雨と猫
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【真人 side】
カーテンの隙間から朝日が射す部屋の中。
隣で何かもそもぞと動く気配がして目を覚ます。
俺もいつの間にか眠ってしまったのだろうか、まさか人間の隣で睡眠を貪る日が来るなんて。
さて、どう少年を起こしてやろうかと考えていれば何やら小さな手が俺の胸筋辺りに触れた。
「う〜ん……。ねこちゃ……どこ……」
まだ夢の中なのか、その手は昨日拾った猫を探しているようで。
あいにく、その猫は今や人の呪いとして少年の隣に寝そべっている。
今から少年に俺の正体を伝えるのが楽しみで仕方ない。
俺もそろそろ起きるかと目を開けたら、怯えるように俺を見つめる桜色の瞳と目があった。
「だ、だれ……ですか?」
「え〜?酷いなぁ。昨日あんなに熱い夜を過ごしたのに、もう忘れちゃったの?」
震える少年の反応が面白くてわざとからかってやる。
人間が抱く恐怖の感情こそ俺たち呪霊が好むものだけど、この少年が見せる表情は別格だった。
もっと虐めてやりたくなる衝動を抑えつつ、己の正体と名前を明かす。
「俺は真人、人が人を憎み恐れた腹から生まれた呪いさ。そして、君に拾われた猫だよ」
「真人……?」
「そうだよ。ふふ、まだ起きたばっかで混乱してるみたいだね。こうすれば寝ぼすけな君にも分かるかな?」
少年の小さく愛らしい唇が俺の名を紡ぐ。
それだけで俺の魂が震えるほど歓喜しているのを感じ取った。
この人間の何が俺の魂の琴線に触れたのか、興味を抱き始める。
そして相変わらず少年は俺の正体にまだピンと来てなさそうだったから、猫耳と尻尾でヒントを与えてやった。
尻尾を太ももの付け根あたりに絡ませれば少年はまた艶やかな声で啼いてみせる。
ふわふわな尻尾を触る内にすぐに拾った猫のことを思い出したようだ。
「じゃあ、昨日僕が拾った猫は……」
「ふふ、正解〜!君の隣は心地いいからさ、つい気が緩んで戻っちゃった」
そこでようやく自分が拾った猫が特級呪霊だと気づいたんだろう。
少年の顔が絶望と恐怖に歪むも、どこか諦めたような感情も垣間見えた。
この歳で生への渇望が少ないなんて何かあったのだろうか。
まぁ、今の俺は機嫌がいいし今すぐ殺すような真似はしない。
拾った猫を思い出してもらったところで、俺も少年の名前を聞き出すことにした。
「君の名前を教えてよ!」
「……聞いてどうするの?」
「どうするって……君は俺の飼い主でしょ?俺、しばらく君と一緒にいたいし!」
「えっ、それは困る……ます」
だけどこの少年、たやすく手折れてしまいそうな儚げな印象とは裏腹になかなか強情なようで。
俺に名前を教えるのを渋っていた様子だったから強引な手段に出た。
細い手首をひとまとめにベッドに押さえつけ、白い首元へと牙を押し当てる。
「ひっ……や、やめて……!」
「あはっ、いい反応するじゃん♪」
か弱い抵抗すらも力づくで封じ込め己の立場をより一層分からせてやる。
少し力を込めれば簡単に折れてしまいそうな体。
術師でもない少年が特級呪霊である俺に抗うすべはなく、身悶えることしか出来ない獲物に舌なめずりをする。
湧いた加虐心の赴くままに少し刺激を与えてやれば、少年は潤んだ瞳で見つめ返してくる。
そして、やっとその強情な口を開いた。
「紫苑、僕の名前は、猫宮 紫苑……だよ」
「紫苑……!うん覚えた。これからよろしくね、紫苑!」
ようやく少年の名前を聞き出せた俺は忘れないよう何度も呟く。
たかが人間、獲物の名前など覚える必要なんて全くないが。
何故だか紫苑の名を呼ぶと魂がうさぎのように跳ね、嬉しくてたまらなくなった。
俺も俺で嬉しさに身悶えていたところ、紫苑は『他に仲間ができるまで』という条件付きで一緒に住むことを許可してくれた。
向こうは俺のことを一時的な居候猫だと思っているようだけど。
俺はもう#紫苑#を手放すつもりはない。
紫苑はというとそんな俺の思惑に気づくはずもなく、今度は俺の裸に恥ずかしがっていた。
俺は人の姿にかなり近い呪霊であるというだけで、服の有無など気にする必要なんてないのに。
頬を赤らめながらわざわざ服まで用意してくれる。
聞けば父の服だという。
親の方には興味ないけれど、俺を拾ったのも親がいない寂しさ故だろう。
つけ込む隙を見つけ、紫苑を俺に依存させようと企んだ。
__________
「それで……僕と一緒に過ごすなら守ってほしいことがあるんだ。
まず、僕の周りの人は殺さないで。飼い猫が人を傷つけるなんて嫌だから」
紫苑はあくまで俺を猫として飼うことにしたらしい。
殺させない対象を『自分と周りの人間』に限定したのは、呪霊のことをある程度知っているからだろうか。
俺たち呪霊は本能で人を殺める。
それは抗いようのない衝動で抑えることは到底出来ない。
だから、この少年は自分達を傷つけさえしなければ他人を傷つけてもいいと言っているのだ。
人間らしい、自己中心的な考え。
俺はそんなエゴにまみれたルールを聞いてあげることにした。
カーテンの隙間から朝日が射す部屋の中。
隣で何かもそもぞと動く気配がして目を覚ます。
俺もいつの間にか眠ってしまったのだろうか、まさか人間の隣で睡眠を貪る日が来るなんて。
さて、どう少年を起こしてやろうかと考えていれば何やら小さな手が俺の胸筋辺りに触れた。
「う〜ん……。ねこちゃ……どこ……」
まだ夢の中なのか、その手は昨日拾った猫を探しているようで。
あいにく、その猫は今や人の呪いとして少年の隣に寝そべっている。
今から少年に俺の正体を伝えるのが楽しみで仕方ない。
俺もそろそろ起きるかと目を開けたら、怯えるように俺を見つめる桜色の瞳と目があった。
「だ、だれ……ですか?」
「え〜?酷いなぁ。昨日あんなに熱い夜を過ごしたのに、もう忘れちゃったの?」
震える少年の反応が面白くてわざとからかってやる。
人間が抱く恐怖の感情こそ俺たち呪霊が好むものだけど、この少年が見せる表情は別格だった。
もっと虐めてやりたくなる衝動を抑えつつ、己の正体と名前を明かす。
「俺は真人、人が人を憎み恐れた腹から生まれた呪いさ。そして、君に拾われた猫だよ」
「真人……?」
「そうだよ。ふふ、まだ起きたばっかで混乱してるみたいだね。こうすれば寝ぼすけな君にも分かるかな?」
少年の小さく愛らしい唇が俺の名を紡ぐ。
それだけで俺の魂が震えるほど歓喜しているのを感じ取った。
この人間の何が俺の魂の琴線に触れたのか、興味を抱き始める。
そして相変わらず少年は俺の正体にまだピンと来てなさそうだったから、猫耳と尻尾でヒントを与えてやった。
尻尾を太ももの付け根あたりに絡ませれば少年はまた艶やかな声で啼いてみせる。
ふわふわな尻尾を触る内にすぐに拾った猫のことを思い出したようだ。
「じゃあ、昨日僕が拾った猫は……」
「ふふ、正解〜!君の隣は心地いいからさ、つい気が緩んで戻っちゃった」
そこでようやく自分が拾った猫が特級呪霊だと気づいたんだろう。
少年の顔が絶望と恐怖に歪むも、どこか諦めたような感情も垣間見えた。
この歳で生への渇望が少ないなんて何かあったのだろうか。
まぁ、今の俺は機嫌がいいし今すぐ殺すような真似はしない。
拾った猫を思い出してもらったところで、俺も少年の名前を聞き出すことにした。
「君の名前を教えてよ!」
「……聞いてどうするの?」
「どうするって……君は俺の飼い主でしょ?俺、しばらく君と一緒にいたいし!」
「えっ、それは困る……ます」
だけどこの少年、たやすく手折れてしまいそうな儚げな印象とは裏腹になかなか強情なようで。
俺に名前を教えるのを渋っていた様子だったから強引な手段に出た。
細い手首をひとまとめにベッドに押さえつけ、白い首元へと牙を押し当てる。
「ひっ……や、やめて……!」
「あはっ、いい反応するじゃん♪」
か弱い抵抗すらも力づくで封じ込め己の立場をより一層分からせてやる。
少し力を込めれば簡単に折れてしまいそうな体。
術師でもない少年が特級呪霊である俺に抗うすべはなく、身悶えることしか出来ない獲物に舌なめずりをする。
湧いた加虐心の赴くままに少し刺激を与えてやれば、少年は潤んだ瞳で見つめ返してくる。
そして、やっとその強情な口を開いた。
「紫苑、僕の名前は、猫宮 紫苑……だよ」
「紫苑……!うん覚えた。これからよろしくね、紫苑!」
ようやく少年の名前を聞き出せた俺は忘れないよう何度も呟く。
たかが人間、獲物の名前など覚える必要なんて全くないが。
何故だか紫苑の名を呼ぶと魂がうさぎのように跳ね、嬉しくてたまらなくなった。
俺も俺で嬉しさに身悶えていたところ、紫苑は『他に仲間ができるまで』という条件付きで一緒に住むことを許可してくれた。
向こうは俺のことを一時的な居候猫だと思っているようだけど。
俺はもう#紫苑#を手放すつもりはない。
紫苑はというとそんな俺の思惑に気づくはずもなく、今度は俺の裸に恥ずかしがっていた。
俺は人の姿にかなり近い呪霊であるというだけで、服の有無など気にする必要なんてないのに。
頬を赤らめながらわざわざ服まで用意してくれる。
聞けば父の服だという。
親の方には興味ないけれど、俺を拾ったのも親がいない寂しさ故だろう。
つけ込む隙を見つけ、紫苑を俺に依存させようと企んだ。
__________
「それで……僕と一緒に過ごすなら守ってほしいことがあるんだ。
まず、僕の周りの人は殺さないで。飼い猫が人を傷つけるなんて嫌だから」
紫苑はあくまで俺を猫として飼うことにしたらしい。
殺させない対象を『自分と周りの人間』に限定したのは、呪霊のことをある程度知っているからだろうか。
俺たち呪霊は本能で人を殺める。
それは抗いようのない衝動で抑えることは到底出来ない。
だから、この少年は自分達を傷つけさえしなければ他人を傷つけてもいいと言っているのだ。
人間らしい、自己中心的な考え。
俺はそんなエゴにまみれたルールを聞いてあげることにした。
