Encounter Of Sapphire
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爆発テロ発生から5年が経過した頃、
俺は目を疑った。
自宅に帰ってくると
そこでは母さんとゆきさんが、喋りながら
お茶を楽しんでいた。
会いたくて会いたくて、探し続けた彼女が、
今、目の前にいる。
「ゆきさん……?」
「あらあ、秀ちゃん?おかえりなさい」
大きくなったわね、というゆきさんの言葉も待たずに
思い切り彼女を抱きしめた。
「あらあら」
困ったように微笑んだ彼女は、
赤子をあやすように俺の頭を撫ででくれた。
「とっても心配してたんですよ」
「そうみたいね、さっき聞いたわ」
世間話でもするようにふわりと答えた。
聞きたいことはたくさんある、はずなのに
言葉に詰まってしまって、俺は何も言いだせなかった。
「心配かけて、ごめんなさいね」
私は大丈夫、なんともないわよ
そう言ったゆきさんは、2本足でしっかり立っていて、
足が完治したことが見て分かった。
「どこ、行ってたんですか」
町中探してもいなかったのに、
急に現れるなんて
「ごめんね、知り合いに誘われてパリで暮らしてたの」
通りで町中探したって見つからないわけだ。
ゆきさんは俺の気持ちなんてお構いなしに
そのとき食べたフランスパンがおいしくて、なんて話をしてくる。
そんな彼女の顔を見ていると、なんだか気が抜けてしまって
俺もつられてと笑った。
「本当に、無事でよかったです」
彼女が心底驚いた顔を見せたのは、
きっとこのときくらいだっただろう
それからしばらくしてから、俺たち家族が日本で生活することになった。
理由を聞いても父の判断だ、とそれ以上母が語ることはなかった。
日本行きの飛行機の時間が迫る中
俺は見送りに来てくれていたゆきさんのそばを離れられないでいた。
「もう、秀ちゃんってば、子供じゃないんだから」
「でも、離れたくない」
「もう、決めたんでしょ?」
「俺は納得してない」
「だめ、決まったことならちゃんと前向かなくっちゃ」
「そう、ですね」
この人は、いつだって俺の背中を押してくれる。
優しく励ましてくれる。
「あ、そうだ。ゆきさん」
「どうしたの、秀ちゃん」
「連絡先、教えてくれませんか?」
「教えるのは構わないけど、一つだけ約束してくれる?」
「なんですか」
「あなたがここに連絡するのは、
夢をかなえて、立派な大人になってから」
「ゆきさんからは連絡してくれないんですか?」
「ええ、そのかわり、絶対この番号は変えないわ」
彼女は俺の目をじっと見つめてそう言った。
まるで何かを試すように。
「分かりました。待っててくださいね?」
「ええ、待ってるわよ、ずっと」
少し曇った顔のゆきさんの頭をくしゃくしゃと撫でて
俺はにやりと笑った。
「どこにいても、見つけますから」
ゆきさんは一瞬きょとんとしてから、
とても嬉しそうに目を細め、
「もう、待ってるって言ってるじゃない」
と泣いたように笑うのだった。
俺は目を疑った。
自宅に帰ってくると
そこでは母さんとゆきさんが、喋りながら
お茶を楽しんでいた。
会いたくて会いたくて、探し続けた彼女が、
今、目の前にいる。
「ゆきさん……?」
「あらあ、秀ちゃん?おかえりなさい」
大きくなったわね、というゆきさんの言葉も待たずに
思い切り彼女を抱きしめた。
「あらあら」
困ったように微笑んだ彼女は、
赤子をあやすように俺の頭を撫ででくれた。
「とっても心配してたんですよ」
「そうみたいね、さっき聞いたわ」
世間話でもするようにふわりと答えた。
聞きたいことはたくさんある、はずなのに
言葉に詰まってしまって、俺は何も言いだせなかった。
「心配かけて、ごめんなさいね」
私は大丈夫、なんともないわよ
そう言ったゆきさんは、2本足でしっかり立っていて、
足が完治したことが見て分かった。
「どこ、行ってたんですか」
町中探してもいなかったのに、
急に現れるなんて
「ごめんね、知り合いに誘われてパリで暮らしてたの」
通りで町中探したって見つからないわけだ。
ゆきさんは俺の気持ちなんてお構いなしに
そのとき食べたフランスパンがおいしくて、なんて話をしてくる。
そんな彼女の顔を見ていると、なんだか気が抜けてしまって
俺もつられてと笑った。
「本当に、無事でよかったです」
彼女が心底驚いた顔を見せたのは、
きっとこのときくらいだっただろう
それからしばらくしてから、俺たち家族が日本で生活することになった。
理由を聞いても父の判断だ、とそれ以上母が語ることはなかった。
日本行きの飛行機の時間が迫る中
俺は見送りに来てくれていたゆきさんのそばを離れられないでいた。
「もう、秀ちゃんってば、子供じゃないんだから」
「でも、離れたくない」
「もう、決めたんでしょ?」
「俺は納得してない」
「だめ、決まったことならちゃんと前向かなくっちゃ」
「そう、ですね」
この人は、いつだって俺の背中を押してくれる。
優しく励ましてくれる。
「あ、そうだ。ゆきさん」
「どうしたの、秀ちゃん」
「連絡先、教えてくれませんか?」
「教えるのは構わないけど、一つだけ約束してくれる?」
「なんですか」
「あなたがここに連絡するのは、
夢をかなえて、立派な大人になってから」
「ゆきさんからは連絡してくれないんですか?」
「ええ、そのかわり、絶対この番号は変えないわ」
彼女は俺の目をじっと見つめてそう言った。
まるで何かを試すように。
「分かりました。待っててくださいね?」
「ええ、待ってるわよ、ずっと」
少し曇った顔のゆきさんの頭をくしゃくしゃと撫でて
俺はにやりと笑った。
「どこにいても、見つけますから」
ゆきさんは一瞬きょとんとしてから、
とても嬉しそうに目を細め、
「もう、待ってるって言ってるじゃない」
と泣いたように笑うのだった。