それは純粋で単純な
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「薫姉ちゃん、泳げないんだよ」
坊やの言葉にその場にいた全員がざわつく。
「お前らと一緒なら大丈夫だろうと思って何も言わなかったんだけど…」
「そういう大事なことは最初に言っとけよな!」
今回ばかりは元太くんと同意見だ
「でも、お姉ちゃん浮輪持ってたから心配しなくても大丈夫だよ」
歩美ちゃんの明るい言葉に、皆が一斉に海の方を見た。
「薫!!!」
坊やが叫ぶのとほぼ同じタイミングで俺は海へと駆けだした。
沖に見えたのは、彼女が抱えていたピンク色のかわいらしい浮輪と
そこから少し離れたことろに浮かぶ見覚えのある人影、
そしてそれから、見計らったかのように彼女に迫る
高い高い波だった。
彼女のいる場所は、近いとはいい難いが目で確認できるような距離
そこまで遠すぎるというわけでもない。
波にさらわれて探せなくなることはないだろう
思い切り海に飛び込むと、
あと少しというところで彼女が波にのまれてしまう。
正面に来る大きな波のせいで、自分自身も前へ進むのが困難になってしまう。
波の勢いが収まったとき、彼女の姿は海面にはなかった
「まずい、」
そばにあった彼女のものらしき浮輪だけを引き寄せて
大きく息を吸い込んでから、水中を捜索する。
潜ってすぐに微動だにしない人影を発見した。
俺は急いで彼女の元まで行き、海上へと引き上げた。
「佐倉さん、大丈夫ですか!?」
引き上げた彼女はぐったりとしていて顔色も悪い
そばにあった浮輪を渡そうとしたとき
「やっぱり好きだなあ、」
と、小さな声で笑いながら彼女は
俺の胸に倒れ込んでそのまま意識を失った。
「佐倉さん、佐倉さん!?」
彼女の言葉に一瞬どきりとするも、
そんな場合ではなくなってしまう
急いで彼女を浜辺まで連れていき、救急車を呼ぶ
浜辺に寝かせた彼女の顔色は、先ほどよりもさらに悪くなっている
柄にもなく立ち尽くしてしまう俺に
「ちょっと、あなた何ぼけっとしてるの!?
この人死ぬわよ!?」
と、灰原さんの怒鳴り声でハッとする
らしくもないな、と心の中で自嘲してから
救急車が来るまでに、人工呼吸で時間をつなぐ。
あんな言葉を最期にして、死なせてたまるか。
「佐倉さん、佐倉さんっ」
俺は何度も名前を呼びながら
彼女の口に息を吹き込み続けた