極彩色のシンデレラ
名前
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「無理です!そんなの絶対できません!」
何を言っているんだという表情を見せた佳奈ちゃんに一通り説明をし終えると、佳奈ちゃんは首が飛んでいきそうな勢いで首を何度も左右に振った。
「なんでもしてくれるんでしょ?」
オレの言葉に、絶望の果てというほどに目を見開いてしまう佳奈ちゃん。正直かわいそうだとは思うけど、オレとしてもここでこの子を手放してしまうのは避けなければならない。
「………わかりました」
長い沈黙の末に彼女は心底不服そうにそう答えた。
「おっけー!じゃあ早速ついてきて!」
「え、ちょっと!」
「紹介したい人がいるんだ」
彼女の表情もモチベーションも、あえて気づかないフリをして、
オレは返事も聞かずに佳奈ちゃんの手首をつかんで歩き始める。
最初は戸惑っていたが、徐々に諦め始めたのか、佳奈ちゃんはおとなしくオレの後ろを歩いている。
「あ、」
「なんですか」
足は止めないまま、オレが思い出したように声をあげると、佳奈ちゃんは不思議そうに尋ねてきた。
「そういえば自己紹介してなかったね、オレは三好一成!
タメだから敬語じゃなくても大丈夫だよん!」
「はあ、私は宮下佳奈です」
オレの話を聞いているのかいないのか、佳奈ちゃんは一言だけそう言った。警戒されてるなあ。そりゃそうだろう、突然初対面の男に腕を引かれてどこかへ向かわされているのだ。……もしかして実は今わりととんでもないことをしているんじゃないだろうか。
「あの、違うからね、劇団の皆に紹介しときたくってね、あの、決して変なあれじゃないから」
急に自分のやっていることが恥ずかしくなってしまい、立ち止まって佳奈の方を振り返ってそう言った。目が泳いでしまう。これでは何の説得力もない怪しい男でしかない。どうしたもんか、と考え込んでいると、急に佳奈ちゃんがくすくすと笑いだした。
「え?」
「あ、いえ、すいません」
あんまりにも挙動不審なものだから、というと、彼女はもう一度ふふふと声を出して笑った。その笑顔に見惚れてしまう。大和撫子のようなおしとやかな雰囲気とは裏腹なかわいらしい無邪気な笑顔。
「あの?」
「ああ、ごめん」
しばらく固まっていたらしいオレに佳奈ちゃんが心配そうに声をかける。その声にようやく我に返ってまた足を動かし始めた。だが今度は、佳奈ちゃんと肩を並べて歩くことにした。警戒を解いてあげたいと思ったのもだが、もう一度彼女の笑顔を見てみたくて。オレは頭をフル回転させながら、寮までの道のりで彼女と様々な話に花を咲かせた。