていった。
僕がゆるやかに意識を手放そうとしたその直前。
「よく頑張ったね。僕が来たからにはもう大丈夫だよ」
空中だというのにそっと誰かの腕に抱きかかえられる。
太陽の逆光でよく見えないけど、明るい白銀の髪と星のように煌めく空より蒼い瞳が視界に映った。
その"最強"の姿に安心した僕は。
ゆっくりと目を閉じ意識を手放した。
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