極彩色のシンデレラ
名前
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「ゆっきーどう思う?」
「んー、なんか違う」
「同感」
シンデレラの脚本が完成したのと同じころから、
シンデレラ役の選考が始まっていた。カントクちゃんには
「とりあえず二人のイメージに合う子を選んでくれればいいよ」と言われて、一次選考というものをしているわけだが……
「なーんか、違うんだよね」
予想以上に、選考に参加してくれる女の子がいることにまずは驚いた。だが、どれだけ来ても、脚本のイメージに合う子がいない。
今回もつづるん書き下しの脚本は、シンデレラをベースにした軽めのコメディ劇。尺もそこまで長くなく、初心者の女の子のことを考えて作ってあるのがよく分かる。問題は、
「シンデレラが拳銃持って撃ちあいって……」
そう、さすが我がカンパニーの綴大先生が普通のシンデレラなどを書くわけもなく、舞踏会に向かうメンバーを決めるために、意地悪な姉たちと西部劇さながらのガン対決を行うのだ。王道のシンデレラらしいおしとやかさや、華やかさの上に拳銃片手に暴れまわるような、そんな二面性が必要になるこの脚本のヒロインはなかなかイメージにぴったり合う子が見つからなかった。
「ねえ一成、なんか知り合いにいないのイメージに合う子」
隣に座っているゆっきーも同じように感じたのか、
今日の選考の最後の一人を見送ってから、そう尋ねてきた。
「え~結構ハードル高いよ?この役~」
「だからアンタに聞いてるんでしょ。こういうときの為のチャラ男でしょうが」
「まあ、いないわけじゃないんだけど……」
「誰」
「この子」
オレは、慣れた手つきでスマホを操作して、ある画面をゆっきーに見せる。
「いいじゃん、で、これ誰?」
「えっと、それが…」
俺がゆっきーに見せたのは、
インステ内での有名人、【ビビ】ちゃんの写真だった。
長い黒髪を後ろで一つに結んでピースサインをする彼女は、
吸い寄せられるような白い肌と緩やかなたれ目がなんともおしとやかそう。
それに対比するような明るいハキハキとした笑顔が、
なんとも印象的で、今回のシンデレラのイメージにピッタリだと思った。
「はあ?ネットアイドルってバカじゃないの?」
「そうなんだよね~」
「ネットアイドルの写真なら信用できないでしょ。
こんなのいくらでも加工できるし」
ネットアイドルに嫌な思い出でもあるのかと疑ってしまうほどに、嫌悪感を丸出しにするゆっきー
「いやいや、でも動画とかでも普通にかわいいから、
この写真そのままだと思うよ?」
「ふぅん?」
それでもゆっきーの視線は冷たいままだ。
「仮にこの子が、この写真その通りの子だったとして、
どうやって捕まえるつもり?
まさか、いちいちコメントに反応してくれるなんて思ってないよね?」
ゆっきーの指摘はもっともだった。
この手の有名人はいちいちコメントなんか読まない人も多い。
ネット上で連絡を取ろうとすることは不可能に近いだろう。
そもそも、突然劇団で役者をやってください、だなんて不審に思わない方が難しいだろう。
「うーん、まあそうなんだけど…」
「なに、」
「多分、なんだけどさ、
この子うちの大学の生徒だと思うんだよね」
「なんで」
オレの言葉にゆっきーが食いつく。
「この写真とか、動画とか、学校のアトリエにそっくりなんだよね~
だから探せば出会えちゃったりしちゃうかも~~!」
テンアゲ~~なんて一人盛り上がっているオレに、ゆっきーは冷たく
「じゃあ、来週までにその子見つけてきてよ」
と言い放つと、自室に戻っていってしまった。
「まじで?」