希望的観測
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「コナンくんは、好きな人とかいるの?」
たまたまポアロで隣の席に座っていた中学生の女の子、ぼたんちゃんにそう聞かれて、自分がいま小学一年生であることも忘れて、あわあわとしてしまう。その様子にぼたんちゃんはクスクスと笑ってから「かわいいね」と言った。
ぼたんちゃんと出会ったのは、やっぱりここ、ポアロだった。
つい最近、よくポアロに訪れるようになったこの少女は、いつもカウンター席に座っては、一人でコーヒーを読みながら読書をしている。俺も人のことが言えないのは自覚しているが、その姿は本当に中学生なのか、と疑いたくなるほどに大人びている。
そんなぼたんちゃんが、年相応の、かわいらしい話題を持ちかけてきたのが意外といえば意外だった。___彼女も読書家のため、普段は本の話で盛り上がることが多かった。少年探偵団とはいえ、まだまだ子供な彼らではあまり難しい本の話はできない。その点彼女の選ぶ本は、中学生ながらに渋いものばかりだった。俺もたまにおすすめの本を教えてもらうほどだ。
「どうしてそんなこと聞くの?」
「特に意味はないよ、ちょっとした好奇心」
そう言って少し微笑みながら、コーヒーをすするぼたんちゃん。そのしぐさがいちいち綺麗で見惚れてしまう。俺は中学生のガキ相手に何を考えているのだろうか。
「ぼたんちゃんはいないの?好きな人」
初めて会ったとき、ぼたん姉ちゃん、と呼べば、「そんな歳でもないからやめて」と言われたのを今でも覚えている。たしかに蘭と比べれば歳は離れているが、にしたって小学一年生の江戸川コナンからしたら立派な"お姉さん"だと思うのだが。若干の違和感を残しつつ、彼女のことはちゃん付けで呼ぶようになった。まあ、こちらとしてはその方が呼びやすくてありがたいのだが。
「いるよ」
ぼたんちゃんはそう言ってゆっくりと視線をカウンターの中へと移した。なるほど、初めからこれを言いたかったってことなのだろう。俺はなんとなくそう察した。
「安室の兄ちゃんのこと、好きなの?」
サンドイッチ、なんて名目でこの店にやってきたというのは聞いていたが、なるほど安室さん目当てか。たしかに安室さんの女性ファンは多い。一人納得している俺にぼたんちゃんはふふふ、と楽しそうに笑って頬杖をついた。だから、いちいちしぐさが色っぽいのは何なんだろうか。
「どうかなあ、少なくともこのエスプレッソの方がよっぽどすき」
なんて、安室さんがこっちに気付いたことに気付いてから、彼女は少し口の端を上げてそう言った。