First Week
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「で、何から買えばいいんだ?」
志村さんの家にお世話になった翌日。
私は万屋の3人と一緒に買い物に出かけている。
「とりあえず日用品と、あと布団は絶対必要ですね」
新八君が冷静に買い物リストを確認している。
まさか万屋の皆で着てもらえるなんて、申し訳なさすぎる。
「銀ちゃんそんなお金どこに隠してたアルか?へそくりアルか?」
「ああ?昨日馬鹿みてえな額の臨時収入入っただろうが」
神楽ちゃんの問いに銀時さんが答える。
「え!?私の渡した報酬で買い物するんですか!?」
何を言ってるんだこの人は、それでは報酬の意味がない。
「馬鹿かお前、日用品買いそろえるだけなんざ
かなり多めに見積もっても10万程度だろうが、
生活費の50万から引いてもお釣りが来るわ」
「いやでも」
「そうですよ。
それにどうせそんな大金持ってても
銀さんがパチンコに使っちゃうんですから」
新八君にそう言われてしまったらもう何も言えなくて、
大変申し訳ない気持ちでいっぱいのまま買い物を進めるしかなかった。
「たびたびご迷惑をおかけして申し訳ないです」
「ばか、謝ってほしいわけじゃねえよ」
銀時さんがそういって私の頭を優しく撫でた。
「えっと、じゃあありがとうございます……?」
私がそうつぶやくのを確認すると、万屋の3人はにやりと悪戯が成功した子供のような表情で笑った。
ありがとう か、そう言えばしばらく言ってなかった気がする。
自分がいかに余裕のない生活をしていたのかを思い知らされてちょっと落ち込んでしまうが、なんだろう。
なんといえばいいのか分からないけど、なんだか胸の奥がちょっぴり暖かい。
「なににやにやしてんだ、置いてくぞ」
銀時さんが振り返って声をかけてくる。
私はちょっぴり駆け足でその背中を追うのだった。
買いだしも一通り終えたお昼過ぎ、
お昼ご飯のお蕎麦を食べ終わったあたりで、銀時さんが口を開いた。
「そう言えばお前、服とかどうしてんの」
「え?今着てる服がありますけど?」
「はあ?」
3人が一斉にこっちを向く。
「はるさん、服それだけしかないんですか?」
「失礼な、洗い替え用にもう一着ぐらいあります!」
新八君の問いに納得する。
これしか持ってないと思われていたのかな。
いやでも今のは私の言い方も悪かったかもしれない。
「そのボロ雑巾みたいな服がもう一枚ってことアルか?」
「ええそうですが何か」
ひっどい言われようだな、これはこれで以外に便利なんだけど。
動きやすいし目立たないし。
「別に誰に見せるでもないので特に問題ないですよ」
そう言ってから、かけそばのおだしを飲み干す。
おそばって出汁がおいしいんだよね。
うん、すごくおいしい。
「はあ」
私がお出汁を味わっていると、銀時さんが呆れたようにため息をついた。
「新八、神楽、もう一軒行くぞ」
もう一通り揃ったんじゃないんですか、
そんな私の静止も聞かずに、銀時さんはさっさと店の精算を終わらせてしまったかと思うと、私の腕を引っ張ったまま呉服屋に向かった。
「おう、好きなの選べや」
銀時さんが顎で私の方を指す。
それ、お行儀悪いですよ。……じゃなくて
「いやわざわざ買ってもらわなくても大丈夫ですって」
服ならあるって言ったはずだけれど。話聞いてたのかな。
「うるせえ、そんなボロ雑巾服に入らねえんだよ。
待っててやるから適当に見繕ってこい」
有無を言わせない雰囲気の銀時さん。
これは諦めて買ってもらうしかないだろうか。
というかわざわざ買ってもらうから引け目を感じるんだ。
自分で買えばいい。うんそうだそうしよう。
「言っとくが、勝手に金は払うなよ」
「エスパーですか」
背中越しに聞こえた銀時さんの言葉に思わず振り返る。
いやなんで。私のお金をどう使うかとか私の自由じゃない?
「依頼人の依頼中に金出させる奴がいるかよ」
おら、はやく選んでこい
もう私が何言っても無駄な気がしてきた。
結構頑固だよなああの人。なんて思いながら適当に服を選ぶ。
安くて動きやすかったらなんでもいいだろうと、
適当にセールのワゴンに入っていたヤツをつかみ取ってレジへ向かう。
「おい」
レジまであと一歩というところで銀時さんに肩を鷲掴みにされる。
「今度は何ですか」
「なんだこれは」
「銀時さんが選べっていうから選んだんでしょう」
なんだこの人はまだ文句があるんだろうか、そう思いながら銀時さんの方を見上げると、彼はまたしてもはああと大きなため息をついた。
「ったくしょうがねえな……
神楽、はあてにならねえか……
お前ら、ちょっと適当に時間潰してろ」
銀時さんは店の外にいる新八君と神楽ちゃんにそう言い残すと、
店の中をぐるぐると物色しだした。
「なんですか銀時さんも新しい着物ほしくなったんですか」
「お前もう黙ってろ」
不審な動きをする銀時さんに問いかけると、
呆れたようにそう言われて、呉服屋の隅の方を指さされる。
ここに座って待っていろということだろうか。
はいはいわかりましたー
なんて、店の奥へ移動してるとき、綺麗に飾られた簪に目を奪われてしまう。
赤い玉が印象的なシンプルなデザイン。
周りに施されている蝶の金細工も素敵。
これ、とんぼ玉じゃなくて多分珊瑚だ。
うっわあ高いんだろうなあ……っと、
簪なんて今の私には必要ないので、おとなしく銀時さんを待つことにする。
数十分ほどのんびりと待っていると、
銀時さんが呉服屋のおかみさんを後ろに連れて戻ってきた。
手に持っているのは大量の、
「女物の着物?恋人に贈り物ですか」
「今はお前が嫁だろうが」
頭を叩かれてしまう。
恋人への贈り物じゃないとするなら、この大量の着物は一体何なんだろうか。
「じゃあ女装趣味でもあるんですか」
「お前のに決まってンだろいい加減にしろ」
これこそ名案、と思ってドヤ顔で告げれば、
また頭を叩かれてしまう。痛い。って、
「え、私の?」
「おう、どれがいい?
こういうの俺も詳しくないから適当に選んできたけど」
銀時さんはにこりと笑ってそう言った。
え、えー……全然そんなつもりじゃなかったから何も考えてない
「いや私いらないですって」
「うるせえな嫁への贈り物ぐらいさせろ」
銀時さんが真顔でそんなこと言うものだから思わず黙ってしまう。
この人、最近そうやって言っとけば私がいうこと聞くと思ってない
?