Last Week
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GINTOKIside
その日はなんだかいつもより早く目が覚めた。
はるが出ていってからというものの、
俺も神楽も昼前まで寝ていることが多かった。
まあ、一月前はそれが普通だったといえばその通りなのだけれども。
その日は珍しく朝の陽ざしで目を覚ました。
時計を見れば午前8時。
まあ、世間一般からするとそこまで早い方でもないが、
最近の自分の生活習慣から考えると、かなり、早い方である。
いつもだったら二度寝するところだったが、
玄関からカタン、と小さな物音がした。
「誰だ、こんな時間に」
新八が来るのであれば、普通に扉を開けるだろう。
遠慮がちな小さな音など出す必要もない。
最も、自分たちが昼前まで寝ていることを知っているアイツがこんな時間に訪れるわけもないのだけれど。
不審に思って玄関の方へ向かう。
昨晩もずいぶん遅くまで飲んでいたものだから、足取りはどことなく重い。
「なんだ?これ」
玄関を開けた先に人の姿はなかった。
誰かのいたずらか、と思い外に出て周囲を見渡してみても、
やはり人の影はどこにもない。
その代わりに、小さな手紙が一通足元に置かれていた。
封筒を隅々まで見ても、どこにも差出人の名前は書かれていない。
宛名も住所も書いていない。
先ほど誰かが直接置いていったのだろうが。
「なんでわざわざこんなこと」
ここは万屋だ。話があるなら直接すればいいものを、
わざわざ着てこっそり手紙だけ置いていくなんて変わった奴もいたもんだ。なんだか二度寝する気にもなれず、ソファーにどかりと座ってから手紙の封を開ける。
そこにはただ一言、
「娘を助けてくれ」と、ぎりぎり読める走り書きのような字で書かれていた。
「なんだ、これ」
中身を確認してから、思わずもう一度そう言う。
生憎、これだけではどこの誰を助ければいいのか、依頼なのかなんなのか全くわかりもしない。
「手の込んだイタズラか?」
もう一度封筒の中身を確認する。
走り書きのメモが入れられていた質素な封筒には、
それ以上に何も入っていなかった。
全くもって意味が分からない。
というか、寝起きの頭ではこれ以上考えられそうにない。
段々眠気が襲ってきて、ソファーに横になって寝そべる。
「あ、」
ソファーに寝そべったまま、仰向けの状態でもう一度回し見る封筒。さっきまでは見えなかったが、この封筒、すかしてみると、何か見えるような……
どこかで見覚えのある三つ葉の柄。最近見た気がする。
どこだったか、本当につい最近……。
「わかんね」
諦めて手紙をテーブルに放り投げる。
朝起きて頭使ったらなんだか頭痛がしてきた。
ああ、やっぱり昨日、飲みすぎたか。
だんだん意識が遠のいていく。
だめだ、寝るなら布団で寝直そう。
この前ソファーで寝たら翌日背中が痛すぎてしばらく動けなかったことを思い出す。
「おっさんかよ」
一人愚痴りながら寝室に戻る。
ふと、入り口に置いてある鞄が目につく。
はるがうちに来るときに持っていた荷物だ。アイツ全部置いていきやがったのか、処分する側の気持ちにもなれよ。とため息を付きかけた時だった。
「これだ……!」
鞄の取っ手に小さく描かれた三つ葉の柄が目に入る。
まさか。
俺は急いでその鞄を持ってリビングに戻った。
「同じじゃねーかよ……」
念のためにもう一度確認してみるものの、封筒の柄と鞄の取っ手の柄が一致する。単なる偶然にしては出来すぎている。