その言葉が聞きたくて
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「やぁ!えい!とう!」
精神を集中させて、目の前の相手と向き合う。
ほどよい緊張感、刃を通して伝わる熱気
私は久々に会った恩師の誘いで
薙刀の練習会に参加させてもらっていた。
「薫!なんだその動きは!集中が足りんぞ!」
「はい!すいません!」
師匠の言葉にぎくりとする。
そりゃそうだ
あんなことを言われたのは初めてだった。
それらしいことを言われたことは、ある
だけど結局その相手とはそれ以来あってないわけだし?
完全に嫌われてるわけだし、
そもそもあの言葉がどういう意味だったのかも結局分からずじまいだし
「あーもう!」
安室さんの言葉に悩んでいたはずなのに、
いつのまにか昴さんのことになってしまう自分に嫌気がさす。
そうだ、多分、いや確実に私はまだ昴さんのことが好きだ。
昴さんが私のことを嫌っていても
私はこの気持ちを変えられないし、
あの暖かい思い出が忘れられない。
「こんな気持ちのまま、向き合えるわけがないよね」
そう決断してしまえば、なんだか心がスッキリした。
その後の練習はいつもより調子がよくって
師匠は少し驚いたようだったが、
すぐに満足げに頷いてから。
「お前、強化選手になってみる気はないか?」
と尋ねてきた。
「強化、選手?」
「次のオリンピックで薙刀が正式に種目に加わるらしくてな、
その出場候補を決めるための強化選手だ」
「オリンピック…?」
「お前、日本代表になってみる気はないか?」
「はい、私に挑戦できるのであれば」
「お前なら、そう言うと思った」
師匠はにやりと笑った。
こんなときだけは即決できるのに
いつもこの決断力が出てくれないものかと恨めしく思う。
に、しても
「オリンピック」
自分で口にした言葉に震えが止まらない
もちろん、やるからには一番を目指してずっと取り組んできた。
だけど、それは高校のときまでの話
たかが高校生がたかが日本の小さな中で一番になっただけの話だ。
世界の中で、一番になる
そんな機会が来るかもしれないと思うと震えが止まらなかった。
「楽しみ」
自分の口角が、自然と吊り上がっていくのがわかった。