もう一度
name change
ご利用の端末、あるいはブラウザ設定では夢小説機能をご利用になることができません。
古いスマートフォン端末や、一部ブラウザのプライベートブラウジング機能をご利用の際は、機能に制限が掛かることがございます。
「ねえ昴さん、薫姉ちゃんと喧嘩でもしたの?」
「っ、……どうしてそう思うんだい?」
いつものように突然現れた坊やは
俺が出したオレンジジュースをすすりながら
なんてこともないようにそう尋ねてきた。
「その、間」
隠しているつもりなのか、そう言いたげな坊やの視線に。
参ったとばかりに盛大なため息をつく。
「少し距離を置こうと思ってね」
「それはなんでまた」
一瞬驚いたようなそぶりを見せたが
坊やは先ほどと変わらないトーンで再び尋ねてくる。
「大したことではないよ、
ただ、平和に慣れすぎるのもと思ってね」
にこり、といつものように笑ってみせる。
ちゃんと笑えているだろうか、なんて
ただの小学生相手に何を考えているのだろうか情けない。
「昴さんが何を抱えてるのかはボクはわからないけどさ」
俺の言葉に坊やはたっぷりと間を置いてから小さな声で話し出した。
「昴さんと薫姉ちゃんが
出会えてよかったと思ってるよボクはね」
それだけ言うと
またオレンジジュースを飲み始める坊や
「僕も、そう思いますよ」
坊やの隣に腰かけて、
自分で淹れたコーヒーを飲みながらそう返す。
「…昴さんが、」
「はい?」
「昴さんの本心でそう思っているだけなら
ボクは何も言わないけど」
そこまで言うと、坊やは
俺の目をまっすぐ見て、いつもの何倍も低い声で続けた。
「お願いだから、アイツと真剣に向き合ってくれねえかな」
全てを見透かされているようだった。
こんな小さな子供に言われてしまってはどうしようもない
思わずもう一度深いため息を漏らす。
「困りましたね」
そう言うと、坊やは満足げに
「うん、いっぱい困ってね」
と、いつもの子供らしい笑顔で笑った。