切望的進化論
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数日後のいつものポアロの出勤日。
"彼"は突然現れた。
「こんにちは」
平日の昼前、ランチ前で少しずつお店に人が入り始めている時間帯。
以前店の前で見かけたスーツの男が一人カウンターに腰かける。
「こんにちは」
この男、どこかで……?
もう一度首を傾げてみるも、やはり思い出せない。
店のリピーターか何かだろうか。
「あれ、俺のこと忘れてます?ひっどいなあ」
男はケタケタと笑う。
頭の片隅に引っかかっているものの、やはり出てこない。
この顔に、この声。絶対にどこかで会っている。
「ま、俺もかなり雰囲気変わっちゃってるから仕方ないかなあ!
……お久しぶりでございます。安室さん」
変わらずケタケタと笑い続けていた男だったが、
会話の途中に咳ばらいをしてから、突然姿勢を正してこちらを見る。
「っ黒田さん!?」
そう、黒田だ。
数年前、桐堂組の潜入捜査の際、牡丹と共にいた、従者の1人。
「どうしてあなたがここに……」
彼はあの日、白崎が始末したと聞いていたはずだ。
この男、一体何の目的で?
「まあまあ、そんな怖い顔しないしない!
他のお客さんびっくりしてますよ」
黒田の言葉に思わずはっとして周囲を見渡す。
ああ、僕としたことが。
突然のことに表情が強張ってしまっていた。
「ふふふ、黒田さん、面白い冗談をおっしゃるんですね
思わず驚いてしまいました」
「いえいえ」
彼はその後もケタケタと笑ったまま、
注文したカフェラテを飲み干した。
「じゃ、また」
「あ、あの」
会計を済ませて店を発とうとする黒田に思わず声をかける。
「なにか」
「ああ、いえ、なんでもないです」
自分は何を聞こうとしたのか。
彼女のこと?
自らが殺めた女のことなど、聞いてどうするつもりなのか。
「また、いらしてくださいね」
とっさに伸ばした手を引っ込める。
「ええ、姫さんにバレない程度なら」
黒田は後ろ手を振りながら店を去る。
「姫さん……?」
牡丹の、龍太郎の側近だった黒田。
ボディーガードか何か、新しい職でも見つけたのだろうか。
それとも、
「……まさか、な」
消しても消しても自分の頭の中を巡る思考に嫌気がさす。
そんな、都合のいい話があるわけがないのに。