それは純粋で単純な
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あの日、彼女からの提案で連絡先を交換することになった
沖矢昴としての携帯電話の数少ない連作先の一つとして
登録された佐倉 薫の文字。
彼女はそれはもう頻繁にメールを送ってきた。
今日はいい天気ですね、だの
近所の猫がかわいいです、だの
虹が綺麗です、だの
それはもう些細なことを、
とっても楽しそうに語る彼女の文字が印象的だった。
今まで、ここまで穏やかなメールのやりとりというものを
あまりしたことがなかったので、返事に困ることも多かった。
そのたびに携帯を片手に「うーん」と唸ってみれば
たまたま来ていた坊やが心配そうに尋ねてきた。
「どうしたの?なんかあった?」
「いや、何て返すべきか、と思ってな」
わかりやすく頭上にはてなマークを浮かべる坊やに
自分の持っていた携帯の画面を見せる。
坊やは渡されたそれを真剣な表情で見つめたあと、
内容に目を通してから、
いつかと同じようにニヤニヤしながらこちらを振り向いた。
「薫姉ちゃん美人だもんね?」
「なんの話だ」
たしかに、彼女は一般的に言えば
容姿は整っている方だろう、だが
「女子高生に手を出すほど飢えちゃいないさ」
そう言いながら、
この姿になってからしばらく連絡をとれていない妹の事を思い出す。
ああ、そうだ
俺が何かと世話を焼いてしまうのも
こうして無下に扱えないもの
全部どっかのじゃじゃ馬娘と重ねてしまうからだろう。
今まで感じていた違和感に合点がいき、
そのまますらすらと固まっていた携帯の画面に文字を入力する。
どうやら暇を持て余しすぎたのか、
最近はこのメールの返信に悩む時間すら楽しいと感じてしまう。
かなり気が抜けてしまっていたようで、
いつもとは違う返事をしてしまったことに
メールを送信してから気づいた。
「あ、」
「なに、どうしたの」
俺の間抜けな声に坊やが反応した。
また面倒なことを、なんて怒られるかもしれない。
なんだか今はその光景すら楽しみに感じてしまうのだ。
(じゃん!、今日のお弁当です!)
(お料理お上手なんですね、
僕はまだまだ修行中なんです)
(じゃあ………)