その言葉が聞きたくて
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「こんなもんかなあ」
ふう、と額の汗を拭ってさっき植えたばかりの苗を眺める
桃の木の苗、なんで突然こんなことをしているかというと
それは数日前に遡ることになる。
「最近昴さんに避けられてる気がするんだけど」
そう相談すると、コナンくんは曖昧に笑ってごまかしたあと
少し何かを考え込んでしまった。
何事か、と思いそのままじっと見つめていると
ふ、とこちらに顔をあげたかと思えば
「桃の木を植えよう!」
面白いおもちゃを見つけたような顔でコナンくんはそう言った。
全くもって意味が分からないけど
きっとコナンくんは桃が好きなんだろう。
スーパーにいくらでも売ってる気はするけど
それじゃあ満足できないくらいに好きなのか、
なんて適当なことを考える。
桃栗三年柿八年
いま植えても収穫するまでに三年ほどかかることになる。
「これから長い付き合いになるね」
私はそう言ってもう一度小さな苗を眺めた。
小さな苗が成長して、地面に生える根っこの盛り上がる力で
小さなアルミの箱が地面に出てきたのは、
苗を植えて一年ほど経過した時のことだ。
掌サイズの小さな白い箱。
こんなもの庭に植えた覚えもないんだけどな
頭の中で記憶を巡らせてみてもやはり心当たりはない
不審に思いながらも、思い切ってその箱を開けてみることにする。
「なに、これ」
そこに入っていたのは小さな紙切れ一枚だった。
"俺が帰るまで待ってろ"
そう書かれた字は、最近滅多に見かけなくなった
幼馴染の名探偵の見慣れた字に間違いなかった。
「新一……?」
さらに訳が分からなくなる。
なんで新一のメモがこんなところにあるの。
帰ってくるまで待ってろってどういうことなの。
何を待ってればいいの。
頭にははてなしか浮かばなかった。
しかし、そんな戸惑いとは裏腹にその一週間後、
本当にあの名探偵が1年ぶりに復学を果たしたのだった。
「出席日数足りなくて留年とかまじでわらえる」
「っせーな」
「先輩にその口の利き方はどうなのかな?
高校2年生の工藤くん?」
「まあまあ、新一もいろいろ大変だったみたいだし」
私と新一が言い合っていると、
女神のような微笑みの蘭が仲裁してくれた。
私は詳しいことは聞いていないが、
なにやら本当に厄介な事件に巻き込まれていたらしい。
事の顛末をすべて聞いた蘭が怒り狂っていたので
そうとう危険な事件だったのかな、なんて勝手に思っている。
私も聞いたんだけど
「薫にはまだ教えねー」
といわれてしまって腹立って一発ぶん殴ったのは記憶に新しい。
こいつ、私は心配してないとでも思ってんのか。
まあ何を言っても新一ははぐらかすだけなので
もう諦めることにしている。
"まだ"ということは時期が来たら話してくれるのだろう、と
勝手に考えながら久しぶりの3人での登校に心を弾ませた。