First Week
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「それで?聞かせてもらおうか。
こんな状態でこそこそ聞き耳立てようとするなんざよっぽどワケありみたいだからなあ」
銀髪の男性が向かいのソファに座りながらそう言った。
20代くらいの男性。
この3人の中で最も年上であろう雰囲気からして、おそらくこの人がこの家の家主だろう。
興味なさそうに胡坐をかいて座っているが、その目だけは本物だ。
「行かなきゃいけないところがあるんです」
言えないことはたくさんある。
でもきっとこの人に嘘は通用しないから、
言えることだけだけ話すしかない。
「万屋銀ちゃん、っていうなんでも屋さんらしいんですけど」
私がそういうと、目の前の家主のやる気のなさそうだった瞳が、
一瞬だけ見開いた。
え、何、なんか変なこと言った?
「へえ、そりゃ驚いた。アンタお客さんかい?」
「え?」
家主の言葉の意味が分からずポカンとしていると、
後ろに立っていた眼鏡の少年が補足するように続けた。
「ここがお探しのなんでも屋、ですよ」
「え、」
「おお!久々の依頼アルか!」
少年の隣に立っていたチャイナ服の女の子が元気よく私に駆け寄ってくる。
「ここがあんたのお探しの万屋銀ちゃん。
でもって俺が店主の坂田銀時だ。依頼なら話を聞くぜお客さん」
「さかた、ぎんとき……あなたが?」
彼の言葉に目を疑う。
本当に?ずっとずっと探してきた人が、今ここにいるの?
「わざわざここで嘘つかねえよ。
俺が正真正銘、坂田銀時だ。」
「そう、ですか」
ようやく会えた。この人に。
私の長い逃亡生活も、やっと報われる。
大きく息を吸ってから、私は坂田さんをまっすぐ見つめる。
「坂田銀時さん、あなたに依頼します。
一か月だけ、私をあなたの妻にしてください」
間
目の前の三人が驚いたように固まっている。
血はつながってないように見えるけど、反応がそっくりで本当の親子みたい。
「銀ちゃんと結婚!?お姉さん正気アルか!?」
「こんな万年金欠天パ野郎やめといた方がいいですって!!」
後ろの二人がガヤガヤと騒ぎ始める。
にしてもめちゃくちゃな言われようだな。
「あんた、名前は」
「はる」
「そうか、はる」
「なあに」
後ろの二人とは違って、真剣な表情を変えずに店主は私を見つめる
「あんた、何考えてんだ」
先ほどよりも強い圧力。
本当に、この人何物なんだろう。
私が言うのもおかしな話だけれど、絶対にただのなんでも屋さんだけじゃない気がする。
「依頼よ依頼。それ以上でもそれ以下でもないわ。」
全てを話してしまいそうになるものの、
そうもいかないのだ。
「ああそうかい、そんなワケもわからない女の依頼は受けられねえな、荷物まとめてあるからとっとと帰りな」
坂田さんはそう言うと、
そのままソファに寝っ転がって雑誌を読み始めてしまった。
「え」
「こっちも厄介事はごめんなんでね、新八!
お客さんを玄関まで送ってやって」
「銀ちゃん、何言ってるアルか!
最近依頼なくてもう冷蔵庫すっからかんよ!」
「そうですよ、家賃も僕の給料も何カ月繰り越してると思ってるんですか!」
店主とは打って変わってノリノリなこの二人。
私もここで帰れといわれて帰るわけにはいかない。
断られるのも予想済みだ、問題ない。
「新八君、だったかしら、
そこに置いてある私の荷物を持って着てもらえる?」
「ああ、はい」
眼鏡の少年にそう言うと、彼はすぐに私のカバンを取って来てくれた。
「ありがとう、いい子ね」
新八君に微笑みかけてから、私はカバンの中の札束を握りしめて思い切り机の上にたたき出した。
「ここに100万円あるわ」
「は、」
坂田さんの視線が雑誌から外れる。
「この100万円は前払い。
今後私が死のうが誘拐されようが、この依頼を受けてくれた時点であなたのものよ」
「いよいよ本気でキナ臭えな、姉ちゃん」
坂田さんが私を睨み付ける。
そんな危険が生じるのか、そんな表情だ。
「それから一か月後には成功報酬で500万円。
あと、私の生活費として、報酬とは別に50万円用意してるわ」
「銀ちゃん!何をいい男ぶってるネ!受けるしかないアル!」
「それだけあればパフェつくり放題ですね」
「お前らなあ」
キャッキャと楽しそうな話をし始める少年少女たち。
自分で言うのもなんだけど、ここまで警戒されないのも逆に驚いてしまう。
「心配しないで、さっきは少し驚かせてしまったけど、
本当になにもないのよ。ただお嫁さんごっこがしたいだけ」
だから、お願い。
そう言うと、坂田さんははあああと大きく息を吐いてから
「籍はいれねえからな」
と観念した様につぶやいた。