First Week
名前変換
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「おい」
どこからか声が聞こえる。
どこだろう。
暖かい何かに包まれているこの感じ、すごく心地がいい。
でも私、この声どこかで聞いたような……?
「おいはる、起きろ」
「!」
名前を呼ばれてハッとする。
銀時さんの声だ。そうだ、私昨日……!
昨夜の記憶がよみがえり、私は思わず勢いよく頭を上げる。
「っと、おはよ」
「っ!?!?」
真正面に銀時さんの顔。
鼻と鼻とが触れ合ってしまいそうな至近距離。
私、銀時さんに抱きしめられたまま寝ちゃったんだ。
恥ずかしすぎてすぐに目をそらして頭を下げる。
脳がようやく動き始めたようで、心臓がばくばくと鳴っているのが自分でもわかる。
「あのさ、起きたならそろそろ離してもらえるとありがたいんですけど?」
頭上から降る銀時さんの声にはて、と内心首を傾げる。
いやいや、昨日離してくれなかったのは銀時さんの方で、あれ。
私は自分の体勢に違和感を覚える。
「…………もしかして私今銀時さんに抱き着いてます?」
「もしかしなくてもそうですね」
「っすいません!」
彼の背中に回していた腕をさっとどけると、
彼はようやく起き上がってぐっと背伸びをした。
「なんでこんなことになってるんだか、お前相当呑んだな?」
「もしかして昨日のこと覚えてないです?」
なんでか私のせいにされてしまう。
いやいや、違うじゃん私だってどうしようかなって思ってたのに。
欠伸をしながらにやにやとした顔で私を見る銀時さんにそう返すと、彼は一瞬だけ視線をそらすと、ばつが悪そうに立ち上がって背を向けた。
「あー……嘘、ぼんやり覚えてる。悪かったな、ほんと」
それだけ言うと、銀時さんは襖を開けてさっさとリビングに行ってしまう。
「私もしかして騙されかけた……?」
まったく油断も隙もあったもんじゃないなあ!
寝室で身支度をしてから、わたしもリビングへ向かう。
襖を開けると、神楽ちゃんと銀時さんが朝食の準備をしていた。
「おう、ようやく起きたアルな!」
「すぐにできるからもう座っとけ」
おはようございます、と小さな声であいさつをしながら、
私は言われたとおりにリビングのソファに腰かけて、
言葉通りにすぐ運ばれてきた目玉焼きをいただいた。
「あ、そうだ銀時さん、お願いがあるんですけど」
昼食を済ませた昼下がり、私はリビングでくつろいでいる銀時さんに声をかけた。
「銀時さんって、手先器用です?」
「なんだよなにさせるつもりだよ」
これ以上の面倒はごめんだぞ、なんて
読んでいた漫画から視線も変えずにめんどくささ全開で返事をした彼に、私はあるお願いをするのだった。
「おい、本当にいいのか」
「はい、ばっさりいちゃってください」
「しかし勿体ねえなあ、こんなに綺麗な髪なのに」
銀時さんが私の髪を梳きながらお風呂場でそうつぶやく。
そう、私はどうしても髪を切りたかった。
自分で切ってもいいんだけど腰のあたりまで伸びてしまうと
どうにも自分では切りそろえる自信がない。
ここまできたなら迷惑かけ倒してしまおう、と若干開き直ってお願いすると、銀時さんは意外にもあっさり了承してくれた。
「ついでに色も変えたいんですよ」
「カラー材なんてうちにはねえぞ」
「新八君にメール入れて買って来てもらいます」
「ああさいですか」
銀時さんは呆れたようにそう言いながらざくりざくりと髪を切り落としていく。
「何色がいいと思います?」
「知るかよ好きにしろ」
「どうせなら派手な色にしたいんですよね」
「俺は黒のままでいいと思うけどな」
「なるほど、銀時さんは黒髪派、っと」
「何をメモってんだお前は」
メモをとる振りをして新八君にメールを送る。
なんて、実は色はもう決めていたり。
「どこまで切るんだ、これ」
「うーんとりあえず肩につかないくらいで」
「あいよ」
銀時さんはそう短く返事をすると、黙々と手を動かす。
やっぱりこの人ある程度なんでもできるよな。
万屋なんてとんでもないことやってるだけあるのかもしれない。
ぼんやりとそう思いながら、若干うとうとしだしたころ、
新八君が声がやって来て、頼んでたものを渡してくれた。
「髪、切っちゃったんですね。もったいない」
「なるほど、新八くんもロング派、と」
「新八は黒髪ロング派だぞ正統派チェリーボーイだからな」
「あんたも余計なこと言わなくていいんだって!!」
新八君に真っ赤な顔して怒られてしまう。
いや、私悪くなくない?
「お前、本気で言ってる?」
しばらくして、私の髪をショートボブに仕上げてくれた銀時さんは、新八君から手渡されたカラー材を見て呆れたようにそう言った。というか多分若干引いてると思う。
「やっぱ嫁なので合わせていこうと思いまして」
そう、私が選んだのは、髪色は銀。
といっても銀時さんほど明るくはできないので
強めのグレーアッシュと言ったところだろうか。
「そうやってなんでもかんでも尽くしすぎる女はモテねえぞ」
「うるさいなあはやくしてくださいよ」
「へーへー」
「よし、こんなモンだろ」
銀時さんの声にハッとする。
寝てた。超寝てた。
人に髪触られると眠たくなってくるの何なんだろう。私だけかな。
鏡で確認してみる。
綺麗に毛先がそろっていて思わず感動する。
「銀時さんってやっぱり器用ですよね」
「まあ万屋銀ちゃんだからな」
返事なのかよく分からないことを言い残すと、
銀時さんは、床片づけとけよ、とリビングに戻ってしまった。