その言葉が聞きたくて
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怪盗キッド、最後のマジックショー
そう題された今回のキッドの予告状
今までさんざん世間をにぎわせたコソ泥が
"最後"なんていうものだから、嫌でも注目されていた。
うんそれはいい。
問題は、だ____
「今回は、鈴木相談役たっての依頼で
皆さまの記憶にも新しい薙刀世界女王の
佐倉薫さんが警護してくださいます!」
「なんで私が」
なんて言葉を、この鈴木相談役に言ったって
結局話は通じないことくらいは長年の付き合いで承知している。
はあ、とため息を一つついてから、
相談役に一つだけお願いをする。
「あの、この薙刀しまってもらえませんか」
私はなぜかいつもの道着を着せられてしっかり薙刀を握らされている。
まあ、薙刀女王として呼ばれているから
当然っちゃ当然なんだけど。
「どうして?
それだと身を守れなくないですか?」
なぜかこの場に鈴木相談役はいなくって宝石とそれを警護する私と
その私をカメラに収めるカメラマンさんと、
アナウンサーの女の人がいるだけだった。
って、ん?
「えっ、もしかして水無アナウンサーですか……」
「え、そうですが……」
やっぱり!
なんと今回の中継に参加して下さっているのは、
あの水無アナウンサーだった!
「えっ……すきです……」
「ありがとうございます」
突然の私の告白に水無アナウンサーは苦笑いだ。
そんな顔も綺麗で好き。素敵。
っと、じゃなかった!
「武器がないとっていうのはまあ、
それを言っちゃあそうなんですけど…」
この場に私を止める人もいないか、と勝手に判断して
壁際に置いてあった袋に薙刀を片づける。
怪盗くらい素手でもなんとかなるだろう。
「武術なんて、どんなに良い言い方をしたって、
結局ただの暴力じゃないですか。
だけど、それを自分の信念に貫いて使うと誓ったとき、
それはきっとその人の正義になる。
意思のない力なんて、ただの自分勝手な暴力ですよ」
「一般人に刀を向けないのが、佐倉選手なりの信念だと?」
「そうですね
夜中にチンピラに絡まれたって刃は向けないし
武術を披露することもありません」
まあ競技用の薙刀だから本物の刃じゃなんだけど。
競技以外で使う気にはならないなあ。
既に遥か昔のような記憶を思い出して懐かしむようにそう言った。
「だから、どうなんですかね極端な話、それが殺人であっても
それが自分の信念に沿ったものであるなら
その人の中ではきっと正義なんですよ
周りの人の意見なんて、自分の正義には関係ない
それが正義ってモンなんじゃないですかね」
価値観なんて、人に合わせるだけ無駄ですからね。
なんて振り返ってみると、
がっちりカメラの方を向いてしまった。
「今の、撮ってました…?」
「ええ、ばっちり」
水無アナの言葉に頭を抱える。
今の全国放映されてるの?
恥ずかしすぎてしにそうなんだけど
私全国放送でポエム流した人みたいになってる……
「私も、素敵だと思いますよ」
そう言った水無アナの表情はなにやらとても誇らしげだった。
「ありがとうございます」
そう返した、その瞬間。
私たちのいるフロアの照明が一気に落とされる。
______来た
「初めまして、お会いできるのを楽しみにしてました」
私の耳元でそう囁かれる。
驚いて振り向くのとほぼ同時でフロアの照明が復旧する。
「な、」
怪盗キッドは、私の真後ろのショーケースの上に立ち
中にあったはずの宝石を左手に持ってそのまま胸に手を添えて
お辞儀をしていた。
丁寧な人、じゃなくて!
「あなた、どうやって!」
私の言葉に、月下の大泥棒さんはそれはもう綺麗に微笑んで
「怪盗キッドは奇跡を起こせる存在ですから」
とだけ言うと、そのまま裏口へ走って行ってしまった。
「逃がすもんか!!」
私がそう言ってキッドの背中を追いかけようとしたそのときだった
突然ぐらりと足元が揺れ始める。
「え、」
地震?にしては揺れが大きすぎるような気がする。
何やら考えてしまっていると、ガクン、と
エレベーターに乗っているときのような浮遊感に襲われてから、
すぐに揺れが収まった。
「なに、今の」