希望的観測
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「安室のお兄さんはいないの?好きな人」
歩美ちゃんの質問に、安室さんは曖昧な笑みを浮かべた。
事の始まりは30分前、テスト勉強と称してポアロに来ていた女子高生二人が、テスト勉強もそこそこに恋バナに花を咲かせてしまった。コナンくん経由で、つい最近なかよくなった歩美ちゃんと一緒に私はポアロで今日もコーヒーを楽しんでいたが、どうやら歩美ちゃんと女子高生二人は顔見知りだったようで、そのまま巻き込まれるように四人で恋バナをするはめになった。別に私は話すことなんてないんだけど。歩美ちゃんが、コナンくんの好きな人のことで悩んでいる、なんて話から新一がどうこのうの、真さんがどうのこうの、とそれぞれ自身の彼氏(かどうかは知らないけどなんかそうっぽい)の話を始めてしまう。
話は結構盛り上がってしまったらしく、軽く注意するために声をかけた安室さんにも、冒頭の質問が飛ばされたというわけである。安室さん、ドンマイ。
「いませんよ、仕事で手いっぱいですから」
なんてさらりと流す安室さんに、さすがだなあと感心する。この手の質問はよくされるのだろう。返し方まで完璧である。
「えー!嘘だよ!安室のお兄さんに好きな人がいるの歩美知ってるもん!」
安室さんの言葉に、納得いかないとばかりに歩美ちゃんがそう言った。それを知ってることも驚きだけど、知っていてそのうえで、あんな質問をしたとなると歩美ちゃんの将来が若干心配になってくる。どうか腹黒い女にだけはなりませんように。
「どうしてそう思うんだい?」
安室さんが完璧な笑顔で歩美ちゃんにそう尋ねる。そう、完璧な笑顔で
「だって、いつもここから外を眺めてぼんやりしてるもん!
歩美のママが、そういう人は恋をしてるんだって言ってた!」
歩美ちゃんのママはどうやら恋多き人らしい。仕事で疲れてたら社会人なんてずっとそんな感じになるよ、絶対。なんて思ったけど黙ってる。ここで下手に口を挟めば、どんな話題を振られるのか分かったもんじゃない。悪いけど安室さんには犠牲になってもらおう。
ごめんね、なんて思いながら安室さんをちらりと見ると、なぜだか一瞬目が合った。
「仕方ないですね……かなり長くなりますけど聞いてくれますか?」
「え、」
「?どうかしました?」
「あ、いえ、なんでも」
安室さんの言葉に思わず驚いて声を出してしまった。
いつものらりくらりと躱していたのに、なんかあっさりと話してしまうものだから拍子抜けしてしまう。実は隠すほどの話でもなかったってことなのかな。
「これは、もう何年も前の話になるんですけど、」
安室さんはそう言うと、ゆっくりと昔話を始めた。