雨と猫
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【真人 side】
ある週末の夕方____
紫苑の帰りを家で待っていれば玄関前で誰かが佇んでいる気配がした。
当然、飼い主の帰宅だと思い玄関に出迎えに向かう。
でも何故かいっこうに扉が開く気配はなく、訝しんだ俺は自分で扉を開けた。
そこには予想通り紫苑が立っていて、思い詰めた表情で床を見つめていた。
「紫苑?玄関で何してるの……って、顔が真っ青だよ!?大丈夫……?」
元から白い肌だけど俺の目には更に血色が失せたように見えていた。
一瞬、体調不良なのかと心配する。
だけど、いつものように優しく声をかけても帰ってくるのは拒絶の言葉で。
訝しむ俺をスルーして紫苑は自分の部屋に閉じこもってしまった。
「朝に学校に向かった時は大丈夫そうだったし、学校で何かあったのかな?……となると、アイツか」
飼い主の不調の原因を探るべく俺は考える。
紫苑の学校には一人、俺のことが視えているであろう女子生徒がいた。
俺がいる時は関わってこないようにしていたし、騒ぎを起こしたくない紫苑を尊重してあえて見逃してやっていた。
そいつに俺の事で何か言われたんだろう。
本当に目障りな人間だな……俺はまだ飼い主に何もしていないというのに。
「大丈夫だよ、紫苑。君の悩みは俺が消してあげる。悩みだけじゃない、目障り人間達も……ね」
たまには飼い主の為に働くのもいいかもしない。
それに、久々に狩りを楽しみたいと思っていたところだ。
呪いが視えない人間で遊ぶのもいい加減飽きてきたところだしね、今度はどういう風に遊んでやろうかな。
そいつの呪力を覚えている俺は外に飛び出していった。
__________
夕焼けと宵闇が混じり合う逢魔が時。
わざと人気がない路地裏を選び、改造人間を使って獲物を追い込んでいく。
夕闇が辺りを暗く覆っていく中、獲物の必死な息づかいだけがこだましていた。
「はぁ、はぁっ……!」
獲物も捕まればどうなるか分かっているのか必死に逃げる。
その後を俺は悠然と追いかける。
相手は所詮人間の小娘だし、特級呪霊から逃げ続けるにも限界はあった。
俺はその様子を愉しみながらゆっくりと袋小路に追い詰めていった。
「あーあ、残念。もう逃げられないね」
目の前は壁で行き止まり。
必死に逃げていた少女はそこで立ち尽くす。
俺が後ろから声をかければ、少女は未だ光を失わない瞳でキッと俺を睨みつけてきた。
「……貴方が、猫宮君にとり憑いている呪霊?まさか、意思疎通も可能な特級呪霊だったとはね」
「とり憑いてるなんて言い方はやめてほしいなぁ。一緒に仲良く暮らしているだけだよ。今は、ね」
とり憑いてるなんて物騒な言い方をされたから訂正しておいた。
今のところ紫苑をどうこうする気はないし、一緒に暮らしてるだけだという事実をそのまま伝える。
あと少しで俺も紫苑に信頼されていたのに、この女のせいでまた関係が振り出しに戻ってしまったんだから勘弁して欲しい。
だけど、少女は信じられないというように顔を歪めた。
「そんなわけないじゃない……!呪霊は人間の敵なのよ!仲良く暮らすなんてそんな馬鹿な話、あるわけないじゃない……!!」
そいつの言葉に俺はいっそう不機嫌になる。
確かに、最初は紫苑をどういたぶってやろうかと思っていた。
でも、今はその辺の人間とは違う特別な存在。
そうやすやすと手放してやる気はないし、俺が飽きるまで側にいるつもりだった。
「あのさぁ……決めつけは良くないよ?俺は紫苑を気に入ってるんだ。だから、殺さず手元に置いておく。紫苑だって俺のことを受け入れてるよ」
「いいえ、いつか絶対手にかけるわ!例え今はそのつもりがなくてもね!それが嫌なら……早く猫宮君を解放してあげてっ……!」
少女は耳障りな金切り声で叫んだ。
声だけではない、感情すら魂の代謝として視える俺からすると相当不快なものに感じる。
それ以上、その声を聞きたくなかった俺は無理やりソイツの首を掴む。
自分でもどうしてこんなにイラついているのか分からない。
気づけば俺は苛立たしげに顔を歪ませていた。
最初は改造人間に殺さようと思ったけど、己の手で殺そうと殺意がみなぎる。
力を込めれば白く細い少女の首がギシリと嫌な音を立てた。
「はぁ?何も知らない人間の癖に。もういいから、黙れよ____"無為転変"」
ある週末の夕方____
紫苑の帰りを家で待っていれば玄関前で誰かが佇んでいる気配がした。
当然、飼い主の帰宅だと思い玄関に出迎えに向かう。
でも何故かいっこうに扉が開く気配はなく、訝しんだ俺は自分で扉を開けた。
そこには予想通り紫苑が立っていて、思い詰めた表情で床を見つめていた。
「紫苑?玄関で何してるの……って、顔が真っ青だよ!?大丈夫……?」
元から白い肌だけど俺の目には更に血色が失せたように見えていた。
一瞬、体調不良なのかと心配する。
だけど、いつものように優しく声をかけても帰ってくるのは拒絶の言葉で。
訝しむ俺をスルーして紫苑は自分の部屋に閉じこもってしまった。
「朝に学校に向かった時は大丈夫そうだったし、学校で何かあったのかな?……となると、アイツか」
飼い主の不調の原因を探るべく俺は考える。
紫苑の学校には一人、俺のことが視えているであろう女子生徒がいた。
俺がいる時は関わってこないようにしていたし、騒ぎを起こしたくない紫苑を尊重してあえて見逃してやっていた。
そいつに俺の事で何か言われたんだろう。
本当に目障りな人間だな……俺はまだ飼い主に何もしていないというのに。
「大丈夫だよ、紫苑。君の悩みは俺が消してあげる。悩みだけじゃない、目障り人間達も……ね」
たまには飼い主の為に働くのもいいかもしない。
それに、久々に狩りを楽しみたいと思っていたところだ。
呪いが視えない人間で遊ぶのもいい加減飽きてきたところだしね、今度はどういう風に遊んでやろうかな。
そいつの呪力を覚えている俺は外に飛び出していった。
__________
夕焼けと宵闇が混じり合う逢魔が時。
わざと人気がない路地裏を選び、改造人間を使って獲物を追い込んでいく。
夕闇が辺りを暗く覆っていく中、獲物の必死な息づかいだけがこだましていた。
「はぁ、はぁっ……!」
獲物も捕まればどうなるか分かっているのか必死に逃げる。
その後を俺は悠然と追いかける。
相手は所詮人間の小娘だし、特級呪霊から逃げ続けるにも限界はあった。
俺はその様子を愉しみながらゆっくりと袋小路に追い詰めていった。
「あーあ、残念。もう逃げられないね」
目の前は壁で行き止まり。
必死に逃げていた少女はそこで立ち尽くす。
俺が後ろから声をかければ、少女は未だ光を失わない瞳でキッと俺を睨みつけてきた。
「……貴方が、猫宮君にとり憑いている呪霊?まさか、意思疎通も可能な特級呪霊だったとはね」
「とり憑いてるなんて言い方はやめてほしいなぁ。一緒に仲良く暮らしているだけだよ。今は、ね」
とり憑いてるなんて物騒な言い方をされたから訂正しておいた。
今のところ紫苑をどうこうする気はないし、一緒に暮らしてるだけだという事実をそのまま伝える。
あと少しで俺も紫苑に信頼されていたのに、この女のせいでまた関係が振り出しに戻ってしまったんだから勘弁して欲しい。
だけど、少女は信じられないというように顔を歪めた。
「そんなわけないじゃない……!呪霊は人間の敵なのよ!仲良く暮らすなんてそんな馬鹿な話、あるわけないじゃない……!!」
そいつの言葉に俺はいっそう不機嫌になる。
確かに、最初は紫苑をどういたぶってやろうかと思っていた。
でも、今はその辺の人間とは違う特別な存在。
そうやすやすと手放してやる気はないし、俺が飽きるまで側にいるつもりだった。
「あのさぁ……決めつけは良くないよ?俺は紫苑を気に入ってるんだ。だから、殺さず手元に置いておく。紫苑だって俺のことを受け入れてるよ」
「いいえ、いつか絶対手にかけるわ!例え今はそのつもりがなくてもね!それが嫌なら……早く猫宮君を解放してあげてっ……!」
少女は耳障りな金切り声で叫んだ。
声だけではない、感情すら魂の代謝として視える俺からすると相当不快なものに感じる。
それ以上、その声を聞きたくなかった俺は無理やりソイツの首を掴む。
自分でもどうしてこんなにイラついているのか分からない。
気づけば俺は苛立たしげに顔を歪ませていた。
最初は改造人間に殺さようと思ったけど、己の手で殺そうと殺意がみなぎる。
力を込めれば白く細い少女の首がギシリと嫌な音を立てた。
「はぁ?何も知らない人間の癖に。もういいから、黙れよ____"無為転変"」
