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覚悟を決めて彼の手を取り、部屋を飛び出した瞬間だった。
「わ、」
またしても船内が揺れて、足元がぐらつく。
「っと、大丈夫か?」
思わず倒れそうになったところで、後ろにいた銀時さんに抱き留められた。
私の両腕を支える力強い腕と、逞しい胸板。
今まであんまり気にしたことなかったはずなのに、なんだろう。
銀時さんって、こんなに男らしかったっけ。
「はい、ありがとうございます」
「っ、おう」
通路を一面見渡してみたところ、先ほどの揺れで天井が崩れてきているようだ。
足の踏み場もないほどの瓦礫と、見るからに脆くなっている地面。これでは移動するだけでも一苦労だ。
「ッチ、間に合わねえな」
「え、ちょ、わぁあ」
銀時さんは舌打ちをしてそうつぶやいたと思うと、
私の足をひょいと抱える。バランスとり損ねた体。
銀時さんは私を肩に担いだまま、ひょいひょいと瓦礫の上を移動する。
「ちょ、とまって、これ、地面、ちか、」
逆さになった頭と、間近で揺れる地面。
「喋ってると舌噛むぞ」
途切れ途切れの私の反論も虚しく、銀時さんはそのまま走り続ける。
「銀さん!急いでください!!」
全てを諦めておとなしくしていると、
すぐに新八くんの声が聞こえてきた。
見慣れない小型飛行機だ。
「新八、行けそうか?」
「とりあえず発進は何とか」
「上出来だ」
淡々と言葉を交わして、銀時さんは私を担いだまま飛行機に乗り込んだ。
「はる!」
既に乗り込んでいた神楽ちゃんと目が合う。
なんだか、神楽ちゃんを見るのも久しぶりな気がする。
「って、今発進ならとか言いました?」
感動の再会も束の間、発進準備を進める新八くんに思わず聞き返す。
「後のことはその時考えます!」
新八くんの言葉に合わせて飛行機が勢いよく発進する。
「着地する方法ないってこと!?死ぬでしょ!!」
「馬鹿野郎、何度も言ってるだろ」
「あそこにいたってどうせ死ぬアル」
神楽ちゃんのその言葉と同時ぐらいに、背後で大きな爆発音が聞こえた。
振り返るとそこには、私たちが先ほどまでいた飛行船、だったものが激しい火花を散らしていた。
「ほんとうに爆発して……!」
「だから、最初から言ってるだろ」
「さっきからなんでそんなに落ち着いてるんですか」
「それより、はる」
欠伸をしながら窓の外を眺める銀時さんに驚いていると、
ずい、と神楽ちゃんが近寄ってきた。
「えっと……?」
「何か、いうことないアルか」
眉間に皺を寄せたままの神楽ちゃん。
「た、助けていただきありがとうございます?」
「………」
神楽ちゃんは、表情を変えない。
「迷惑かけて、ごめんなさい」
「………違うアル」
「え、」
頭を下げて謝罪した私に、神楽ちゃんが小さな声でそう返す。
意外な返事に驚いて顔を上げると、
今にも泣き出しそうな少女の顔。
「………勝手にいなくなって、ごめんね」
「許さないアル」
不貞腐れたまま涙を流す彼女の頭に思わず触れて、軽く撫でる。
「迎えに来てくれて、ありがとう」
「………ふざけんなって、一発殴ってやるつもりだったのにっ、」
神楽ちゃんは私の手を取ってボロボロと大粒の涙を流し始める。
「うっ、うう……おかえりなさいアル、はる!!」
「わ、」
そう言って神楽ちゃんはぐしゃぐしゃの顔のまま私に飛びついて来る。
弱弱しく泣き続ける彼女の、
私を抱きしめる腕の力が何とも力強くって暖かくって。
「うん、ただいま、神楽ちゃん。皆」
私も神楽ちゃんの小さな肩口に頭を押し付けて、
声にもならないような声で、返事をした。