Second Week
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「はー大変だな、お上も」
出かける支度をしていると、銀時さんがテレビを見ながらひとり呟いていた。
今日は、新八君たってのお願いでお姉さんのお妙さんにお料理を教えに行く約束をしていた。
「銀時さん何見てるんですか」
髪の毛を結いながら銀時さんに近付いてみると、
銀時さんイチオシのアナウンサーが出演しているニュース番組だった。
「いや、将軍家と天人の結納が決まったんだと
こんなタコのところへ嫁がされるお嬢さんもかわいそうなモンだと思ってな」
「へーえ」
テレビに向かって独り言なんておっさんくさいですよ、
と言い残してから洗面台へ戻る。
銀時さんが後ろでなんやかにゃ言っているが無視だ無視。
のんびりしているが割と時間が無い。
「じゃ、私行ってきますね!
夕方には帰ると思うので!お昼ご飯は冷蔵庫に入ってるのであっためて食べてくださいね!」
「お前はオカンか」
「銀時さんが生活能力小学生なのが悪いんでしょ!じゃあ行ってきます!」
私はそれだけ言い残してバタバタと階段を駆け下りる。
コケるなよー、なんて、なんだかんだ言いつつ見送ってくれる銀時さんにもう一度行ってきますと言い残して、私は志村邸へ急ぐ。
「じゃあ、何から始めましょうか」
「そうね、あまり難しいものは自信がないから、
簡単なものにしてもらえるとありがたいわ」
お妙さんは少し恥ずかしそうにそう言った。
新八君も、なんだったら銀時さんも知っているほどお妙さんの料理の腕はすさまじい。圧倒的に悪い意味で。
それでもなんやかんや姉弟2人で仲良くやっていたらしいが、
この前私が志村邸にお世話になった時に、
せめてものお礼として作らせてもらった朝食をよほど気に入ってくれたらしい。
ぜひ自分たちだけでも、ということで、
新八君もとお妙さんと3人でお料理してみよう、ということになったのだ。
「簡単なもの、かあ……何がいいかな」
「あ、僕はるの作る出汁巻卵めちゃくちゃ好きです!
卵料理なら、姉上も得意ですし……ね!姉上!!」
「そうねえ、卵料理なら……」
「そう?じゃあ、出汁巻にしましょうか!」
新八君の異様な卵推しが気になるけど、
とりあえず気にしないことにしておこう。
「じゃあとりあえず一回作ってみるので見ててくださいね」
卵を割って、味を付けた卵液を少しずつフライパンに入れて巻いていく。
本当だったらもうちょっとお出汁多めに入れるんだけど、
巻きづらくなっちゃうから今回は少し固めにしておこう。
「で、巻き終わったら、形を整えて、冷ます!以上!」
「あら、意外に簡単なのね」
隣で見ていたお妙さんが安心した様にそう言う。
「巻くのにちょっとコツがいりますけど、
それ以外は全然簡単ですよ!」
さあレッツトライ!
と言って、お妙さんにフライパンを手渡したところから修羅場は始まった。
「お妙さん、弱火で!もうちょっと弱火で焼きましょう!?」
「でもそれじゃあいつまでたっても固まらないわよ?」
「焦げてます!!姉上卵がしっかり焦げてます!!!!」
何度挑戦してもダークマターを生成してしまうお妙さんの隣で、
新八君とやいのやいのとアドバイスすること数時間。
「できた……!」
「おお!!お妙さん!綺麗な卵焼きできましたね!」
「すごいですよ姉上!!」
なんとか卵焼きと呼べる形になったものが出来上がった。
「すごいわ、卵焼きなんて作ったの初めて……!
はるさん、本当にありがとうね」
お妙さんがふんわり笑って私の手を取る。
この人、ちょっとぶっ飛んだところがあるけど、
基本的には美人で素敵な女性なんだよなあ
「いえ、私もお妙さんとご一緒できて楽しかったです」
私もお妙さんの手を握り返す。
「もう、さん付けなんてしなくていいわよ。
たいして年齢も変わらないでしょう?」
「えっ、いやでも……」
「私もはるちゃんって呼ぶから、ね?」
ぐい、ともう一歩近づいてから首を傾げてそう言う。
ああもう、美人だなあ。
「わかりました、妙ちゃん」
「うふふ、同年代のお友達が増えて嬉しいわ」
そう言って妙ちゃんはまたふわりと微笑んだ。
お友達、か。
そういえば私も友達ができるのは初めてかもしれない。
なんというか、銀時さんも新八君も男性だし、
神楽ちゃんはどちらかというともう娘の感覚に近くなってしまっている。
「えへへ、私も嬉しいです。」
なんだか少し恥ずかしくなって控えめにそう言うと、
なぜだか妙ちゃんに思いっきり抱きしめられた。
え、なんで。
ていうか妙ちゃん力つっっよ。
新しいお友達ができて、ほくほくした気持ちで万屋に向かう。
陽も少し傾いてきたころ。
志村邸で2人とお別れしてから、私は1人で歌舞伎町を歩いていた。
「え、」
私の目に飛び込んできたのは、宇宙船らしきものに激突されて、
半壊状態の万屋の姿だった。