初夏の訪れ
name change
ご利用の端末、あるいはブラウザ設定では夢小説機能をご利用になることができません。
古いスマートフォン端末や、一部ブラウザのプライベートブラウジング機能をご利用の際は、機能に制限が掛かることがございます。
「まだ6月なんだけど」
照りつける太陽を睨み付けながらそう呟く。
がやがやと賑わい、周囲が浮かれあがる今日はそう、
体育祭本番である。
「優ったら、もうちょっと楽しそうにしなさいよ!」
「楽しくないもんは楽しくない」
「まあまあ、高校最後の体育祭だよ?ちょっとくらい頑張ろうよ」
開会式も始まってない状態で、すでに死んだ顔をしている私に
園子と蘭が両サイドから挟み込んでくる。
まあ、やるとは決めたものの。
既に本日の暑さにやられてしまっている。
「暑すぎ。むり。」
「髪結んでみたら?涼しくなるかもよ!」
蘭はそう言って、返事も聞かずに私の髪をいじり始める。
そう言えば、蘭も園子も今日はなんだかいつもよりおしゃれな気がする。
「蘭、編み込み?かわいいね」
「優もおそろいにしちゃうね!」
蘭はそう言って私の髪をああでもないこうでもないといじり続ける。え、おそろいにするんじゃないの。何をそんなに悩んでるの。
「できた!」
「わあ、いいじゃない!さっすが蘭!」
しばらくして、蘭の明るい声で目を覚ました。
どうやら眠ってしまっていたらしい。
美容院とかでもそうだけど、他人に頭をいじられると眠くなってしまうのは私だけだろうか。
「首元、涼しいかも」
「でしょ?」
肩甲骨の高さくらいまであった髪の気は、蘭のハンドパワーにより丁寧に頭の上のほうでまとめられている。
「ハチマキは私が付けてあげる!」
今度は園子がニヤニヤしながら近付いてきた。
クラス別に色分けされたハチマキ。
適当に巻いていたんだけど。髪をまとめるときにいったん外したんだっけ。
「うーん、じゃあお願い」
勢いに乗った園子に何を言っても無駄なのはよく分かっているので、おとなしくされるがままになる。
というか、ハチマキ巻くだけにそんな何もなくない?
よく分かんないけど動くと怒られるのでしばらくじっとしていることにする。
「よし!どーよ!」
「園子すごい!めちゃくちゃかわいい!」
「ハチマキにかわいいとかなくない……?」
どうなっているんだ、と思わず体操服のポケットに入れたスマホで自分の頭を確認しようとしたが、なぜか園子に止められてしまう。
「なんで」
「あんまり動かすと外れちゃうでしょ」
別に見るだけで動かさないけど。
有無を言わさない園子のなんとも言えない圧力に負けてしまったので、何も言わずにスマホをポケットにしまうことにする。
まあ、いっか。なんでも。
どうせほとんど競技には出ないし。目立つこともないし。
そう思って開会式を終えて、私は今救護テントで涼んでいる。
サボリというわけではなくて、正当な仕事である。
毎年保健委員な私は、こうしてけが人に供えているのだ。
この救護テントが目的で保健委員に必ず立候補していることは内緒だ。
「なんだ?今年もサボリか?」
100m走を走り終えた新一が遠めから私に声をかけてくる。
「おつかれ、今年もお仕事です。」
「お前、絶対これ目当てだ…!?」
近付いて、救護テントの下に入ったくらいで、新一は言葉を詰まらせた。
「何」
「あ、いや、お前がそんなに浮かれてるの珍しいと思って」
「はあ?」
新一は目を泳がせながらそう言った。
救護テント待機の私が浮かれているようにでも見えるのだろうか。
わけが分からず首を傾げると、急に自分のスマホを取り出して私の写真を撮って手渡した。
「何急に、っ!?」
スマホの中に映っていた私の頭には、器用にハチマキで作られたネコミミが付けられていた。
「………園子のやつ」
「え、外すの」
すぐにハチマキに手をかけると、新一が少し残念そうにそう言った。
「面白がってるでしょ」
「いや、あの…普通に、その、……と、思う……」
「え?なんて?」
段々尻すぼみになって言うものだから、
最後の方よく聞こえなかった。
「うっせー!なんでもねえよバーロー!」
咄嗟に聞き返したら、新一は急に怒ってテントから走り去ってしまった。なんだアイツ。情緒不安定かよ。
「あ、工藤くん!優見た!?」
「園子お前なあ……」
「ねえ新一、優かわいかったよね?」
「……めちゃくちゃかわいかったよ!!!クソ!!!」
「…何怒ってんの新一のヤツ」
「さあねーえ、」