「ば、薫、…っと薫姉ちゃん何言ってるの！？」

私の出会いがしらの一言に
真っ先に反応したのは本人ではなくコナンくん。
顔が真っ赤になっててかわいい

「昴さん困ってるでしょ！？ね、昴さん！」

コナンくんが真っ赤な顔のまま昴さんの方をみる。
その動きに合わせて私ももう一度昴さんの顔をみた。

「あの、お気持ちはありがたいんですが…」

コナンくんの言葉の通りに、
文字通り困った顔をする昴さんの姿があった。

「大学院の課題が忙しくて今は恋愛をしてる余裕がないんですよね」

お気持ちだけ受け取っておきます、
なんてさらりと流そうとする昴さん。

「構いません」

「ちょっと薫姉ちゃん！」

「どんなに多忙だろうがスケジュール合わなかろうが構いません」

私はもう一度真剣なまなざしで昴さんの方を見る。

「それは、困りましたね」

昴さんの表情は最初と変わることなく
曖昧な表情のまま笑っていた。

「これはお恥ずかしいのであまり人には言ってなかったんですが…」
内緒ですよ？と少しいたずらっ子のような
初めて見る笑顔を見せた後に

「忘れられない女性がいるんです」

と昴さんは本当に愛おしそうに、懐かしそうに
そして少し悔やむように、そう言った。

私を諦めさせるための言葉だったのかもしれない
でもその表情がなんだか嘘には思えなくて
私はそれ以上昴さんに迫ることができなかった。

「急に変なこと言ってすみませんでした」

完全に不審者の道を進んでしまった事にようやく気づき、
いたたまれなさでいっぱいになる。

「あ、えっと、すいません、私用事を思い出したので…」

自分で予定を開けてもらっといてそれはないだろう
そうは思いつつもこの場にはいられなくって、
嘘だとわかる言い訳しか思い浮かばなかった。


そのとき、

「恋人はしばらく作るつもりはないんですが…」

昴さんはさっきとは打って変わっておねだりするような
かわいらしい笑顔で

「お友達なら、大歓迎なんですよ？」

とあざとく首をかしげながらそう言った。