雨と猫
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しとしと____
心地いい旋律を奏でながら雨が降っている。
昼から降り始めた雨は既に止みかけており、空を見上げればもうすぐ晴れになる予感がした。
だけど、その綺麗な音色をまだ聴いていたい僕は傘をさしたまま学校からの帰り道を歩いていた。
霧がけぶる小雨の中。
少し肌寒い空気にぶるりと震えるも雨音に耳を澄ませる。
静寂に微かな波紋を広げる雨音を聴きながら、僕は自分の身に起こったこれまでのことを思い出していた。
朧げながらも頭の中に残っている、前世の記憶____
こことよく似た世界。
歴史、科学、思想、その全てが不気味なほど似通っていた世界を僕は知っている。
だけど、そこに生きていた人間は今いる人間とはきっと違う存在なのだろう。
なぜならこの世界にしか存在し得ない者がいるから。
「やっぱり僕、"呪術廻戦"の世界に転生してるよね」
そう、ここは有象無象の"呪い"と呼ばれる存在が跋扈する世界。
自分に前世の記憶があると気づいたのは幼少の頃、初めて"呪霊"をこの瞳に映してしまった時。
それからは何度も呪霊と思しき異形を視てきた。
そのどれもが人に仇なす危険な存在で、人に話すのすら恐ろしく、これまでは一生懸命視えないふりを貫いてきた。
せっかく与えられた2度目の人生。
わざわざ危険な道に進む理由は全くない。
呪霊を避けつつ、平和に長く生きるのが今世の僕の目標だ。
雨音を聞きながらそう考えていると。
視界端、公園で何かふわふわな水色の塊が動いたような気がして思わず足を止めた。
「今視界の端で何か動いたような……って、猫?」
気になってチラリと公園を覗いてみる。
素早く動いたそれは遊具の下に一瞬で隠れてしまうけど、僕の声に興味を持ったのかそっと影から出てきた。
「やっぱり猫ちゃんだったんだね。ほら、怖くないから出ておいで」
せっかく興味を持ってもらえたのだから優しく声をかける。
実を言うと、僕はかなりの猫好きだ。
お小遣いはほとんど猫カフェか地域猫の餌として貢いでしまっているくらいには。
どんな子なのかわくわくしながら少し屈めば、思わず息を飲んだ。
冬の空のようにくすんだ水色の毛並み。
水底より深い青色と色彩を失ってしまったかのような銀灰色の、オッドアイの瞳。
神秘的な雰囲気を纏った猫が遊具の下に佇んでいた。
影の中からこちらを見つめる青と灰のオッドアイがきらりと光る。
ふわふわでありながらもどこか危ない雰囲気を放つ猫に、僕の体は導かれるように近づいた。
「にゃーん」
「か、可愛い……!
君、見かけない顔だね?この辺の子じゃないのかな?飼い主さんはいるの?」
オッドアイの猫は甘えるような声を出しながら僕の足元にすり寄ってくる。
僕もその様子に骨抜きにされ上擦った声で質問攻めにしてしまった。
さっきまでクールに人生論を語っていた僕はどこへやら。
猫の甘える様子に耐えきれず、思わずしゃがみこんで猫の頭を優しく撫でた。
猫は逃げる様子もなく、大人しく僕にふわふわな頭を撫でさせてくれる。
この辺の野良猫はだいたい知っているけどこの子は新米なのか、初めて見る顔だった。
首元に首輪もないしどこかから流れついた猫なのだろうか。
でもそんなことより、もっと重大なことに気づいてしまった。
「もふもふ……やっぱり猫は癒しだなぁ。
でも、こんな毛色の猫は見たことないし気配からして呪霊だよね……」
「__!……ゴロゴロ」
呪霊という言葉に反応してか、一瞬張り詰めた空気になる。
猫の瞳も瞳孔が縦に開き今にも噛みついてきそうな様子だった。
だけど、そんなのお構い無しといったように撫で続けていると。
緊張が解けたのか猫は気持ちよさそうに喉を鳴らし始めた。
呪霊といえど人に優しく撫でられるのは気持ちいいのかな。
その愛くるしい姿とふわふわな毛並みに僕は心を鷲掴みにされ、気づけば自分から猫を口説いていた。
「君、猫の呪霊?うちのマンションペット不可だけど呪霊なら飼ってもいいかな」
「……にゃーん」
青と灰の瞳が不思議そうに僕を見つめる。
飼い主としてふさわしいか、それとも獲物として興味を持ってもらえたのか。
実際には何を考えているのか一切分からないのだけれど。
願わくば、僕を選んで欲しい。
しばらく間を置いて、猫は承諾の返事とでもいうように小さく鳴いてみせた。
心地いい旋律を奏でながら雨が降っている。
昼から降り始めた雨は既に止みかけており、空を見上げればもうすぐ晴れになる予感がした。
だけど、その綺麗な音色をまだ聴いていたい僕は傘をさしたまま学校からの帰り道を歩いていた。
霧がけぶる小雨の中。
少し肌寒い空気にぶるりと震えるも雨音に耳を澄ませる。
静寂に微かな波紋を広げる雨音を聴きながら、僕は自分の身に起こったこれまでのことを思い出していた。
朧げながらも頭の中に残っている、前世の記憶____
こことよく似た世界。
歴史、科学、思想、その全てが不気味なほど似通っていた世界を僕は知っている。
だけど、そこに生きていた人間は今いる人間とはきっと違う存在なのだろう。
なぜならこの世界にしか存在し得ない者がいるから。
「やっぱり僕、"呪術廻戦"の世界に転生してるよね」
そう、ここは有象無象の"呪い"と呼ばれる存在が跋扈する世界。
自分に前世の記憶があると気づいたのは幼少の頃、初めて"呪霊"をこの瞳に映してしまった時。
それからは何度も呪霊と思しき異形を視てきた。
そのどれもが人に仇なす危険な存在で、人に話すのすら恐ろしく、これまでは一生懸命視えないふりを貫いてきた。
せっかく与えられた2度目の人生。
わざわざ危険な道に進む理由は全くない。
呪霊を避けつつ、平和に長く生きるのが今世の僕の目標だ。
雨音を聞きながらそう考えていると。
視界端、公園で何かふわふわな水色の塊が動いたような気がして思わず足を止めた。
「今視界の端で何か動いたような……って、猫?」
気になってチラリと公園を覗いてみる。
素早く動いたそれは遊具の下に一瞬で隠れてしまうけど、僕の声に興味を持ったのかそっと影から出てきた。
「やっぱり猫ちゃんだったんだね。ほら、怖くないから出ておいで」
せっかく興味を持ってもらえたのだから優しく声をかける。
実を言うと、僕はかなりの猫好きだ。
お小遣いはほとんど猫カフェか地域猫の餌として貢いでしまっているくらいには。
どんな子なのかわくわくしながら少し屈めば、思わず息を飲んだ。
冬の空のようにくすんだ水色の毛並み。
水底より深い青色と色彩を失ってしまったかのような銀灰色の、オッドアイの瞳。
神秘的な雰囲気を纏った猫が遊具の下に佇んでいた。
影の中からこちらを見つめる青と灰のオッドアイがきらりと光る。
ふわふわでありながらもどこか危ない雰囲気を放つ猫に、僕の体は導かれるように近づいた。
「にゃーん」
「か、可愛い……!
君、見かけない顔だね?この辺の子じゃないのかな?飼い主さんはいるの?」
オッドアイの猫は甘えるような声を出しながら僕の足元にすり寄ってくる。
僕もその様子に骨抜きにされ上擦った声で質問攻めにしてしまった。
さっきまでクールに人生論を語っていた僕はどこへやら。
猫の甘える様子に耐えきれず、思わずしゃがみこんで猫の頭を優しく撫でた。
猫は逃げる様子もなく、大人しく僕にふわふわな頭を撫でさせてくれる。
この辺の野良猫はだいたい知っているけどこの子は新米なのか、初めて見る顔だった。
首元に首輪もないしどこかから流れついた猫なのだろうか。
でもそんなことより、もっと重大なことに気づいてしまった。
「もふもふ……やっぱり猫は癒しだなぁ。
でも、こんな毛色の猫は見たことないし気配からして呪霊だよね……」
「__!……ゴロゴロ」
呪霊という言葉に反応してか、一瞬張り詰めた空気になる。
猫の瞳も瞳孔が縦に開き今にも噛みついてきそうな様子だった。
だけど、そんなのお構い無しといったように撫で続けていると。
緊張が解けたのか猫は気持ちよさそうに喉を鳴らし始めた。
呪霊といえど人に優しく撫でられるのは気持ちいいのかな。
その愛くるしい姿とふわふわな毛並みに僕は心を鷲掴みにされ、気づけば自分から猫を口説いていた。
「君、猫の呪霊?うちのマンションペット不可だけど呪霊なら飼ってもいいかな」
「……にゃーん」
青と灰の瞳が不思議そうに僕を見つめる。
飼い主としてふさわしいか、それとも獲物として興味を持ってもらえたのか。
実際には何を考えているのか一切分からないのだけれど。
願わくば、僕を選んで欲しい。
しばらく間を置いて、猫は承諾の返事とでもいうように小さく鳴いてみせた。
