Reunion of sapphire
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蝉がジリジリと鳴き始め、
夏本番を迎えたある日の夕方。
蘭ちゃんと園子ちゃんが
閉店後の店にやってきた。
今日は米花町の夏祭り。
約束通りプレゼントした浴衣を着てくれるようなのだが、
どうやら着付けが難しいようで。
夏祭りの準備の手伝いをお願いされ、快く引き受けた次第だ。
「これでよしっと!
二人とも、よく似合ってるわよ」
蘭ちゃんには白地にピンク色の小花を散りばめた清楚系の浴衣を
園子ちゃんには黒地に白い桜が敷きつめられたすこしクールな浴衣を
「二人とも美人だから何着ても似合うとは思ったけど…
想像以上に素敵ね!」
「ありがとうございます!」
「髪まで結ってもらっちゃって感激!
さすがゆきさん!」
「昔からこういうのは得意なの」
髪を結うのも浴衣を着るのも、最近はあまりしなくなった。
昔はよく普段着に和服を着ていたけれど、
時代柄、あまりにも目立ちすぎるので最近控えていたりする。
「本当にありがとうございます!」
蘭ちゃんがもう一度深々とお辞儀をする。
ほんとにこの子は、なんて律儀なんだろう。
「いいのいいの、ほらっ楽しんでらっしゃい?」
「はーい!」
「いってきます!」
「はい、いってらっしゃい!」
二人を見送って店に戻る。
「ふぅ、っと…」
夏が過ぎればすぐに秋がやってくる。
その前に仕事を色々片づけなければならない。
浴衣の仕事もこれでひと段落着くだろうから
残りの仕事を一気に片づけてしまおう、
そう意気込んだとき、誰もいないはずのロビーから少年の声がした
「ねえ、ゆきさん」
振り向くと、そこには蘭と一緒に祭りに行ったはずの
浴衣姿のコナンくんがいた。
本当に、びっくりするからそういう声のかけ方はやめてほしい。
「どうしたの?コナンくん。
お祭りには行かなくていいの?」
「それは、いいんだけど……さ」
気まずそうに言葉を詰まらせる少年。
なんだなんだ。
最近はそうやって話をするのが流行ってるのか。
「?どうしたの?」
「あの、この前の……赤井さんのこと」
数週間ほど前、コナンくんに電話で一言、告げられたのだ
「赤井秀一が死んだ」と
「あぁ、前に浴衣頼まれていたんだけど、
これ処分するしかなくなっちゃったわね」
せっかく珍しく染色までしたのに、ちょっぴり残念。
そう言って肩をすくめて見せると、
コナンくんはきょとんとした顔をした。
「え、それ、だけ……?」
「それだけって?」
「ゆきさん、赤井さんの昔からの知り合いなんだよね?
同僚の人とかはもっと悲しんでたっていうか……
ゆきさんはなんだかとってもあっさりしてたから驚いちゃって」
もしかして、私が落ち込んでると思って
慰めようとしてくれていたのか。
なんて優しい子なんだろうか。
コナンくんの気遣いに感動しつつ、
私は胸元のネックレスをちらりと見てから、ふわりと笑った。
「そうね、まだ実感がわかないのかもしれないわ」
青い光を見せてから、彼と会う間はポケットに入れるようにしていた
サファイアのネックレスに触れながら私はこう続けた
「ずっとね?
まだ、どこかで生きてるんじゃないか、って思っちゃって」
まるで子供みたいね。
そう言いながらコナンくんの方を見ると、
一瞬だけ驚いたように目を大きく開いたような気がするのは
気のせいだったのだろうか。
「そう、だね……ボクもそんな気がするよ」
コナンくんはすぐに穏やかな笑みを浮かべながら私にそう返した。
本当にこの子はたまにこういう、小学生とは思えない表情をすることがある。
一体何者なんだ、なんてそんな言葉が
とてつもなく大きなブーメランになることは
重々承知なので、喉の奥まで出かかった
その言葉を飲み込んで、私は少年と同じような表情で
「でしょ?」
と笑うのだった。
(あ、そうだ!浴衣なんだけど……)
夏本番を迎えたある日の夕方。
蘭ちゃんと園子ちゃんが
閉店後の店にやってきた。
今日は米花町の夏祭り。
約束通りプレゼントした浴衣を着てくれるようなのだが、
どうやら着付けが難しいようで。
夏祭りの準備の手伝いをお願いされ、快く引き受けた次第だ。
「これでよしっと!
二人とも、よく似合ってるわよ」
蘭ちゃんには白地にピンク色の小花を散りばめた清楚系の浴衣を
園子ちゃんには黒地に白い桜が敷きつめられたすこしクールな浴衣を
「二人とも美人だから何着ても似合うとは思ったけど…
想像以上に素敵ね!」
「ありがとうございます!」
「髪まで結ってもらっちゃって感激!
さすがゆきさん!」
「昔からこういうのは得意なの」
髪を結うのも浴衣を着るのも、最近はあまりしなくなった。
昔はよく普段着に和服を着ていたけれど、
時代柄、あまりにも目立ちすぎるので最近控えていたりする。
「本当にありがとうございます!」
蘭ちゃんがもう一度深々とお辞儀をする。
ほんとにこの子は、なんて律儀なんだろう。
「いいのいいの、ほらっ楽しんでらっしゃい?」
「はーい!」
「いってきます!」
「はい、いってらっしゃい!」
二人を見送って店に戻る。
「ふぅ、っと…」
夏が過ぎればすぐに秋がやってくる。
その前に仕事を色々片づけなければならない。
浴衣の仕事もこれでひと段落着くだろうから
残りの仕事を一気に片づけてしまおう、
そう意気込んだとき、誰もいないはずのロビーから少年の声がした
「ねえ、ゆきさん」
振り向くと、そこには蘭と一緒に祭りに行ったはずの
浴衣姿のコナンくんがいた。
本当に、びっくりするからそういう声のかけ方はやめてほしい。
「どうしたの?コナンくん。
お祭りには行かなくていいの?」
「それは、いいんだけど……さ」
気まずそうに言葉を詰まらせる少年。
なんだなんだ。
最近はそうやって話をするのが流行ってるのか。
「?どうしたの?」
「あの、この前の……赤井さんのこと」
数週間ほど前、コナンくんに電話で一言、告げられたのだ
「赤井秀一が死んだ」と
「あぁ、前に浴衣頼まれていたんだけど、
これ処分するしかなくなっちゃったわね」
せっかく珍しく染色までしたのに、ちょっぴり残念。
そう言って肩をすくめて見せると、
コナンくんはきょとんとした顔をした。
「え、それ、だけ……?」
「それだけって?」
「ゆきさん、赤井さんの昔からの知り合いなんだよね?
同僚の人とかはもっと悲しんでたっていうか……
ゆきさんはなんだかとってもあっさりしてたから驚いちゃって」
もしかして、私が落ち込んでると思って
慰めようとしてくれていたのか。
なんて優しい子なんだろうか。
コナンくんの気遣いに感動しつつ、
私は胸元のネックレスをちらりと見てから、ふわりと笑った。
「そうね、まだ実感がわかないのかもしれないわ」
青い光を見せてから、彼と会う間はポケットに入れるようにしていた
サファイアのネックレスに触れながら私はこう続けた
「ずっとね?
まだ、どこかで生きてるんじゃないか、って思っちゃって」
まるで子供みたいね。
そう言いながらコナンくんの方を見ると、
一瞬だけ驚いたように目を大きく開いたような気がするのは
気のせいだったのだろうか。
「そう、だね……ボクもそんな気がするよ」
コナンくんはすぐに穏やかな笑みを浮かべながら私にそう返した。
本当にこの子はたまにこういう、小学生とは思えない表情をすることがある。
一体何者なんだ、なんてそんな言葉が
とてつもなく大きなブーメランになることは
重々承知なので、喉の奥まで出かかった
その言葉を飲み込んで、私は少年と同じような表情で
「でしょ?」
と笑うのだった。
(あ、そうだ!浴衣なんだけど……)