Truth Of Sapphire
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正さんのプロポーズを受けて数年後、
私は少しずつ彼の御両親に認めてもらえ
ようやく彼の実家で花嫁修業を行うことが出来た。
私が両親に認めてもらう、というのはいささか語弊がある。
正さんが、両親を認めさせた、のだった。
まだ会社の跡取り息子でしかない正さんを、
両親が心配して対等にサポートできる嫁を、と考えるのは当然のことだった。
両親の気持ちも理解していたのだろう正さんは、
僅か2年で会社をのし上がり、跡取り息子ではなく、
正式な三条グループの代表になってしまったのだ。
もともと、両親も息子の幸福を願っていたであろうため、
三条家は私を三条家の嫁として迎え入れることにしのだ。
私が、というよりは全て正さんのおかげなのだ。
こんなに与えてもらってばかりでいいのだろうか。
「考えていても仕方ない、か」
これまで与えてもらった分、
これからは私が正さんに幸せを返していこう。
半ば諦めたようにそう決心しなおして寝室に向かう。
私の毎日の一番最初のお仕事は
部屋で寝ている正さんを起こすこと。
「正さん、入りますよ」
いつものように寝坊すけな愛しいあの人に声をかける。
返事がないのはいつものことで、
あまり気にすることもなくベットの近くまで足を運んだ。
「正さ、」
そこまできて、私は言葉を失った。
彼が血を吐いて倒れているではないか。
「正さん!しっかりしてください!」
声をかけても意識が戻らない。
顔色は生きているのかも疑問なほどに真っ青で
対照的にシーツは彼の血で真っ赤に染まっている。
「誰か!誰か来てください!」
私の必死な叫びに、皆何事かと集まりだす。
何人かの手を借りながら、急いで病院へと向かった。
「結核ですね」
現代では、薬を服用することでほとんど直せる病気になったが、
この時代ではかかったら最後の死病であった。
「そんな、」
あまりにも受け入れがたい真実だった。
ようやく平和な日々が訪れかけていたというのに、
運命というのはあまりにも残酷なものであった。
私はこのとき、彼の
「信じてほしい」という言葉を、
このとき、たった一度だけ、
心の底から恨んだのだった。