First Week
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とりあえずこれからどうしようか、なんて皆で顔を合わせて悩んでいたとき
ぐうううううう
私のおなかの音が部屋中に鳴り響いた。
「あ」
そういえば何にも食べてないままだった。
「とりあえず飯にするか」
坂田さんが呆れたようにため息をついてからそう言った。
「大変恐縮です……」
恥ずかしすぎて穴があったら閉じこもりたい。
私たちを背にして、坂田さんがキッチンへ向かう。
「あ、私も手伝います」
「いい、座ってろ。大したもんはないから期待すんな」
思わず腰を上げるも、そういって断られてしまう。
本当に申し訳ない。
おとなしくソファで縮こまっていると、
ずっと坂田さんの後ろにいた少年少女がおずおずと近付いてきた。
「あの、はるさん、でしたよね」
「ええ、あなたは、新八君、だったかしら」
「はい、志村新八っていいます。
この万屋の従業員をやってますで、こっちが」
新八君が後ろにいるチャイナ服の女の子を前に押し出しながら紹介する。
「同じく従業員の神楽ちゃんです」
「よろしくネ!おねえさん!」
ニコリと笑う神楽ちゃん。
新八君の後ろに隠れていたのは人見知りだからなのだろうか。
にしてもこの透き通るような白い肌、
「違ってたら、申し訳ないんだけど、もしかして神楽ちゃんって夜兎族なの?」
私の言葉にふたりは一瞬驚いたような顔をした。
「よくわかったアルな」
「知り合いに夜兎がいてさ、よく似てたからもしかしたらと思って」
「へえ、もしかしたら神楽ちゃんの知り合いかもしれないね!」
楽しそうに神楽ちゃんに話しかける新八君とは対照的に、
神楽ちゃんは少し訝しげだ。夜兎は少数民族、簡単に知り合いなんて言われても信用できないのだろう。
「私、貿易関係の仕事をしていてね、天人の知り合いが多いの」
驚かせてごめんね、と笑うと、神楽ちゃんは少し安心したようにはにかんだ。
「おーい、神楽、新八、運ぶの手伝えー」
キッチンから坂田さんの声がする。
「銀ちゃん特製炒飯!今日はごちそうアルな!」
神楽ちゃんが楽しそうにお皿を持ってくる。
うん、焦がし醤油のいい匂い。
「あ、銀さん、僕家帰って食べるからいいですよ」
新八君が4人目のお皿に盛りつけかけている坂田さんにそう声をかける。
「うるせえ、どうせダークマターなんだから食ってけって」
坂田さんは新八君の言葉を無視して4人分の食事の準備を進めている。
「神楽ちゃんはお家に帰らないの?」
ふとした疑問を投げかけると、
「ここが私の家ネ!」
と元気よくお返事してくれた。
ご飯のおかげかさっきよりもご機嫌だ。かわいい。
「正しくは俺の家の居候、な
というかお前家どうするつもりだよ」
「え」
「まあどこにもアテなんてないだろうけど」
「えーと……」
言葉に詰まる。
言われた通り、行く宛あるならボロボロになってまで
ここに転がり込むなんてことにはならない。
「ん?ここに住むんじゃないアルか?」
神楽ちゃんが炒飯を口いっぱいに放り込みながら当然のようにそう言った。
「え、」
たしかに、そうしていただけるのであれば願ったりかなったりではあるけれど……
「いや流石にそれh「まあそうなるだろうな」え、ちょっと!?」
私の言葉を遮るように坂田さんがため息を付きながらそう言った。
「いやいや、そんなこと言っても銀さん、
この前来客用の布団質屋に出してませんでした?」
「あ、」
「やっぱり私、家は自分で探しますからっ」
これ以上この人たちに迷惑かけるわけにもいかない。
今更野宿でもなんでもどうにでもなるだろう。
急いで炒飯をかき込んで立ち上がる。
「明日、10時くらいにお邪魔しまs「まあ待てって」」
坂田さんはもう一度私の声を遮った。
ガシガシと頭をかきむしながら何やらぶつぶつと呟いてる。
「新八、とりあえず今日はお前の家泊めてやってくれねえか」
「え?あ、ああ、多分問題ないと思いますけど……?」
「で、明日必要なもん全部買いに行けばいいだろ」
「え?坂田さん?」
坂田さんの言っていることがまだいまいち読み取れずにぽかんとしてしまう。
「だーかーら、ここに住めばいいだろっつってんだよ」
「いや、」
「あとその"坂田さん"ってやめろ
書類は出さないといえ、しばらくはお前も"坂田さん"だろうが」
「え、あ」
自分で言いだした設定だけど、改めて言われてしまうとなんだか少し気恥ずかしい。
ほぼ金で買収したみたいな関係だけど、
そう言ってもらえるのは少し嬉しい。
「よ、よろしくお願いします。銀時さん」
久しぶりに心の底から笑えた気がした。