気が付けば私は、白い部屋にいた

私を見つけた昴さんがどこか遠くから走ってきた昴さんが
私の腕をぐい、と引いたと思えば、
そのたくましい腕で痛いくらいに抱きしめられた。
突然のことに頭が真っ白になって

「え、あ、あの、」
なんて言葉とも呼べない音を発することしかできない私に
"無事でよかった"なんて切なそうに微笑みながら
昴さんは私の額にキスをした＿＿＿＿＿


「そんな急にっ！！！！」

自分の声で目を覚ますと、
そこは昼間に建てたテントの中だった。

「ゆめ……？」

我ながらなんて欲望丸出しの夢なんだろうかと頭を抱えた。

「薫姉ちゃん？」

自己嫌悪に陥っていると、
私の声が聞こえたのか、コナンくんが心配そうに
テントの外から覗いていた。
彼の肩口に、少年探偵団の皆の心配そうな顔がチラリと見えた。

そうだ、私海でおぼれてそのまま気を失ってしまったんだ。

バカみたいな理由を思い出し、苦笑いを浮かべる。

「薫姉ちゃんが目を覚ましたよ！」

なんてコナンくんが大声を出すから、
皆がそれぞれ調理中の野菜を片手に集まってきた。
まって、まって昴さん包丁は置いてから来ようか

「よかった！死んじゃったのかと思った！」
「ほら、元太くん謝ってください！」
「ごめんな、姉ちゃんおれらが置いて行っちまったから…」

元太くんに続いて、思い出したように歩美ちゃんも
しょぼんとした顔でごめんなさい、と続けた。

「あ、いや、皆は悪くないから気にしないで」

「で、でも！」

この年にもなって泳げないくせに小学生と一緒にはしゃいでた私も悪い。
自分だからこれで済んだけど、目の前で歩美ちゃんと元太君が波に飲みこまれたら、と思うとぞっとしてしまう。

「まあまあ、そのあたりにして、とりあえず夕食作ってしまいましょう」

包丁を持ったまま近付いてきていた昴さんがそう言った。

ありがとう昴さん…！

だけど先に包丁を置いて……！