ピーチタルトと真実
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「薫姉ちゃんの桃が食べたい」
何年かぶりにコナンくんから連絡があったので、
腕によりをかけて桃のタルトを作った。
新一が帰ってきたのと同じ時期くらいに、
コナンくんの両親が来て、海外で暮らしているとは聞いていたけど、それから一度も会うことはなかったどころか、連絡さえなかった。
少し寂しさを感じてはいたが、本当の両親を暮らせることになったのだからいいことだと無理やり言い聞かせていた。
そんなとき、着信があったので携帯をみると、江戸川コナンの文字。
国際電話って結構高いんじゃないの、そんな心配をしながら電話に出ると、懐かしい声が聞こえてきて、彼は開口一番にそう言った。
「でも、コナンくん今海外にいるんだよね?」
「うん!でも夏休みは日本に帰ろうかなってパパとママが言ってたから!」
電話越しのコナンくんは変わらず元気で安心した。
それじゃあ今週末、工藤邸で
なんて、海外にいるとは思えないほどの気軽さで予想よりも近い日付を言ってきた。いや、私はいつでも構わないんだけど、コナンくんは大丈夫なの?飛行機のチケットとか。
そう尋ねると、コナンくんは、はははと曖昧に笑った。
当日、ここぞとばかりに作ったピーチタルトを手土産に指定された時間に工藤邸のインターホンを鳴らすと、玄関のドアを開けた先にいたのは、秀一さんだった。
「え?」
「よく来たな薫、さあ、こっちだ」
秀一さんは私のことを見るなり家の中に招き入れる。
しばらくここに住んでいただけあって、なんだかその仕草は慣れているようにも感じられる。気が付けば私が持っていた荷物を全部掻っ攫って右手に持ったと思うと、エスコートをするように左の掌を私の方へと差し出した。なんというか、その
「ずいぶん手慣れてますね」
「これでも君の倍近く生きてるからな」
少し不機嫌になった私に気付いているのかいないのか、
秀一さんはふふん、と顎を上げて笑った。
くそう、その顔すごい腹立つけどすごいかっこいい。
この人は何しても様になるから本当に卑怯だと思う。
「心配しなくても、今は君だけで手いっぱいだ」
と、私の心を見透かしたようにそう言う。
「今"は"?」
「これは手厳しいな」
私の言葉に彼は参ったとばかりに声を上げて笑った。
いや、笑い所じゃないんだけど。
「君が俺に愛想を尽かさない限りは、俺は君のものだ」
そう言って目を細めて笑う秀一さん。
「そんなこと、あるわけないじゃないですか」
「どうだかな、俺は結構めんどくさいぞ?」
秀一さんの額が、私の額に合わさる。顔が近い。
「望むところです」
ここで目をそらしてしまえば、彼の思うツボなのはもう分かってきたことなので、そうはさせるかと目をそらすことなく、見上げてにやりと笑ってそう囁くと、秀一さんはきょとんと目を数回瞬かせてから、今度は楽しそうににやりと笑い返してきた。
「あの、人んちでいちゃつかないでくれます?」
ずっと廊下で話をしている私たちにしびれを切らしたのか、リビングから新一が顔を出してそう言った。
うるさいな、お前もいつも蘭とこんな感じだろなんて返せばいちゃついてる自覚はあるんだな?なんて茶化されるから、アイツにはこのタルトはやらないことに決めた。
「お前にはタルトやらんからな」
ぽつりとそうつぶやけば、秀一さんがまた声を上げて笑いだした。
それじゃあ意味がないだろう、なんて言っているけど意味が分からない。
私はコナンくんにタルトを持ってきたのだ。新一にはあげない。
「あれ?」
リビングに入って、私は首をかしげてそう言った。
そこにいたのは蘭と新一と、誰が呼んだのか現在気まずさMAXの元彼氏様の透さん。
「コナンくんは?飛行機まだついてないの?」
ソファに座ってくつろいでいる新一にそう尋ねると、なぜだかその場にいた全員が噴き出してしまった。なんだ、何がおかしいんだ。
「新一、悪ふざけもいい加減にしなさいよ」
新一の隣に座っていた蘭がそう言った。
注意するように見えるけど蘭、声が震えてるのに私は気づいているからな。お前もそっち側なのか。泣くぞ。なんだかこの前から私はこういう扱いばかりな気がする。こいつら皆私のこと嫌いなのか実は。本当に泣くぞ。
「えっとな、薫」
散々笑って落ち着いたのか、新一が軽く涙をふきながら私に声をかけた
「江戸川コナンって、俺なんだわ」
「はあ?」
なに言ってんだこいつ。私がもう20歳のお前を小学生と見間違えると思ってんのか。馬鹿にするのも大概にしてほしい。ふざけんな、という意味も込めて一発殴ってやろうと拳を握って振り上げると、後ろにいた秀一さんが私の腕をつかんだ。
「彼の言っていることは本当だ」
「え?」
秀一さんの言葉に思わず振り返る。秀一さんまで新一の肩を持つつもりか、なんて思いがそのまま顔に出ていたのだろう。
「事実だ」
と念押しするように言われてしまった。
「赤井さんから、厄介な事件に関わっていた、ってのは聞いてるよな?」
「……まあ」
「そこの構成員に飲まされた薬に体を幼児化させる力があってよ」
「…はあ」
新一の表情は本当にウソを言っているようには見えないから本当のことなんだろうな、とは思う。そのまま新一は、ずっと話さなかったこれまでの経緯についてようやく語り始めた。あのとき秀一さんが話すのを渋ったのは、こうして新一の口から聞かなくちゃならないことがあったからか、とようやく納得する。だかそう思えば思うほど__
「え、じゃあ何、組織の取引に夢中になって背後の気配がお留守になったってこと?」
「…………まあ」
「だっっっっっっさ!!」
どう考えても最初のきっかけが間抜けすぎる。
鉄パイプ振り下ろされるまで気づかないってやばくない?あのあたりの地面って草だらけだから近付いて来たら気づくよね??
「うるせーな!俺はお前らと違って武術の達人じゃねーんだから仕方ねーだろ」
「新一そろそろ蘭に空手教われば?」
「絶対嫌だ」