Last Week
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それから、なんとか死にかけながらも無事に地球に帰還した私たちはいつものようにのんびりとした日常に戻りつつあった。
流石に、大気圏突入しても陸地が見えてきてもスピードを落とせない飛行機に乗ってた時はいや本当に死ぬかと思ったけれど。
銀時さんの咄嗟の機転で、海に猛ダイブしてなんとか命だけは助かったってところ。
ちなみに船に積まれていた爆薬は、婚約者であるはずのショックシュ・ヌメリーノの独断で地球に持ち込まれていたもので今後の"交渉材料"として利用される予定だったようだ。星ひとつ壊せるほどの爆薬が、どんな交渉の材料に使われるかは見当もつかないし、知りたくもないけれど。
結局、あの飛行船はヌメリーノが違法に持ち込んだ爆薬の誤作動による不運な爆発事故という形で片づけられその場にいた乗組員・行客・関係者は全て死亡扱いとなっている。
実際、あの僅かな時間で逃げられたのは私たちとあらかじめ避難準備をしていた快援隊の一部くらいらしい。
死んだことになった亡霊の私は、
こうして変わらずに万屋で雑用をこなしているというわけだ。
ピンポーン
「あ、はーい」
朝食の片づけを済ませて、少しのんびりとしていたころ突然インターホンが鳴る。
今日は依頼の予定はなかったはずだけど、新聞勧誘か何かだろうか。
「新聞なら結構です、け……ど」
扉を開けて、開口一番そう言い放った。が、すぐにそれが見当違いであることを理解する。
「やはり生きておったか」
「……あなたは、」
煤けた着物に古びた頭巾。
いつぞやの誰かを彷彿をさせる格好に身を包んでいたのは、
見間違えるはずもない家出の原因を作った張本人である
水戸頼貞であった。
「何の用ですか」
服装からして、お忍びなことは間違いないと察して、
ひとまずリビングに通す。そう言えば銀時さんが父からの依頼がどうのとか言っていた気がするけれど、まさか本当に面識があったなんて。
「銀時さんなら留守ですよ」
「そうか、じゃあ戻ったらこれを渡してくれ」
男は懐から風呂敷に包まれた何かをテーブルの上に置く。
風呂敷の中身など、確認するまでもない。
まったく、全てがどこかで見た光景で嫌になる。
「約束の報酬だ」
「まさか、本当に銀時さんに依頼をしていたんですか」
男の言葉に耳を疑う。
意味が分からない。そもそも、ヌメリーノに嫁げと言ったのはこの男のはずだ。わざわざ金など積まなくても本当に望んでいるのであれば婚約などいくらでも解消できただろうに。
「徳川本家からの命だった。怪しい男である事は分かっていたが、
堂々と婚約を蹴ることなどできなかった。」
悪かった。
そう言って男は頭を下げた。
目を、疑った。
私の記憶している限りでこの男は、
水戸頼貞という、男は。
厳格で、頑固で堅物で、武家の漢である自分に誰よりも誇りを持った男であったはずだ。
将軍家に仕える武士として将軍の命を遂行することを何よりの喜びとする男であったはずだ。
そんな、男が、命に逆らったこの小娘に頭を下げている。
「あなたにそんな親心があるなんて、知りませんでした」
「……そう、だろうな」
男は眉を下げて小さく笑った。
「華月は死んだ、"お前"と会うことも今度一切ないだろう」
しばらくの沈黙の後、男はすっと立ち上がって玄関へ向かった。
「邪魔をしたな」
去り際にそう一言残して、
父は振り返ることもなく歌舞伎町の街へと消えていった。