お友達大作戦!
name change
ご利用の端末、あるいはブラウザ設定では夢小説機能をご利用になることができません。
古いスマートフォン端末や、一部ブラウザのプライベートブラウジング機能をご利用の際は、機能に制限が掛かることがございます。
「やめにしませんか、友達でいるのは」
そうつぶやいた昴さんの顔から視線をそらすことが出来ない。
しっかりとこちらを見据えた深緑の瞳
されたニューヨークの街が一望できる高級そうなレストラン
私は言葉の意味がわからなくてきょとんとしてしまう。
その私の表情に、昴さんは驚くほどに優しい顔をする。
チョコレートもびっくりの甘い視線。
__最近の昴さんは表情豊かだな、なんて少し嬉しく感じる。
「それは…」
私は初めからそんなつもりはないわけで、
なんて言葉を紡ごうとしたときだった。
パン、という短い音
日本では聞きなれない音だが、周囲の客の様子を見て
私の予想が当たっていることを理解する。
「銃声…!?」
________________
_____________
それは先日のキャンプのお詫びをしようと思って
昴さんのもとを訪れたときのことだった。
キャンプから帰って来て数日後
あまりの申し訳なさに、お礼がしたい、と電話したところ
昴さんは"当然の事をしたまでだ"とやんわりと断った。
だが、あまりにも引かない私の様子に少し楽しそうな声で
「そこまでおっしゃるのなら、また家にきてください」
というのだ。
それで、菓子折りを手に訪れたわけなのだが……
「ニューヨークに行くぅ?」
「うん!僕と昴さんで行くんだけど、
薫姉ちゃんも一緒にどうかなって思って!」
「ごめんね、私飛行機とか怖くて」
どういう心境で急に小学生と一緒に旅行しようと思ったのかも
どういう心境で私を誘おうとしたのかも分からない。
ちなみに私は飛行機に乗ったことがない。
高校の修学旅行も北海道とか言われたら
私一人だけ船で行ってやろうかと思っていた。
「おや?お礼をしてくださるんですよね?」
昴さんがさも当然のようにそう言ってきた。
「えっ、」
えっ、お礼ってこれのことなの?
あれよあれよという間にチケットを準備されて
なぜか新一のお母さんに荷造りを手伝ってもらって
空港まで連れてこられてもまだ抵抗する私に
仕方がないとばかりに昴さんがため息を付いてから
戻ってきたとき手に持っていたのはまさかのファーストクラスの搭乗券で
初めてのファーストクラスに心を動かされた一瞬の隙を
あのする洞察力の二人が逃すわけもなくって
私はそうして気が付いたらアメリカにいたのだ。
えっ意味わかる?わたしはよく分かってないんだけど。
ファーストクラスの座席がふかふかだったことしか分からないんだけど。
と、いうか長い移動時間も快適にすごせたわけだけど
あのお金はどこから出てるのだろうか。
新一のお母さんも乗り気だったことを考えると
きっと工藤夫妻なんだろうけど、あまりにも申し訳ないことをしてしまった気がする。
今度会ったらお礼言おう。
なんて今更ながらの罪悪感に駆られていると
コナンくんが急に
「じゃあ僕、知り合いに用があるから!」
なんて言いながら一人で空港を去ってしまった。
慌てふためく私とは正反対で
「わかりました」なんてのんきに言っている昴さんに驚く。
「ちょっと!昴さんなんでそんなに呑気なんですか!
小学一年生がアメリカで単独行動なんて…!」
私でも不安でいっぱいなのに、コナンくんはほんとにどういう神経をしているのか。
そう訴えるも、昴さんは「大丈夫ですよ」というだけで
それ以上は何も言わずに微笑むだけだった。
「それでは行きましょうか」
なんて言って、昴さんは慣れたように私の手をとり歩き始める。
慣れている、と感じるのは私の手をとる速さからか、
それともこの異国の地の雑踏をまるで地元のようにすり抜けていく背中からなのか、
もはやどちらなのかもわからぬまま、取られた手を振りほどくこともできず
ただただ目の前の男に引かれた道を進むしかできなかった。
「あの、」
どこに向かっているんですか、なんて喧騒の中に呟いたって
彼の耳には入るはずもなく、ただ無言のまま歩き続ける。
足の長さの違いからか、昴さんの歩くスピードに追いつけなくなってしまう。
やばい、はぐれる。
こんな言葉も通じない街ではぐれたら私は死ぬ、
絶対に死んでしまう。
頭の片隅に浮かんだ恐怖を振り払うように
捕まれていた手を、渾身の力ぎゅっで握り返す。
私の異変に気付いた昴さんが、
「すみません、早かったですね
なんせ足の長さが違うもので」
そう言って昴さんの後ろをバタバタと追いかけてた私の肩をぐいと引き寄せて、肩を抱いたままそのまま歩き始める。
え????なにこれどういうこと??
いますっごい悪口言われた気がしたけど突然の密着にそれどころではない。
「えっ、昴さん?」
「すいません、こうでもしないと佐倉さんも歩けないかと思いまして」
まあたしかにガタイのいいアメリカ人の合間をすり抜けて歩くのは結構、いやかなり大変だったけど。
大変だったからはぐれかけたんだけれども。
「これはこれでしんどいなあ……」
心臓の鼓動を抑えられるはずもなく私がそうつぶやくと、
昴さんは視線を前に戻してから、くすくすと楽しそうに笑うのだった。
その後昴さんは慣れたようにニューヨークの観光案内をしてくれた。
この人、真面目そうに見えて旅慣れているのかもしれない。