初夏の訪れ
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「おう、入れよ」
「お邪魔しまーす」
久々に見る工藤邸の玄関、に立つ新一。
今日は新一の家で勉強会だ。なぜか、新一と二人で。
「蘭も園子も真純ちゃんも用事があるなんて、残念だね」
「……そうだな」
そろそろ中間テストも近いから勉強しようってことになったのはいいものの、皆と予定が合わず、私と新一の二人だけ。
「というか、新一が勉強しようとか言うの珍しくない?
嵐でも来るんじゃない?」
「思いっきり晴れてんだろ。じゃなくて、
流石に一年もブランクあるのはキツイんだよ」
「勉強ならずっとしてたじゃん、小学一年生だけど」
「うるせー」
軽口を言い合いながらリビングへ向かう。
新一がコナン君になってからは、あんまり来てなかった気がする。
まあ、沖矢さんが居候していたってのもあるんだけど。
……なんというか変な感じだ。
「で、小学一年生の江戸川君はどこがわからないんですか~?」
「馬鹿にしてるだろ」
「めちゃくちゃしてる」
キッチンから麦茶を用意してくれた新一に声をかける。
いや、幼馴染が小学一年生になってましたは流石に面白い。
早く蘭や園子にも言いたいのに、なぜか頑なにこいつは白状しない。なにをかっこつけてるんだか。
「だいたいは教科書一通りさらったからわかる」
「え、じゃあこの勉強会意味なくない?」
リビングのソファに座りながら、新一がそう言った。
学年が変わってすぐでそこまで授業も進んでないから、
今のところ私もほとんど問題はない。
私が新一に勉強を教える会だと思ってたんだけど。
「……あー、そういえば古典がちょっと引っかかってた」
「そう?じゃあ古典やろうか」
確かに解説ないと難しいもんね。
「……おう」
新一は歯切れ悪くそう答えた。
どうせ、人に教わるのなんて屈辱だーとか思ってんだろうなこいつ。
「……で、こうなるから、ここは②番の選択肢が正解ってこと!……って、聞いてる?」
「ぅえ!?お、おおう、聞いてる聞いてる!」
「……ちょっと休憩にしようか」
勉強を始めて一時間ほど、
なにやら上の空の新一にため息を付いて席を立つ。
集中力の塊みたいなあいつが聞いてないってことは別に考えることがあったからだろうし、恐らくそれを考える余裕があるくらいには理解度は問題ないってことだろう。
「何しに来たんだか」
「あ、新一お皿借りていい?」
「あ?いいけどなんで」
「そういえばクッキー焼いてきたの思い出した」
鞄から大き目の袋を取り出す。
どうせ何かに移すだろうと思って適当に袋にぶち込んできたそれ。
頭使うと甘いものが欲しくなるんだけど、
新一にそんなこと言ったらその辺からすっごい高そうな菓子折りを適当に出して来ていつもめちゃくちゃ申し訳なくなるので、
高校に上がったくらいからはこうして自分で何か用意するようにしていた。
「マジで?優のクッキー久々に食うかも」
新一がソファから身を乗り出して振り返った。
なんだか喜んでくれているようでありがたいが、
特に変哲もないただの簡単クッキーなのだけど。
「まあ、こうやって勉強会の時しか焼かないからコナンくんには縁がないよね」
「あー元の姿に戻れてよかったー!」
「……」
ちょっと茶化したつもりだったのに、そんなにストレートに喜ばれるとこっちも少し照れ臭くなる。
「言えばいつでも焼いたのに」
「はあ?そういうことは早く言えよ」
その後新一は皿に移した大量のクッキーをあっという間に一人で平らげてしまった。
「私、五人分で作ったはずなんだけど……?」