First Week
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「帰ったぞ」
銀時さんがそう言いながら万屋の扉を開けると、
にこにこ笑顔の神楽ちゃんがお出迎えしてくれた。
「おかえりなさいアル!」
え、なにかわいすぎない?
「銀ちゃん、わたしおなかペコペコアル!
早くご飯にするネ!」
荷物を片づける暇も与えずに、神楽ちゃんが銀時さんのまわりをうろうろとしながら言い続ける。
なるほど、ご飯待ってたのね。
「神楽ちゃん、今日の晩御飯私が作ってもいい?」
「はるが作るアルか!私、お肉が食べたいヨ!」
空腹の舞を踊り始める神楽ちゃんにそう尋ねると、
かわいらしい笑顔が一層輝く。これはいいってことでいいのかな。
「今日は銀時さんのリクエストで目玉焼きハンバーグをつくりまーす!」
「おおおおハンバーグ!!!
私のはチーズインハンバーグがいいアル!」
「いいよー!なんならハンバーグの上にも乗せてダブルチーズハンバーグにしちゃおうね!」
「うおおおおお!」
はる天才アル!なんて言いながら神楽ちゃんは私の隣をついて歩く。
かわいい。本当にかわいい。妹に欲しい。
「おい神楽、いい加減邪魔だからこっちでおとなしく待っとけ」
銀時さんがソファに座りながらそう言った。
あらら、神楽ちゃんと一緒にお料理したかったのに
「お前も、そのじゃじゃ馬娘と料理なんて考えんなよ
そいつは完全に食う専門だからな」
私の思考を先読みしたかのように銀時さんが釘を刺す。
たしかに神楽ちゃんはちょっと、いやかなり普通の人よりも大食いだなあとは思ってたけど、一緒にお料理はしないのか。
ちょっと残念だ。
一緒にお料理したかったなあ、なんて思いながら調理を始める。
「銀時さん、これ勝手に使って大丈夫ですか?」
念のため確認を取るが、銀時さんはテレビに夢中で
すきにしろーと、生返事が返ってくるだけである。
……私は確認したからな。
とはいっても、ハンバーグを作るだけにそんな特別な手順があるはずもなく、あとは焼くだけの状態まで作り終わった。
「あ、付け合わせ考えてなかった」
誰かのために料理をするのもなんだか久しぶりで浮かれてしまっている。
ある程食材は今日買ってきたし、なんでも作れそうだ。
ポテトサラダと、キャベツは浅漬けでいいかな。
2人の好みが分からないから適当に作り始める。
まあ、よく知らないけど多分なんでも食べるだろう。
しらないけど。なんかそんな感じしない?
「お、いい匂いじゃねえか」
「うわっ、」
人数分のハンバーグを八飯ていると、銀時さんが私の肩越しにフライパンを覗き込む。
背後から声かけるの心臓に悪いからやめてほしい。
「急に話しかけないでくださいよ。あぶないなあ」
「わりいわりい」
全然思ってないだろうこの人。
文句の一つでも言ってやろうと思ったが、
銀時さんは食器を準備し始めてくれる。
ああ、私じゃ場所分からないだろうなってことなのかな。
「おーい神楽、もうできるぞ」
銀時さんがそう言うと、神楽ちゃんは待ってましたとばかりにキッチンへ駆け込んでくる。
そんなに走らなくても何も逃げないのに。
「おら、これ持ってけ」
銀時さんの指示に合わせて、神楽ちゃんは付け合わせのサラダをリビングに運ぶ。
ああ、なんかこういうのいいなあ、皆でご飯の準備するの。
家族って感じがする。
「「「いただきます」」」
今日の献立はお豆腐とわかめの味噌汁に、目玉焼きハンバーグとポテトサラダとキャベツの浅漬け。
適当に作りすぎて和洋折衷もいいとこである。
今度からちゃんと考えて作ろう。
私が反省するのも束の間で、
「おおおお!めちゃんこうまいアル!!!」
「おう、家庭料理って感じするわ」
2人が口々に感想を言う。
「お口に合ったようで何よりです」
ああ、いいなあいいなあこの感じ。
食卓の風景。ちょっぴり感動して眺めてたせいで、気が付けば私のハンバーグが神楽ちゃんに奪われてしまっていた。
まあ、いつもサラダくらいしか食べないから全然いいんだけど。
というか幸せそうな神楽ちゃんを見れただけで私もおなかいっぱいだ。
「ありがとな、うまかった」
夕食を食べ終えてしばらくして、
私は銀時さんと並んで食器の後片付けをしている。
リビングからかすかに寝息が聞こえてくるから、
きっと神楽ちゃんはテレビを見ながら寝ちゃったのかな。
「いえ、こちらこそ、あの、ほんとにありがとうございます。
服やら簪やらまで頂いてしまって」
「いいって、どうせお前からもらった金だし気にすんな」
銀時さんはそう言って私の洗った食器を片づけていく。
あ、そうだ
「銀時さん、明日って予定あります?」
「いや、依頼は特にないけど。なんで?」
私は最後の食器を洗い終わると、今日買った食材の袋を漁る。
たしかこっそり買ったのが……あった。
「今日のお礼に、一緒にどうですか?」
「日本酒なんていつの間に買ったんだよ」
私が手にしたものを見ると、銀時さんは少し呆れたようにそう言った。
私好きな酒造の日本酒が売ってたので、思わず買ってしまったのだ。
「苦手です?日本酒」
「いや、飲む」
「これおいしいんですよさっぱりしてて」
「へえ」
それからどれくらいの時間が立っただろうか。
銀時さんがソファで寝落ちしてしまった神楽ちゃんを寝室(押入れ)に運び終わってから2人でちびちびと晩酌を進めていた。
晩御飯用につくった浅漬けがわりといいつまみになるものだから、2人して一升瓶が空になるまで飲み続けてしまった。
「ありゃ、もう12時だ」
明日に予定がないとはいえ、そろそろ寝た方がいいだろう。
すこし浮つく足をなんとか踏ん張って、私は昼間購入した布団の封を開ける。
私が寝る準備に入ったのを察してか、銀時さんも寝室の押入れから自分の布団を引っ張り出した。
ん?待って
「あれ、ぎんときさん」
お酒が入って若干呂律が回っていない。が、頭ははっきりとしている。
「ん?なんだよ、もうねるぞ」
眠気か酔いか、銀時さんも若干ほわほわしたまま寝支度をすすめる。いやそうじゃなくて
「寝室、そこしかないですよね」
「はあ~?あたりまえだろ、この家がそんな立派にみえますか~?」
何を言ってるんだ、と銀時さんがリビングで開封した私の布団一式を自分の布団の隣に敷く。
あ、だめだこの人だいぶ酔ってる。
「はあいおやすみ~」
「え、ちょ、ま、きゃっ」
私の静止も聞こえていないのか、
銀時さんはなぜだか私を抱きしめて、そのまま布団に入ってしまう。嘘でしょ。
「ううう~……」
抜け出そうにも私の腰に巻き付いた腕はびくともしない。
「このまま寝ろっていうの……」
頬に押し当てられる逞しい胸板に力強い腕、なによりなにより顔が近すぎる……!
「銀時さん、銀時さーん」
声をかけるが反応はない。どうやら寝てしまったようだ。
ああもう、諦めるしかなさそうだ。
なにもないなにもない。私はそう念じながら、
胸の高鳴りにも聞こえないふりをして、
目を瞑りながらただ夜が明けるのを待つことしかできないのであった。