籠の鳥
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「笠村と対決?バカじゃないの」
カウンターでコーヒーをすすりながら牡丹が冷たく言い放った。
「やだなあ、形だけですよ」
勝てるわけないじゃないですか。
あいかわらずとんでもない量の砂糖をコーヒーにぶちこみ続ける彼女の隣で同じようにコーヒーを飲みながら僕は答える。
「なあに透、私のこと勝手に賭けといて負けるわけ?」
めずらしく彼女がコーヒーから視線を外して僕のことを見た。
「おや、意外ですね
あなたは僕のことなどあまり気にしてないと思っていましたが」
実際桐堂とのつながりはできているので、
彼女との関係はもはや彼女の父、桐堂 龍太郎への目くらましといったところだろうか。
予想外だったのは、牡丹である。
彼女は最初から、自分との交際にあまり乗り気ではなかった。
乗り気ではない、というよりかは何をするにも受け身で流動的。
その場その場の雰囲気を楽しむ様子さえ持つ。
そんな彼女は、時折こうして自分との逢瀬の時間を作る。
最初はこちらから誘うばかりだったのに、
今では立場が完全に逆転してしまっている。
彼女は僕の声かけにまたふいと視線をずらして
なんだか不機嫌そうにコーヒーカップを眺めている。
「僕に拒否権なんてなかったんですよ」
「言い訳ならもうちょっと頭使えば?」
彼女は変わらず不機嫌そうに返事をする。
「そんなに僕と離れたくないんですか?嬉しいな」
「相談もなく取引の材料に使われるのが気に食わないだけ」
「それは残念です」
僕の言葉に彼女はまたギロリとこちらを睨み付ける。
さて、彼女のご機嫌を取るにはとうしようか、
そんなことを考えはじめた時、
胸ポケットに入れた携帯が鳴り出す。発信者名は非通知だ。
「出れば」
「すみません、少し失礼しますね」
「もしもし、」
僕は携帯の通話ボタンを押して、非通知の主に声をかけた。
「はい、あなたは確か……」