Truth Of Sapphire
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遠い、昔の話をしよう。
それは気が遠くなるほど遠い彼方の記憶で
まるで昨日のように感じられる懐かしい記憶。
サファイアの時計は、百年以上前まで遡る_____
「ゆき!」
それは私がまだ、ただの町娘だった頃。
「正さん」
共通の知り合いの計らいで、
出会った三条 正(サンジョウ タダシ)さんとは、
もう何年か、仲のいいお友達の関係を続けている。
「ゆきに会えるから、今日も一日頑張れたよありがとう」
「やだ、正さんってば」
爽やかに笑う彼に心が動かされる。
いけない。彼は三条家の長男で、
三条グループの跡取り息子。
私みたいなただの町娘が近寄ってはいけない人なのだ。
だが、正さんは本当に魅力的な男性なのだ。
「まあた余計なこと考えてるだろ」
「なんのことでしょうか」
正さんは視線を下に向けた顔を持ちあげると
「お前は俺が惚れた女なんだから、
もっと自信持ってくれよ」
と、参った、とでも言うように
正さんは眉を下げて笑った。
「何をご冗談を、正さんとはいいお友達、ずっとそう申し上げてます」
ぷい、と首をひねって正さんと視線から逃れる。
この人と結ばれても、私にできることはない。
彼の視線に気づかないフリをするのが正解なのだ。幸せなのだ。
「ゆき」
正さんが真剣に私の名前を呼ぶ。
だめ。
彼の声に聞こえないフリをして、私は踵を返した。
もう、会わない方がいいのかもしれない。
"いいお友達"なんて関係に甘えてしまった私がいけなかったのだ。
「ゆき好きだ!結婚してくれ!」
なにを馬鹿なことを。
正直、涙が出るほど嬉しかった。
正さんみたいな素敵な男性と結ばれることができれば
どれだけ幸せだろうか。
だけど私は、
その申し出を手放しで喜べるほど世間知らずではなかった。
「両親は僕が必ず説得するから!待っててくれないか!」
正さんから離れようとする私の腕を彼は掴んで離さない。
「聞けません。話してください。」
声が震える。悟られてはいけないのに、
涙がこぼれないように堪えるのがやっとで。
「だめだ」
正さんはそういうと、私の腕をぐいと力強く引き寄せて、
私は思わず彼の胸の中へ飛び込んでしまう。
「本当は、今日そんなこと言うつもりはなかった。
君にだって選ぶ権利はあるし、
君に迷惑をかけることもあるかもしれない。
両親も説得して、認めてもらってから告げるつもりだった、でも」
正さんはもう一度私を見つめる。
今度は逃がさない、とでもいうように片手で頭を固定されてしまっている。
視線が、逸らせない。
「君をそこまで追いつめてしまうのであれば、
そんなこと気にせず早く告げてしまうべきだった。
もうそんな悲しい声なんて聞きたくないんだ。ゆき」
ただ頷いて、信じていてほしい。
そう言われてしまえば、私に断る理由などなかった。
このとき、お互いのためを考えてすっぱり断ってしまえば
この先ここまで苦労せずに済んだのではないかと思うと、
あの時の選択が正しかったのかどうかは分からない。
だが、一つだけ確かに言えることがある。
この先の未来が分かっていたとしても
私は確実にこの瞬間、この人の手を取るだろう。
私は大粒の涙を流しながら何度も頭を縦に振り続けた。
最愛の人のそばにいられるなら、
それだけで十分だと、この人が教えてくれたのだ。
「よろしく、お願いします……」
「よし、任せておけ!」
その笑顔に今度は私が
参った、と心の中でこぼすのだった。
それは気が遠くなるほど遠い彼方の記憶で
まるで昨日のように感じられる懐かしい記憶。
サファイアの時計は、百年以上前まで遡る_____
「ゆき!」
それは私がまだ、ただの町娘だった頃。
「正さん」
共通の知り合いの計らいで、
出会った三条 正(サンジョウ タダシ)さんとは、
もう何年か、仲のいいお友達の関係を続けている。
「ゆきに会えるから、今日も一日頑張れたよありがとう」
「やだ、正さんってば」
爽やかに笑う彼に心が動かされる。
いけない。彼は三条家の長男で、
三条グループの跡取り息子。
私みたいなただの町娘が近寄ってはいけない人なのだ。
だが、正さんは本当に魅力的な男性なのだ。
「まあた余計なこと考えてるだろ」
「なんのことでしょうか」
正さんは視線を下に向けた顔を持ちあげると
「お前は俺が惚れた女なんだから、
もっと自信持ってくれよ」
と、参った、とでも言うように
正さんは眉を下げて笑った。
「何をご冗談を、正さんとはいいお友達、ずっとそう申し上げてます」
ぷい、と首をひねって正さんと視線から逃れる。
この人と結ばれても、私にできることはない。
彼の視線に気づかないフリをするのが正解なのだ。幸せなのだ。
「ゆき」
正さんが真剣に私の名前を呼ぶ。
だめ。
彼の声に聞こえないフリをして、私は踵を返した。
もう、会わない方がいいのかもしれない。
"いいお友達"なんて関係に甘えてしまった私がいけなかったのだ。
「ゆき好きだ!結婚してくれ!」
なにを馬鹿なことを。
正直、涙が出るほど嬉しかった。
正さんみたいな素敵な男性と結ばれることができれば
どれだけ幸せだろうか。
だけど私は、
その申し出を手放しで喜べるほど世間知らずではなかった。
「両親は僕が必ず説得するから!待っててくれないか!」
正さんから離れようとする私の腕を彼は掴んで離さない。
「聞けません。話してください。」
声が震える。悟られてはいけないのに、
涙がこぼれないように堪えるのがやっとで。
「だめだ」
正さんはそういうと、私の腕をぐいと力強く引き寄せて、
私は思わず彼の胸の中へ飛び込んでしまう。
「本当は、今日そんなこと言うつもりはなかった。
君にだって選ぶ権利はあるし、
君に迷惑をかけることもあるかもしれない。
両親も説得して、認めてもらってから告げるつもりだった、でも」
正さんはもう一度私を見つめる。
今度は逃がさない、とでもいうように片手で頭を固定されてしまっている。
視線が、逸らせない。
「君をそこまで追いつめてしまうのであれば、
そんなこと気にせず早く告げてしまうべきだった。
もうそんな悲しい声なんて聞きたくないんだ。ゆき」
ただ頷いて、信じていてほしい。
そう言われてしまえば、私に断る理由などなかった。
このとき、お互いのためを考えてすっぱり断ってしまえば
この先ここまで苦労せずに済んだのではないかと思うと、
あの時の選択が正しかったのかどうかは分からない。
だが、一つだけ確かに言えることがある。
この先の未来が分かっていたとしても
私は確実にこの瞬間、この人の手を取るだろう。
私は大粒の涙を流しながら何度も頭を縦に振り続けた。
最愛の人のそばにいられるなら、
それだけで十分だと、この人が教えてくれたのだ。
「よろしく、お願いします……」
「よし、任せておけ!」
その笑顔に今度は私が
参った、と心の中でこぼすのだった。