雨と猫
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愛園さんが行方不明。
その衝撃的な事実は飼い猫を疑うのに十分だった。
友人達の話によると、愛園さんが僕を呼び出した先週金曜日の放課後以降、行方が分からなくなっているらしい。
愛園さんの親は正式な捜索願いを警察に提出したらしく、朝のホームルームでも先生が情報提供を呼びかけていた。
もちろん僕と愛園さんが屋上で話していたことは皆んな知っているし僕まで疑われて噂されていた。
「(このタイミングは……真人のせいとしか思えない。でも、問い詰めたところで何が変わるんだろう……)」
ヒソヒソと話し声が聞こえる中、自分の置かれた状況が愛園さんと重なった。
正直、僕もいつ無為転変されるか分からない。
僕がまだ生きているのは運良く真人に気に入られてるからで。
所詮は人と呪いの関係、深く聞けば呪術を使えない僕なんか簡単に殺されるに決まってる。
「(……ここに連絡していれば、愛園さんは助かったのかな)」
愛園さんからもらった紙をポケットから取り出し眺める。
もしここに連絡していれば愛園さんは今も生きていたかもしれない。
それとも僕が不用意に真人を刺激したせいで彼女は死んだのか。
そんな考えが頭の中にぐるぐると浮かんできて、いてもたってもいられずその日は学校を早退した。
__________
いつもの帰り道をおぼつかない足取りで歩く。
まだ昼前で通りは明るいというのに、カーブミラーを見上げた僕の顔は真っ青だった。
帰ったところで真人と会うことになるけど愛園さんのことはハッキリさせておきたい。
願わくば彼女がまだ生きていますようにと、願ってしまう。
できるだけ人と目を合わせないよう俯いて歩いていると、視界の先に草履と足袋を履いた足元が映った。
「こんにちは。何か悩んでいる顔をしているね?」
「ッ!?あ、あなたは……?」
急に声をかけられ顔を上げれば、そこには僧侶のような袈裟を来た男が立っていた。
長い黒髪を後ろでハーフアップで束ね、胡散臭い笑みを浮かべている男。
その姿には見覚えがあった。
正確には前世の記憶でだけど、驚く僕に構うことなく男は話を続ける。
「あぁ、突然すまない。私は夏油 傑、君に聞きたいことがあって声をかけたんだ」
夏油と名乗ったその男は僕に触れられる距離まで近づいてくる。
名前も一致しているしやっぱり"呪術廻戦"の登場人物で間違いないようだった。
原作のキャラクターの中でも夏油は呪術を扱えない人間には容赦ない、危険な呪詛師だ。
ようやく警戒する気になった僕を夏油は絡みつくような視線で縫いとめる。
「最近、この辺りで行方不明者が増えていてね……君、何か知らないかい?」
「……知りません、何も」
心の内まで見透かしてきそうな視線に思わず後退る。
だけど、夏油はまるで逃がさないといった風に僕の両肩をガシッと掴んできた。
掴まれた肩はギシギシと嫌な音を立てて痛みまで感じる。
「本当に?こんなに強い呪力の痕が残っているというのに……嘘はいけないよ。それにこんなに顔色も悪いじゃないか」
「っ……!は、離して……!誰か、」
「誰も助けてくれないよ。君が逃げようとしないならこちらも無理に捕まえないさ」
穏やかな笑みを浮かべ聞いてくるけど、その目は一切笑っていない。
肩を掴む手を振り払おうとしたら軽く抑え込まれた。
わずな抵抗すら許さないその威圧感に息がしにくくなってくる。
「あぁ、怖がらないで。私は君を助けたいだけなんだ」
「助けるって……何から……?」
なぜか周囲に人はおらず、他の人に助けを求めることも出来ない。
一般人がいたところで最悪の呪詛師である夏油を止められる術なんかないんだろうけど、このままでは僕まで人知れず行方不明になってしまう。
今は大人しく夏油の話を聞くしかなかった。
「見たところ君はとても強い呪霊にとり憑かれている。心当たりはあるだろう……?私ならそいつを祓ってあげられるんだ」
「(真人を……祓う……?)」
夏油がそう提案するのは祓った呪霊を取り込む為だろう。
真人のような特級クラスの呪霊なら夏油も手札として欲しがるはず、この冬に呪術高専を襲う計画もあるだろうから。
だけど、僕は真人のことを____
「また近いうちに君に会いに来よう。それまでにどうするか決めておいてくれ」
そう言って夏油はパッと手を離す。
わざと見逃すような素振りを見せるのは強者ゆえの余裕からか。
一刻も早くその場から逃げたかった僕は後ろも振り返らず、急いで立ち去った。
その衝撃的な事実は飼い猫を疑うのに十分だった。
友人達の話によると、愛園さんが僕を呼び出した先週金曜日の放課後以降、行方が分からなくなっているらしい。
愛園さんの親は正式な捜索願いを警察に提出したらしく、朝のホームルームでも先生が情報提供を呼びかけていた。
もちろん僕と愛園さんが屋上で話していたことは皆んな知っているし僕まで疑われて噂されていた。
「(このタイミングは……真人のせいとしか思えない。でも、問い詰めたところで何が変わるんだろう……)」
ヒソヒソと話し声が聞こえる中、自分の置かれた状況が愛園さんと重なった。
正直、僕もいつ無為転変されるか分からない。
僕がまだ生きているのは運良く真人に気に入られてるからで。
所詮は人と呪いの関係、深く聞けば呪術を使えない僕なんか簡単に殺されるに決まってる。
「(……ここに連絡していれば、愛園さんは助かったのかな)」
愛園さんからもらった紙をポケットから取り出し眺める。
もしここに連絡していれば愛園さんは今も生きていたかもしれない。
それとも僕が不用意に真人を刺激したせいで彼女は死んだのか。
そんな考えが頭の中にぐるぐると浮かんできて、いてもたってもいられずその日は学校を早退した。
__________
いつもの帰り道をおぼつかない足取りで歩く。
まだ昼前で通りは明るいというのに、カーブミラーを見上げた僕の顔は真っ青だった。
帰ったところで真人と会うことになるけど愛園さんのことはハッキリさせておきたい。
願わくば彼女がまだ生きていますようにと、願ってしまう。
できるだけ人と目を合わせないよう俯いて歩いていると、視界の先に草履と足袋を履いた足元が映った。
「こんにちは。何か悩んでいる顔をしているね?」
「ッ!?あ、あなたは……?」
急に声をかけられ顔を上げれば、そこには僧侶のような袈裟を来た男が立っていた。
長い黒髪を後ろでハーフアップで束ね、胡散臭い笑みを浮かべている男。
その姿には見覚えがあった。
正確には前世の記憶でだけど、驚く僕に構うことなく男は話を続ける。
「あぁ、突然すまない。私は夏油 傑、君に聞きたいことがあって声をかけたんだ」
夏油と名乗ったその男は僕に触れられる距離まで近づいてくる。
名前も一致しているしやっぱり"呪術廻戦"の登場人物で間違いないようだった。
原作のキャラクターの中でも夏油は呪術を扱えない人間には容赦ない、危険な呪詛師だ。
ようやく警戒する気になった僕を夏油は絡みつくような視線で縫いとめる。
「最近、この辺りで行方不明者が増えていてね……君、何か知らないかい?」
「……知りません、何も」
心の内まで見透かしてきそうな視線に思わず後退る。
だけど、夏油はまるで逃がさないといった風に僕の両肩をガシッと掴んできた。
掴まれた肩はギシギシと嫌な音を立てて痛みまで感じる。
「本当に?こんなに強い呪力の痕が残っているというのに……嘘はいけないよ。それにこんなに顔色も悪いじゃないか」
「っ……!は、離して……!誰か、」
「誰も助けてくれないよ。君が逃げようとしないならこちらも無理に捕まえないさ」
穏やかな笑みを浮かべ聞いてくるけど、その目は一切笑っていない。
肩を掴む手を振り払おうとしたら軽く抑え込まれた。
わずな抵抗すら許さないその威圧感に息がしにくくなってくる。
「あぁ、怖がらないで。私は君を助けたいだけなんだ」
「助けるって……何から……?」
なぜか周囲に人はおらず、他の人に助けを求めることも出来ない。
一般人がいたところで最悪の呪詛師である夏油を止められる術なんかないんだろうけど、このままでは僕まで人知れず行方不明になってしまう。
今は大人しく夏油の話を聞くしかなかった。
「見たところ君はとても強い呪霊にとり憑かれている。心当たりはあるだろう……?私ならそいつを祓ってあげられるんだ」
「(真人を……祓う……?)」
夏油がそう提案するのは祓った呪霊を取り込む為だろう。
真人のような特級クラスの呪霊なら夏油も手札として欲しがるはず、この冬に呪術高専を襲う計画もあるだろうから。
だけど、僕は真人のことを____
「また近いうちに君に会いに来よう。それまでにどうするか決めておいてくれ」
そう言って夏油はパッと手を離す。
わざと見逃すような素振りを見せるのは強者ゆえの余裕からか。
一刻も早くその場から逃げたかった僕は後ろも振り返らず、急いで立ち去った。
