籠の鳥
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数年前
"探偵として"活動し始めるようになってすぐのこと
潜入調査を行うためにとある人に近付いた。
潜入予定の黒の組織と裏でつながりを持っていたと思われる桐堂組。まずそこに取り入ることから始まった。
強面でがたいのいい男ばかりが出入りするその大きな屋敷は、
それだけ見ればかなり敷居は高かっただろう。だが、入念に事前調査を行った我々からすれば、この程度の潜入は動作もなかった。なんといっても、ここはまだ最初のステップにすぎないのだから。
「あの、」
「はい?」
すれ違いざまに、歩いている女性と軽く肩がぶつかり合う。
ぶつかって間を開けること3秒。女性が一瞬ちらりとこちらを見てから、何事もなかったかのように前へと視線を戻して歩き始めたその瞬間、あ、なんてわざとらしく声を上げてから数m先の女性へ声をかける。
「これ、落としましたよ」
俺の手には、彼女の私物だと思われるかわいらしいハンカチが握られている。さっきの衝撃で落としたのだろう
なんて、今更白々しいことを言うつもりもない。
そう、今の一瞬で彼女のカバンから拝借したわけだ。
こうして自分の顔を印象に残すために。
本来であれば、潜入捜査をする身として、相手方に印象を残すというのは避けなければならない。だが、今回だけは例外だった。
「はあ、ありがとうございます」
一瞬きょとんとした顔をしてから、彼女は俺の手からハンカチを受け取ろうとする
俺は、彼女が手を伸ばすのと同じスピードでハンカチを持っている手をさらに上にあげる。懐かしいな、子供のころこうやって女の子にちょっかいかけてたっけ。
「あの、返してもらえませんか?」
彼女は怒るわけでも怖がるわけでもなく、どちらかといえば少し呆れたように俺に向かってそう言った。
俺は彼女の顔をまじまじと見つめてから、彼女に提案する。
「こんな綺麗な女性と出会えたのに、こんなところでさようならをしてしまうのはもったいない。どうですか?この後お時間でも」
あの頃の自分は若かった。今考えると明らかに不審な誘い方だったと思う。だが、俺のそんな不審な提案にも、彼女はくすくすと面白そうに小さく肩を揺らして、ふと俺の目を上目遣いで見つめると
「じゃ、おいしいコーヒーでもどう?」
と笑ったのだ。
これが、俺と彼女____桐堂牡丹の最初の出会いだった。
"探偵として"活動し始めるようになってすぐのこと
潜入調査を行うためにとある人に近付いた。
潜入予定の黒の組織と裏でつながりを持っていたと思われる桐堂組。まずそこに取り入ることから始まった。
強面でがたいのいい男ばかりが出入りするその大きな屋敷は、
それだけ見ればかなり敷居は高かっただろう。だが、入念に事前調査を行った我々からすれば、この程度の潜入は動作もなかった。なんといっても、ここはまだ最初のステップにすぎないのだから。
「あの、」
「はい?」
すれ違いざまに、歩いている女性と軽く肩がぶつかり合う。
ぶつかって間を開けること3秒。女性が一瞬ちらりとこちらを見てから、何事もなかったかのように前へと視線を戻して歩き始めたその瞬間、あ、なんてわざとらしく声を上げてから数m先の女性へ声をかける。
「これ、落としましたよ」
俺の手には、彼女の私物だと思われるかわいらしいハンカチが握られている。さっきの衝撃で落としたのだろう
なんて、今更白々しいことを言うつもりもない。
そう、今の一瞬で彼女のカバンから拝借したわけだ。
こうして自分の顔を印象に残すために。
本来であれば、潜入捜査をする身として、相手方に印象を残すというのは避けなければならない。だが、今回だけは例外だった。
「はあ、ありがとうございます」
一瞬きょとんとした顔をしてから、彼女は俺の手からハンカチを受け取ろうとする
俺は、彼女が手を伸ばすのと同じスピードでハンカチを持っている手をさらに上にあげる。懐かしいな、子供のころこうやって女の子にちょっかいかけてたっけ。
「あの、返してもらえませんか?」
彼女は怒るわけでも怖がるわけでもなく、どちらかといえば少し呆れたように俺に向かってそう言った。
俺は彼女の顔をまじまじと見つめてから、彼女に提案する。
「こんな綺麗な女性と出会えたのに、こんなところでさようならをしてしまうのはもったいない。どうですか?この後お時間でも」
あの頃の自分は若かった。今考えると明らかに不審な誘い方だったと思う。だが、俺のそんな不審な提案にも、彼女はくすくすと面白そうに小さく肩を揺らして、ふと俺の目を上目遣いで見つめると
「じゃ、おいしいコーヒーでもどう?」
と笑ったのだ。
これが、俺と彼女____桐堂牡丹の最初の出会いだった。