雨と猫
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軽快なBGMの中、ゴールを知らせる甲高いファンファーレが鳴り響く。
コースは初心者向けのサーキットから熟練者向けのレインボーロードまで、一通り遊んでみたけど最後は思いのほか白熱した試合になった。
やっぱり特級呪霊ともなるとゲームの上達も早いのかな。
隣では真人が悔しそうに画面を睨みつけている。
わなわなとコントローラーを握りしめる飼い猫の横で僕は高らかに勝利を宣言した。
「はい、また僕の勝ち〜!」
「くそっ、今度こそ勝ったと思ったのに!絶対ズルしてんじゃん!あそこで青甲羅はおかしいって……!!」
白熱したカーレースはまた僕の勝利で幕を閉じた。
特級呪霊とはいえ真人はまだ生まれたばかりの子ども。
いくら戦闘センスがずば抜けて高いとはいえ、ゲームをマスターするにはまだ時間が足りない。
あれから真人をマ〇オカートに誘った僕は5連勝し続けていた。
隣で悔しそうにする真人にさっきの仕返しが出来たようで、思わずほくそ笑む。
この世界に任〇堂があって助かった。
「……もうやーめた!」
「わわっ、コントローラー投げないでよ。意外と壊れやすいんだから」
拗ねた真人がコントローラーを投げ出したので慌てて回収する。
そして、真人はというと拗ねたようにゴロンとソファーに寝転がってしまった。
顔をクッションに埋め、ソファの背もたれ側に顔を向けているせいで表情が分からない。
真人の機嫌を損ねたら何されるか分からない。
相手は危険な特級呪霊なんだと思い出し、少し怯えながら声をかけた。
「怒った?」
「……怒ってない」
怒ったかと聞いてみれば少し間を開けて返事が返ってくる。
クッションを抱きしめてて顔は見えないけど、泣いてはなさそう。
子どもってゲームで負けると泣くイメージがあるけど真人はそこまで幼くないのか。
でも、拗ねた時の反応は完全に子どもで可愛いな。
そう思ってつい頭を撫でてしまえば、飼い猫はぽつりと言葉を零す。
「……次は絶対紫苑に勝つから」
「うん。また一緒に遊ぼうね」
しばらく撫で続けていると、だんだん機嫌が戻ってきたのかクッションから顔を離す。
僕が微笑ましく見つめているのに気づいたのか慌てて言い訳を始めた。
「……言っておくけど本当に泣いてないからね?こんな人間の遊戯にマジになるわけないし」
「分かってるよ。ゲームに飽きたのならもうお昼にしようか」
ソファーから立ち上がり、冷蔵庫に入れておいたサンドウィッチを持ってくる。
大皿の上には色とりどりのサンドウィッチが並べられており、食欲をそそる。
真人の好みが分からないから色々な具材のものを作っておいたから、この中に気に入る味があればいいな。
『どうぞ』と僕に促され、真人はサンドウィッチの一つを手に取った。
「……この果物?が入ったやつ、けっこう好きかも」
もそもそとサンドウィッチを食べた真人がふと呟く。
それは大粒の苺と生クリームが入ったフルーツサンドで、僕が好きなサンドウィッチの一つだった。
「それはフルーツサンドだね。具材にクリームと苺を挟んだものだよ。
ふわふわで甘いでしょ?」
「ふーん。ねぇ、紫苑はどれが好き?」
「そうだなぁ……フルーツサンドもだけど、コロッケサンドも好きかな」
すると、それを聞いた真人はコロッケサンドも手に取り食べ始めた。
表情を全く変えずに食べているから美味しいか不味いかの反応が分かりずらい。
いつも作っているし不味いわけないと思うけど、少し不安に思いつつサンドウィッチの感想を聞く。
「どう?真人の口に合えばいいんだけど」
「こっちも美味しいよ。フルーツサンドには負けるけどね」
「真人は甘党なんだ?僕と一緒だね」
僕もオレンジの入ったフルーツサンドを手に取り、齧ってみれば爽やかな柑橘系の香りが口の中に広がった。
小腹も満たせたことだし好物だけど、他のフルーツサンドも真人に勧めてみる。
「果物が気に入ったなら他にも食べてみる?これとかキウイが入ってて美味しいよ?」
「ふぅん?でも今は果物よりも……こっちの方が気になるかな」
そう言って真人は急に顔を近づけてくる。
僕が反応する間もなく真人は至近距離まで顔を寄せ、僕の唇の端をペロリと舐め上げた。
そんな予想外の動きに目を見開き固まってしまう。
「ここ、クリームついてた♪」
ニッと笑って自分の頬をトントンと指で指し示した。
その動作を見て僕の口の端についていたクリームを舐めとられたんだと理解する。
混乱しながらも状況が飲み込めた僕はさっきの感触を思い出し、顔が一気に火照るのを感じた。
「っ……!!もう、そういうことは口で言ってよ……!唇に当たっちゃいそうだったじゃん」
「あはは!さっきの仕返し〜!……ん?唇を舐められるのは嫌なんだ?」
「まぁ……そういうのは好きな人とするものだから」
「どういうこと?俺、人間は嫌いだけど紫苑のことは好きだよ?」
真人の勝ち誇った笑みに若干ムカつきつつも、なぜか不快な感じはしない。
楽しげに笑う真人を見てると『仕方ないなぁ』なんて気分になった。
イタズラの仕返しは置いといて、唇に当たりそうだったと抗議すれば真人は不思議そうに首を傾げる。
どうやら好きの意味を混同しているみたいだった。
「好きにも色々あるんだ。真人もいつか分かる日が来るよ」
「ふぅん?人間は感情を難しく考えすぎだと思うけどね。好きなら好き、嫌いなら嫌いでいいじゃん」
真人はなんて事ないかのように告げる。
呪霊が誰かを好きになったりするのかは分からないけど、いつか大事な日のためにとっておいて欲しかった。
だって、誰かを愛せるのはきっと素敵なことだから。
「(……この偽物の世界で僕が何かを愛することはないだろうけど。せっかく出会ったんだしせめて真人には幸せになって欲しいな)」
コースは初心者向けのサーキットから熟練者向けのレインボーロードまで、一通り遊んでみたけど最後は思いのほか白熱した試合になった。
やっぱり特級呪霊ともなるとゲームの上達も早いのかな。
隣では真人が悔しそうに画面を睨みつけている。
わなわなとコントローラーを握りしめる飼い猫の横で僕は高らかに勝利を宣言した。
「はい、また僕の勝ち〜!」
「くそっ、今度こそ勝ったと思ったのに!絶対ズルしてんじゃん!あそこで青甲羅はおかしいって……!!」
白熱したカーレースはまた僕の勝利で幕を閉じた。
特級呪霊とはいえ真人はまだ生まれたばかりの子ども。
いくら戦闘センスがずば抜けて高いとはいえ、ゲームをマスターするにはまだ時間が足りない。
あれから真人をマ〇オカートに誘った僕は5連勝し続けていた。
隣で悔しそうにする真人にさっきの仕返しが出来たようで、思わずほくそ笑む。
この世界に任〇堂があって助かった。
「……もうやーめた!」
「わわっ、コントローラー投げないでよ。意外と壊れやすいんだから」
拗ねた真人がコントローラーを投げ出したので慌てて回収する。
そして、真人はというと拗ねたようにゴロンとソファーに寝転がってしまった。
顔をクッションに埋め、ソファの背もたれ側に顔を向けているせいで表情が分からない。
真人の機嫌を損ねたら何されるか分からない。
相手は危険な特級呪霊なんだと思い出し、少し怯えながら声をかけた。
「怒った?」
「……怒ってない」
怒ったかと聞いてみれば少し間を開けて返事が返ってくる。
クッションを抱きしめてて顔は見えないけど、泣いてはなさそう。
子どもってゲームで負けると泣くイメージがあるけど真人はそこまで幼くないのか。
でも、拗ねた時の反応は完全に子どもで可愛いな。
そう思ってつい頭を撫でてしまえば、飼い猫はぽつりと言葉を零す。
「……次は絶対紫苑に勝つから」
「うん。また一緒に遊ぼうね」
しばらく撫で続けていると、だんだん機嫌が戻ってきたのかクッションから顔を離す。
僕が微笑ましく見つめているのに気づいたのか慌てて言い訳を始めた。
「……言っておくけど本当に泣いてないからね?こんな人間の遊戯にマジになるわけないし」
「分かってるよ。ゲームに飽きたのならもうお昼にしようか」
ソファーから立ち上がり、冷蔵庫に入れておいたサンドウィッチを持ってくる。
大皿の上には色とりどりのサンドウィッチが並べられており、食欲をそそる。
真人の好みが分からないから色々な具材のものを作っておいたから、この中に気に入る味があればいいな。
『どうぞ』と僕に促され、真人はサンドウィッチの一つを手に取った。
「……この果物?が入ったやつ、けっこう好きかも」
もそもそとサンドウィッチを食べた真人がふと呟く。
それは大粒の苺と生クリームが入ったフルーツサンドで、僕が好きなサンドウィッチの一つだった。
「それはフルーツサンドだね。具材にクリームと苺を挟んだものだよ。
ふわふわで甘いでしょ?」
「ふーん。ねぇ、紫苑はどれが好き?」
「そうだなぁ……フルーツサンドもだけど、コロッケサンドも好きかな」
すると、それを聞いた真人はコロッケサンドも手に取り食べ始めた。
表情を全く変えずに食べているから美味しいか不味いかの反応が分かりずらい。
いつも作っているし不味いわけないと思うけど、少し不安に思いつつサンドウィッチの感想を聞く。
「どう?真人の口に合えばいいんだけど」
「こっちも美味しいよ。フルーツサンドには負けるけどね」
「真人は甘党なんだ?僕と一緒だね」
僕もオレンジの入ったフルーツサンドを手に取り、齧ってみれば爽やかな柑橘系の香りが口の中に広がった。
小腹も満たせたことだし好物だけど、他のフルーツサンドも真人に勧めてみる。
「果物が気に入ったなら他にも食べてみる?これとかキウイが入ってて美味しいよ?」
「ふぅん?でも今は果物よりも……こっちの方が気になるかな」
そう言って真人は急に顔を近づけてくる。
僕が反応する間もなく真人は至近距離まで顔を寄せ、僕の唇の端をペロリと舐め上げた。
そんな予想外の動きに目を見開き固まってしまう。
「ここ、クリームついてた♪」
ニッと笑って自分の頬をトントンと指で指し示した。
その動作を見て僕の口の端についていたクリームを舐めとられたんだと理解する。
混乱しながらも状況が飲み込めた僕はさっきの感触を思い出し、顔が一気に火照るのを感じた。
「っ……!!もう、そういうことは口で言ってよ……!唇に当たっちゃいそうだったじゃん」
「あはは!さっきの仕返し〜!……ん?唇を舐められるのは嫌なんだ?」
「まぁ……そういうのは好きな人とするものだから」
「どういうこと?俺、人間は嫌いだけど紫苑のことは好きだよ?」
真人の勝ち誇った笑みに若干ムカつきつつも、なぜか不快な感じはしない。
楽しげに笑う真人を見てると『仕方ないなぁ』なんて気分になった。
イタズラの仕返しは置いといて、唇に当たりそうだったと抗議すれば真人は不思議そうに首を傾げる。
どうやら好きの意味を混同しているみたいだった。
「好きにも色々あるんだ。真人もいつか分かる日が来るよ」
「ふぅん?人間は感情を難しく考えすぎだと思うけどね。好きなら好き、嫌いなら嫌いでいいじゃん」
真人はなんて事ないかのように告げる。
呪霊が誰かを好きになったりするのかは分からないけど、いつか大事な日のためにとっておいて欲しかった。
だって、誰かを愛せるのはきっと素敵なことだから。
「(……この偽物の世界で僕が何かを愛することはないだろうけど。せっかく出会ったんだしせめて真人には幸せになって欲しいな)」
