その言葉が聞きたくて
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「あれ、」
私のその言葉と同時に、会場は歓声で飲みこまれた。
審判がそろいもそろってあげる赤い旗
それはまぎれもなく私の色で
「"決まりました!佐倉!
オリンピック初種目、薙刀の世界女王は!
現役大学生若手エース!佐倉 薫!!"」
強化選手に選ばれてから一年
私は日々の葛藤から逃げるように練習に打ち込んだ。
もともと練習するのは嫌いではなかったし
自分より強い相手と勝負することは好きだった。
相手の動きをよく見て、冷静に対処できるようになってしまえば
若手の私でも敵なしになってしまった。
そうしているうちに
私は史上初のスピードで日本代表に選出され、
気が付いたら私は、金メダリストになっていた。
「薫おめでとう!」
日本に帰ると空港で新一が出迎えてくれた。
試合前日に電話したら
「うるせえ!お前が優勝しないわけねーだろ!」
なんて半ギレで言ってきやがったくせに
いざ金メダルで帰ってきたら一番はしゃいでやがる。
本当に腹立たしいことこの上ない幼馴染である
私は怒っているのだ。
新一が声をかけてくるのも全部スルーして
空港に集まってくれた報道陣の方々に手を振る。
あれ、私の写真持ってる女の子がいるんだけど
もしかしてファン、とかなのかな。
ちょっとした好奇心でその女の子の方へ近寄ってみると
女の子はひぇええ、なんて小さな悲鳴を上げてから
「おめでとうございます!いつも応援してます!」
と先ほどとは打って変わって元気な笑顔でそう言った。
なんだか嬉しくなった私は、
「ありがとう!」
という言葉と同時にその女の子をぎゅう、っと抱きしめた。
するとその子はまたひょえええええ、
なんて悲鳴を上げるものだから思わず笑ってしまった。
自分にも応援してくれる人がいるんだ
そのことがすごく嬉しくって。
ここにきてまだ気にせず大声を張り上げてくる新一を
無視しながら出口へと向かうと
「荷物、持ちますよ」
隣から誰かがさっそうと現れて私のキャリーを奪い取った。
私の彼氏様である安室さんだった。
「ありがとうございます…透さん」
恋人になったんだから下の名前で呼んでほしい。
というそれだけ見ればかわいいらしいお願いだが
ほぼ強制の恐喝のような頼まれ方をしたために
全く慣れない呼び方を強要してくるこの彼氏様。
最近特に態度が荒々しくなってる気がするのは気のせいだろうか。
「このあと取材が続くんですよね送ります」
疲れてるのにいつまでもロケバスだと体が持たないでしょう?
なんて完璧な気遣いをしてくれる
本当にこういうところ、彼の魅力だと思う。