Last Week
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「なあ、勘違いなんだって、おい、」
「今更そんな言い訳が通用すると思うか」
最初に通り抜けてきた船の出入り口付近。
部屋から護衛らしき男に連れられて、入り口の手前まで来ている。
「……たしかもう出航されてますよね?」
「ああそうだな」
「結構な高さだと思うんですが」
「そうだろうな」
俺の言葉に男は顔色一つ変えずに淡々と扉を開ける。
「うわ、」
気圧の変化により生じた風の勢いで、扉の方へ引き寄せられる。
吹き飛ばされまいとなんとか両足で踏ん張ってギリギリのところで耐えていた、のだが。
「こんな大きな相手を敵に回した自分を恨むんだな」
男はそのまま俺の背中を扉の方へと蹴とばす。
再び、体がぐらつく。
一度風の流れに従ってしまえば、もう抗うことはできない。
「うそだろ」
遥か天空から、俺の体はもうスピードで地上へと落下していく。
「いや、これは死ぬだろ」
こんなとこで死ぬわけにもいかない、がどうしたものか。
頭をフル回転させてみるもどうにも解決策が思いつかない。
そもそも、とんでもない勢いで落下する体では落下の制御のしようもない。
「銀ちゃあああああん!!」
視界一面に広がる雲を切り裂いて、見知った声が聞こえた。
「神楽、……と、新八?」
猛スピードでこちらに向かってくる何か。
目を凝らしてみれば、見覚えのある顔だった。
小さな飛行機の上で両手を広げて立っている神楽と、
忙しなさそうに飛行機を操縦する新八。
「捕まるアル!!」
暴風の中で、二本の足だけでバランスを取る神楽。
落下する俺の真正面に上がってくる機体とのすれ違いざま、
俺は何とか神楽の腕を掴む。
「……死ぬかと思った…」
何とか神楽に引き上げてもらい、飛行機に乗り込みながら
俺は肩を下げて座り込む。
「一人で乗り込もうとするからアル」
「言ってくれればよかったのに」
二人は不満そうにそう言った。
小さな飛行機は、まだ上空を向いている。
「……悪い」
こいつらを危険な目に合わせないようにしていた、のか。
相談する余裕すらなかった、のか。
「よっしゃあ!それじゃあはるのところまでぶっ飛ばすアルよ!」
「うん、もうそろそろ見えそうだ!」
新八と神楽が嬉々として大声を上げる。
「あいつのことはいい。歌舞伎町に帰ろう」
「は?」
「な、何言ってるんですか銀さん」
「追い返されちまったんだよ、
任務はもう終わりだから今すぐ帰れって」
だから仕方ねえんだ、そう言って笑えば二人は俯いてしまう。
「望まれてねえ助けは、ただのお節介だ。
新八、帰るぞ」
操縦席に座る新八に声をかける。
操縦桿を持つ手が震えていた。
飛行機の操縦なんて、慣れないことするからだ。
「戻るわけ、ないじゃないですか」
「…は?」
「新八、アクセル全開アル!」
「おい、ちょっとお前ら待てって」
急な重力の増加にぐん、と体がつんのめる。
「銀ちゃん、私怒ってるアル」
「だから、一人で行ったのは悪かったって」
「銀ちゃんだけじゃなくて、
勝手に押し掛けてメシ作ったクセに、
勝手に出ていって、勝手に他の野郎のところ嫁いで、朝メシまで放置したはるに、怒ってるアル」
「……神楽」
「ちょっと、家族みたいって、思ってたのに」
神楽はそういってまた俯いた。
「あいつの事情なんて知らない。
私は許さないアル、勝手に出ていくなんてふざけんなって一発殴ってやるアル」
「あ!見えましたよ!あの船ですよね!!」
新八の声に船内の全員が上を見上げた。
俺がさっきまで乗っていた船、つい先ほど蹴り落とされた船。
ったく、どんな顔してアイツにもう一度会えって言うんだよ。
「あ、あれ……?」
俺の葛藤もむなしく、もう目と鼻の先まで追いついたというあたりで新八がばたばたと操縦席で動き回る。
「どうした新八」
「……速度、落とせません……」
新八が真っ青な顔でこちらを振り返って、そう言った。
制御を失った飛行機は、そのまま大型船に大きな物音を立てて激突したのだった。