雨と猫
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寒さが本格的に舞い込む十一月中旬。
季節の移り変わりとともに、僕の日常も以前とは変わっていっていた。
「ほら!よそ見してると危ないよッ……!」
「……ッ!!」
顔のすぐ横を真人の拳が通り過ぎる。
すんでのところで避けたものの頬に風圧を感じた。
僕はそのまま踏み込み、カウンター狙いで呪力を込めた殴打を返す。
「そっちこそ手加減しすぎなんじゃ……うわっ!?」
「はい、勝負あり〜!拳に呪力は乗ってたけど、当たらなかったら意味無いね」
いつの間にか変形させていた真人の腕に足を掴まれ、逆さまに吊るされる。
逆さまな視界の中でも真人の顔は良く見えていた。
「集中できていなかったようだけど、何か考え事?」
「……うん。ちょっとね」
「そっか。俺も紫苑に怪我させたくないし、体術はここまでにしとこう」
丁寧に降ろされ、逆さまだった視界が元に戻る。
最近では真人に空いた時間に戦闘面での訓練をしてもらっていた。
ここは真人の隠れ家である地下トンネルで、人目につかず呪術の訓練が出来る。
真人はくるりと背を向けると揺れるハンモックに飛び乗った。
「俺といる時に他のこと考えてるとか妬けるなぁ……」
「大丈夫、ちゃんと真人の事も考えてたから」
「本当?だとしても、訓練中に考え事は危ないよ。手加減してるとはいえ君の呪力による防御はまだまだ低いんだから」
注意力散漫になっていたことを真人に咎められる。
最近になってやっと呪術を学び始めたとはいえ、体術や呪力のコントロールはまだ未熟だった。
「俺は出来るだけ紫苑を傷つけたくないんだ。本当はこの訓練だって危ないから嫌なのに……」
「次からは気をつけるから、ねっ先生?」
先生と呼んでみたら『まったく、君の力への渇望は底なしだね』と、ため息をついてみせる。
正確には、真人と順平の事を考えていた。
順平とはあの後友達になり、たまに会ったり連絡を取りあったりもしている。
いじめを止めたことで順平が真人に関わらないようになればいいけど。
「次は呪術の訓練もしよ?」
「えー?体術やったばっかだし少し俺と遊んでよ」
次の訓練をせがめば、真人に体を引っ張られ僕もハンモックの上に乗せられる。
そして、そのまま真人に抱きしめられる形に収まった。
ゆらゆらと揺れるハンモックは乗ってみれば意外と居心地が良かった。
「(そういえば……ここにも改造人間がいないなぁ。……僕に見せたくないのかな?)」
ふと、ハンモックの上からトンネル内を見渡す。
本編で幾度となく主人公を追い詰めていた、真人の手駒である改造人間は一人も見当たらない。
それどころか、真人は僕との訓練の際にも改造人間を使うことは一切なかった。
「(僕は真人のこと受け入れてるから隠さなくたっていいのに……)」
「あー!また考え事してる!こうなったら……お仕置だね?」
「ん、ふふっ……くすぐったいってば!もう……」
痺れを切らした真人に脇やお腹をくすぐられる。
その容赦ない攻めに、胸に感じていた黒いモヤモヤは一気に霧散した。
__________
真人とひとしきりじゃれあった後、ちゃんと呪術の訓練も見てもらっていた。
側で呪力の流れを見てもらいながら術式を発動させる。
「そうそう、そのまま術式に呪力を流し込んで……」
「____"崩壊 "」
僕がそう呟くと同時に、遠くに見える缶が一瞬で光の粒子となって消え失せた。
近寄って見てみても跡形もなく消えているのが分かる。
「無機物に対する術式の効果は視覚の範囲内ってところか」
「対象が呪力のある物の方が範囲広いんだけど……?」
「それは無意識に呪力のある物を感知してるからじゃないかな?
無機物には呪力がないから……見えてる範囲のものしか壊せないっぽいね」
真人が僕の術式について考察してくれている。
色々試したけど……どうやら、僕の術式は対象が呪力のあるなしで効果範囲が変わるようだった。
無機物の場合は視覚の範囲内が限界らしいから覚えておこう。
「眼鏡でも買おうかな」
「いや、たいていの呪霊なら一撃で祓えるんだから十分さ。ま、メガネをつけた紫苑も見てみたいけどねっ!」
実は真人に連れられて呪霊相手にも術式を試してみた時。
例え姿が見えてなくても気配さえ分かれば、呪霊を"崩壊"で祓えた。
「強い呪霊となると相手の呪力を削り切れるかの勝負かぁ」
「特級なら俺で試せるよ?」
「それは絶対ダメだって!!」
真人には魂への攻撃以外は効かない。
だけど、僕の術式はその魂すら崩壊させる可能性があるので絶対に試したくなかった。
「うーん……でも俺が見た感じ、まだ呪力消費に無駄が多いからそこを効率化していきたい所だね」
「確かに……僕もそう感じてた」
「対象によって呪力消費が違うから、ちゃんと使い分けないとね。ただの空き缶と呪霊を同じ呪力量で壊すのは馬鹿馬鹿しいだろ?」
ごもっともな指摘に『うぐっ』となる。
いつもの軽い態度からは想像できない真面目な教え方。
本編では真人は順平に呪術を教えていたし、先生の才能があるのかもしれない。
「……早く強くならなきゃ」
「……そうだね。俺も紫苑の為にも頑張るよ」
夏油が最後に『また会いに来る』って言っていたのが気になる。
その妙な胸騒ぎは僕に焦りをもたらしていた。
__________
季節の移り変わりとともに、僕の日常も以前とは変わっていっていた。
「ほら!よそ見してると危ないよッ……!」
「……ッ!!」
顔のすぐ横を真人の拳が通り過ぎる。
すんでのところで避けたものの頬に風圧を感じた。
僕はそのまま踏み込み、カウンター狙いで呪力を込めた殴打を返す。
「そっちこそ手加減しすぎなんじゃ……うわっ!?」
「はい、勝負あり〜!拳に呪力は乗ってたけど、当たらなかったら意味無いね」
いつの間にか変形させていた真人の腕に足を掴まれ、逆さまに吊るされる。
逆さまな視界の中でも真人の顔は良く見えていた。
「集中できていなかったようだけど、何か考え事?」
「……うん。ちょっとね」
「そっか。俺も紫苑に怪我させたくないし、体術はここまでにしとこう」
丁寧に降ろされ、逆さまだった視界が元に戻る。
最近では真人に空いた時間に戦闘面での訓練をしてもらっていた。
ここは真人の隠れ家である地下トンネルで、人目につかず呪術の訓練が出来る。
真人はくるりと背を向けると揺れるハンモックに飛び乗った。
「俺といる時に他のこと考えてるとか妬けるなぁ……」
「大丈夫、ちゃんと真人の事も考えてたから」
「本当?だとしても、訓練中に考え事は危ないよ。手加減してるとはいえ君の呪力による防御はまだまだ低いんだから」
注意力散漫になっていたことを真人に咎められる。
最近になってやっと呪術を学び始めたとはいえ、体術や呪力のコントロールはまだ未熟だった。
「俺は出来るだけ紫苑を傷つけたくないんだ。本当はこの訓練だって危ないから嫌なのに……」
「次からは気をつけるから、ねっ先生?」
先生と呼んでみたら『まったく、君の力への渇望は底なしだね』と、ため息をついてみせる。
正確には、真人と順平の事を考えていた。
順平とはあの後友達になり、たまに会ったり連絡を取りあったりもしている。
いじめを止めたことで順平が真人に関わらないようになればいいけど。
「次は呪術の訓練もしよ?」
「えー?体術やったばっかだし少し俺と遊んでよ」
次の訓練をせがめば、真人に体を引っ張られ僕もハンモックの上に乗せられる。
そして、そのまま真人に抱きしめられる形に収まった。
ゆらゆらと揺れるハンモックは乗ってみれば意外と居心地が良かった。
「(そういえば……ここにも改造人間がいないなぁ。……僕に見せたくないのかな?)」
ふと、ハンモックの上からトンネル内を見渡す。
本編で幾度となく主人公を追い詰めていた、真人の手駒である改造人間は一人も見当たらない。
それどころか、真人は僕との訓練の際にも改造人間を使うことは一切なかった。
「(僕は真人のこと受け入れてるから隠さなくたっていいのに……)」
「あー!また考え事してる!こうなったら……お仕置だね?」
「ん、ふふっ……くすぐったいってば!もう……」
痺れを切らした真人に脇やお腹をくすぐられる。
その容赦ない攻めに、胸に感じていた黒いモヤモヤは一気に霧散した。
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真人とひとしきりじゃれあった後、ちゃんと呪術の訓練も見てもらっていた。
側で呪力の流れを見てもらいながら術式を発動させる。
「そうそう、そのまま術式に呪力を流し込んで……」
「____"
僕がそう呟くと同時に、遠くに見える缶が一瞬で光の粒子となって消え失せた。
近寄って見てみても跡形もなく消えているのが分かる。
「無機物に対する術式の効果は視覚の範囲内ってところか」
「対象が呪力のある物の方が範囲広いんだけど……?」
「それは無意識に呪力のある物を感知してるからじゃないかな?
無機物には呪力がないから……見えてる範囲のものしか壊せないっぽいね」
真人が僕の術式について考察してくれている。
色々試したけど……どうやら、僕の術式は対象が呪力のあるなしで効果範囲が変わるようだった。
無機物の場合は視覚の範囲内が限界らしいから覚えておこう。
「眼鏡でも買おうかな」
「いや、たいていの呪霊なら一撃で祓えるんだから十分さ。ま、メガネをつけた紫苑も見てみたいけどねっ!」
実は真人に連れられて呪霊相手にも術式を試してみた時。
例え姿が見えてなくても気配さえ分かれば、呪霊を"崩壊"で祓えた。
「強い呪霊となると相手の呪力を削り切れるかの勝負かぁ」
「特級なら俺で試せるよ?」
「それは絶対ダメだって!!」
真人には魂への攻撃以外は効かない。
だけど、僕の術式はその魂すら崩壊させる可能性があるので絶対に試したくなかった。
「うーん……でも俺が見た感じ、まだ呪力消費に無駄が多いからそこを効率化していきたい所だね」
「確かに……僕もそう感じてた」
「対象によって呪力消費が違うから、ちゃんと使い分けないとね。ただの空き缶と呪霊を同じ呪力量で壊すのは馬鹿馬鹿しいだろ?」
ごもっともな指摘に『うぐっ』となる。
いつもの軽い態度からは想像できない真面目な教え方。
本編では真人は順平に呪術を教えていたし、先生の才能があるのかもしれない。
「……早く強くならなきゃ」
「……そうだね。俺も紫苑の為にも頑張るよ」
夏油が最後に『また会いに来る』って言っていたのが気になる。
その妙な胸騒ぎは僕に焦りをもたらしていた。
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